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ネガイシステム  作者: ぼんべい
六章 一人でダメなら二人で殴れ それでもダメなら千人で殴れ
47/62

6ー6

 ○ ○ ○


 しかし、一条は痛みなんか感じなかった。

 だって、勝利を確信していたのだから。

 だって、こういう演技をするのが作戦だったのだから。


 一瞬だった。レディ・ピエロの体を光線が貫き、その瞬間に彼女の体で光の波が広がった。


 どさり。

 そして道化は崩れ落ち、向こう側に上半身を起こして『魔銃』をこっちに向けている長谷川が見える。

 「ふぅー。」

 深い深い息を吐く一条。そして長谷川はべたっと寝そべってしまいながら呟いた。

 「カガミ、やっぱりお前が正しかった。格闘スタイルは拳銃相手にゃ勝てない。」

 「やっぱ、痛いわね。」

 一条は苦笑いしながら体に広がる無数の傷跡を見る。道化も本気だったのだろう、結構深く斬られてる所もある。

 緊張、恐怖、勝算、不安。そういったものが一気に消え去って今はただ安心と嬉しさとぐったりとする疲労が一条の体に残っていた。

 うつ伏せに倒れたまま動かないレディ・ピエロを見下ろしながら迂回してまずは長谷川の所へ向かう一条。勝利の嬉しさと疲労感に満ちているのは長谷川も一緒で、倒れたままの状態で笑いながら一条を見上げる。

 「バカ、何が絶対大丈夫、よ、もう少しで死ぬトコだったわ。」

 同じく笑顔を見せて手を差し出した一条の手を長谷川は掴む。

 「死ななかった、ろ、ならいいじゃないか、よいしょっ、と。おい、軽合金、縫い込んであるんじゃなかったのかよ。」

 立ち上がらせてもらった長谷川は一条の肩を見ながら軽口を叩く。すると一条はその切り口をひらひらとさせながら、

 「素肌直接だったら、ヤバかったわね。」

 と、同じく口で応戦する。

 作戦その三。獣は狩りの瞬間に一番隙が出来る。だから、ワザと絶望を演出してレディ・ピエロにとどめを刺させようとする。そこを『魔銃』で撃ち抜く。

 ハイリスク、ハイリターン。まさに大きな危険を伴う作戦、だからこその『白兵戦』『たこ糸での中距離攻撃』という段階を踏んでレディ・ピエロを本気にさせてからの絶望演出。まんまと道化はその演出にはまってくれた。その辺りもまさに道化、だったわけだ。

 「さて、決着付けさせてもらおうかしら。」

 一瞬だが光を出したし、その前は一条が叫び声を上げている。人が来てもおかしくない状況で、人にみられたらまずい状況でもあった。

 「おや。」

 その光景に、長谷川はマヌケな声を出し、一条は目を険しくして刺突剣を構える。

 レディ・ピエロはすでに立ち上がり二人から離れようと歩き出していたのだ。右足を引き摺りながらゆっくりゆっくり歩いていく。多分、レディ・ピエロ程の体力と筋力が無ければとても歩くなんて出来ないだろう。

 飛び出そうとする一条を長谷川は片手で阻んだ。

 「ちょっ、なによ、」

 「やめておけ。」

 道化が顔をこちらに向ける。外灯も無い夜道、薄明かりの下に無機質な仮面の笑顔が半分見える。

 「もう、あいつは戦えない。それは、願いも諦めるしか無いって事だ。」

 道化は二人の囁きは聞こえ無い程の距離にいたが、振り返った顔を元に戻し、またずるずると足を引き摺って二人から離れて行く。

 ふん、と鼻で息をして一条は刺突剣を下ろした。納得は行ってないが勝利の立役者である長谷川の言う事は聞いてやる、といった感じなのだろう。

 「ん?」

 レディ・ピエロが倒れていた所に小袋が落ちていた。長谷川がそれを拾い上げて中を見ると願いのメダルが入っていた。

 「・・・たった四枚、か。一条、あいつの『条件』は何枚だっけ。」

 「五十枚、よ。」

 五十枚に対して、たった四枚。

 悪魔の物語りの一ページがびりびりと破れたような錯覚に陥った長谷川が目を上げると、もうそこにはレディ・ピエロの姿は無かった。

出だし、はいいんですけど、その後のレディピエロ狙撃の所は詳しく書くべきでしたね。「カガミ、やっぱりお前が正しかった。格闘スタイルは拳銃相手にゃ勝てない。」の台詞は入れられてよかったと思ってます。別の所書いてる時とかにふと台詞とか描写思い浮かぶ事ってありますよね。大抵は忘れたり入れられなかったりするんで、そういうのをメモしておく所を別にとってたりして、書く前に読み返してます。

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