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ネガイシステム  作者: ぼんべい
六章 一人でダメなら二人で殴れ それでもダメなら千人で殴れ
45/62

6ー4

 ○ ○ ○


 夜。

 やはり蒸し暑い夜に長谷川は前回と同じような恰好、チノパンにシャツというスタイルだったが、一条はなんと前をボタンで止める形の膝まであるワンピース姿で現れた。

 場所は前回とは逆方向にある少し大きめの公園の駐車場だった。夜の公園といえど夏場、もちろん人は何人かいたしこういう所にレディ・ピエロは現れない。基本的に天井など高い所を跳ね回る彼女は住宅街やビル街を好む。だから長谷川達もここを起点にして住宅街の方を回る予定だった。

 「見えない方が大事、って事、か?」

 「ふふん。」

 見下す笑顔を見せながら一条は一つ一つボタンを外していく。そして全部外し終わると露出狂の男性がコートでするみたいにばさりとはだけて見せた。

 中は黒いブラジャーとパンティだった。レースが付いていたりアクセントに赤いヒラヒラが付いていたりして可愛い。

 「・・・最初から見せてればいいって事?」

 「大丈夫、見せブラよ。」

 (そういう問題なのか!?)

 「・・・こないだみたいに切り裂かれたらどうすんだよ。」

 「ふふん。ぬかりはないわ。軽合金を縫い込んでる本格派よ。」

 (本格派って、どっちの、っつーか、なんのだよ!?)

 「まぁ、ならいいけど。」

 (なにが!?)

 と、自分で突っ込みつつ、長谷川は巻いてあるたこ糸を一条に渡す。先端には楔が付いている代物だった。

 「こっちの作戦の方が心配だわ。ほんとに上手くいくの?」

 先っぽをひゅんひゅんと振り回しながら一条がぼやくと、

 「ああ、大丈夫だ、俺を、悪魔の物語り書きを信じろ。」

 と、長谷川は力強く請け負う。

 今回の勝負、決め手は思った所を破壊出来る『魔銃』、それをいかにレディ・ピエロに当てるか、になってくる。

 メダルを消費するという性質上何発も撃てないし、背後から狙撃だと前回みたくかわされ一条の太股を破壊してしまう事にもなりかねない。

 だから、どうしてもレディ・ピエロの動きを止める必要があった。ほんの一瞬でいい、『魔銃』で撃ち抜く、その一瞬さえ確保出来ればいい。

 (相手が男だったら、その恰好だけでじゅーぶんかもしんねぇケド。っつーか、前回のアレでもう勝負は貰ってたかも、な。)


 【また日は昇る そして また日は落ちる】


 余裕そうに貴族風味な歩き方をしている一条だが、その目は真剣そのもの。長谷川は至って普通に歩き至って普通の目付きで辺りに気を配るが、心臓がバクバク言い過ぎてその他の事に気が回らないのが事実だった。


 【空気が旋律を伝えるのならば 闇が殺気を伝える】


 歩きながら早くも長谷川はリュックから『魔銃』を取り出しメダルを詰める。それからナイフを取り出して左手に構える。リストバンドには三本ほどたこ糸が巻いてあり、後はリュックを捨てれば準備万端。


 【さざ波のように静かに響く狂気 ゆらぎのように微かに膨らむ闇】


 今回は長谷川も一条もどちらも合図を掛けなかった。しかし、二人共にわかっていた。


 【悪魔の囁きにこの世の倫理は通用しない 異世界の戦士に物理法則は通用しない】


 一秒の半分のさらにもう半分の刹那。

 レディ・ピエロが一条を突き刺した。両手にそれぞれ持っている刃物がそのワンピースに深々と刺さっている。

 「!?」

 しかし、彼女は手応えを全く感じなかった。そしてワンピースはふわりと落ちる。

 「でやぁ!」

 突如飛んできたリュックサックをレディ・ピエロはジャンプでかわすが、長谷川は着地を逃さずにナイフで斬りかかる。

 左、右、左、突き、突き、切り上げ、そして切り下げ。

 かんかんかん、と刃物でそれを防ぐレディ・ピエロ。長谷川は絶えず右手の銃をレディ・ピエロに向けていた。彼女からしてみれば始めて見る銃、まともに喰らわないように常に気を配っていなければならない。それで長谷川程度の連撃でも防戦一方に追い込めている。


 【闇と闇は交わらない 闇はそれ以下の無い黒だから】

 【殺気と殺気は交わらない 殺気はそれ以上の無い狂気だから】


 ぶすり

 深く突き刺さった。

 背後の闇から突然湧き出たように伸びた一条の刺突剣がレディ・ピエロの左腕をとらえる。そしてチャンスとばかり長谷川が銃を突き付け、引き金を引こうとした。

 がつん!

 「ぐおぉ!!」

 しかし、レディ・ピエロの蹴り上げが銃を持っていた長谷川の腕を大きく弾いてしまう。長谷川は引き金を引いてしまわないようにするだけで精一杯で、気がつけば道化は刺突剣から体を引き抜いて間合いを取り、飛びのいてしまっていた。

 「ちっくしょ。」

 悪態を付く長谷川、一方一条は冷静だ。

 「・・・かわされた。」

 「なに?刺さってたじゃないか。」

 「いや、違うわ。心臓を狙ったの。でもかわされた。」

 一条の持っている刺突剣の先から血が滴る。レディ・ピエロは二階屋の天井から二人を見下ろしている。仮面からはどれ程のダメージを与えられたのか判断付かない。

 「ま、作戦はこれから、だ。」

 「そうね。」

 道化が消える。と、同時に一条が刺突剣を振るう。

 かきん

 レディ・ピエロの刃物とかちあう一条の刺突剣。二人はそのまま斬り合いに突入していく。

 かきんかきん

 きんきん

 訓練の成果か、意地がそうさせているのか、一条の動きはこの間とは打って変わって機敏になっている。一方、手負いの道化はどうしても左手での攻撃防御に精彩を欠く。

 (これで互角、なんてね。)

 レディ・ピエロの斬撃が皮肉を浮かべる一条を襲う。

 右フック、左フック、右フック、切り返し、そして左の突き。

 それらを刺突剣で捌き最後の突きをかわすと反撃に転じる一条。

 突き、突き、突き、左ミドルキック、しゃがんで足払い、着地点へ切り払い。

 つぅー

 飛びのいて逃れるレディ・ピエロの右脇腹に線が入る。

 (いや、私の方が上かしら。)

 間髪入れず長谷川が背後からナイフを繰り出す。それをやはり後ろに回した手で防ぐが、正面から一条が切り込んで来るため逃げざるを得ない。

 つぅー

 また一本、道化の体に傷が付く。今度は右太股だった。

 「逃すか!」

 「逃さない!」

 すぐさま長谷川は背後に回り込む。そして一条は正面からの攻撃を緩めない。

 かきん、きんきん

 つぅー

 きんきん

 かきん

 つぅー、かきん

 作戦その一、常に二人で正面と背後から挟み撃ちにする。

 前回のように二人共に力不足であれば瞬時にどちらかが倒されてしまうが、今回は一条が華麗な攻撃を繰り出している。長谷川の銃の存在そのものの牽制もあって徐々にレディ・ピエロの体は切り刻まれていく。

 (・・・やっぱり、バケモノね、こいつは。)

 そう、確かに一条の刺突剣は幾筋もレディ・ピエロの体に傷を付けていたが、道化の戦いは全く衰えていなかった。それどころか更なる機敏さを見せ始め一条の攻撃も背後からの長谷川の攻撃も完全に見切りつつある。

 (この程度の傷、どうって事無い、って事ね・・・左腕も、ハンディだとでも思ってるのかしら。)

 見れば左腕の傷はもう塞がっている。かばうような動きから痛みはある事はわかるのだが。

 「このぉ、くそ、どうだ、たぁ!」

 目を血走らせとにかく必死にナイフを繰り出す長谷川にそんな事を観察する余裕は無かったが、一条は言い知れぬ不安が少しずつ心を侵食し始めているのをはっきりと感じている。

やっぱり【】の中の表現はいいですね。戦闘シーンはもっと勉強必要。今もあまり上達してません。アルセニウスで暴れさせるぞ!とか思ったのですが、実は今執筆してるのは戦闘メインだったり。ちょっと他の方の戦闘シーン読み込みます。

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