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ネガイシステム  作者: ぼんべい
六章 一人でダメなら二人で殴れ それでもダメなら千人で殴れ
44/62

6ー3

 ○ ○ ○


 翌日は創立記念日で学校は休みだったが、長谷川は一条から昼間に家に来るように言われ家の場所を教えて貰っていた。

 『魔銃』が無事に手に入ったか、何か情報は聞けたのか、そして何よりも作戦は立てられたのか。それらを長谷川に問い質したいのだろう。

 (うーん、せっかくの俺の世界の銃だし。なんか名前付けてぇなぁ。)

 良く晴れて蒸し暑い外を歩きながら長谷川は思う。

 (ものすっご厨二病的なんがいいな。えっと、なんだっけ、サオトメ曰く、中学校二年生の頃に妄想空想を膨らませる類の単語、だとか言ってたな。)

 サオトメの説明はある程度事実に即したものだったのかもしれないが、それを長谷川が解釈するとこうなる。

 (『アタバク・アーツ』、『エターナルエレメント』、『ヴィ・ジニアース』、、)

 学校で見たことあるような女二人組が楽しそうに笑いながら歩いていて、長谷川の事なんか目に入らないかのようにすれ違う。

 (『アイス・ゴレニウス・プレゼネス』、あいつらも、願い諦めてこっちの世界に溶け込んじゃったクチなんかな。『フィーダンケ』、『ロンド・オブ・ネザー』、、)

 段々と高級そうな家が立ち並ぶ区画に入っていく。

 (うぁお、やっぱあいつ、お嬢様設定、なんだな。)

 はたして、言われた所にあるのは(日本の常識の範囲内で)広い庭を持ち、二つの建物がある家だった。一条からは屋根が教会のように尖っている方の建物に来るように言われている。

 (暗証番号でも、打ち込むんかな。)

 インタフォンの所にはスパイ映画で見るような小型の監視カメラとおぼしきものとテンキー。それらの説明は受けていない長谷川は素直にインタフォンを押す。

 すると、スピーカーから、

 「オコゼね。入って。」

 (こういう一方的な所、アンドウと似てるな。)

 女子の家を訪問するという楽しいはずのイベントは、アンドウ、一条と立て続けに風変わりな歓迎と目的とを持ってしまったため、長谷川には単なる『任務遂行上、必要な行為』程度にしか思えない。

 扉を開けて中に入る。通路を進み扉を開ける。

 そこは大きな広場のようになっていた。地下をくり抜いたのだろう、降りる階段が壁に這っていて階下の広場には薄い絨毯がしかれている。壁に張り巡らされたステンドグラスが視界は遮れど明かりを強く入れていて、その真ん中で一条は刺突剣の型を真剣な目付きで繰り替えしていた。

 「っ!ふんっ!、ん、ふん!っ!、やぁ!」

 レオタード姿の一条は遠目からもわかる程全身汗だくになっていて、一振り一振り事にしずくが飛び散る程だった。それが早朝からの決して楽では無い訓練に彼女が打ち込んでいる事を教えてくれる。

 (負けた悔しさを、勝つ為の努力に繋げる、か。かなりの負けん気が必要だな。)

 階段を降りながら長谷川は思う。

 (それと、相当の精神力、と。)

 階段を降りきると一条に近寄る長谷川に、彼女は素振りを止めずに聞いた。

 「ちゃんと武器貰ってきたんでしょうね。」

 (いいね。こういうひたむきな姿は見てるこっちも気力が沸いてくる。あーだめだ、なんて嘆くだけで何もしない人間ほど、見ていて気力をそがれるものもないからな。)

 「ああ、見るか。名付けて『ジ・エンド』!!」

 「馬鹿じゃないの。剣?銃?それとも魔力装置か何か?」

 完全スルーな一条は訓練を止めそばのテーブルに向かいそこの椅子にかけていたタオルで体を拭きながら置いてあった水を飲む。

 「・・・銃だよ。思った所をダメにできるらしい。太股だとか。メダルを弾代わりに使うんだと。」

 「そう。メダルを、ね。自分のを使うの?」

 「馬鹿言え、俺の条件は『仲間のメダルが全て重なる』だぞ。シュリーズの女社長、覚えてるか。あの人から貰ったのがある。それを使うつもりだ。」

 「そう。それで作戦は?」

 長谷川は昨夜考えた作戦を一条に教えた。

 「それ、大丈夫なの?」

 椅子にどかりと座りながら一条。

 「ああ。俺の計算だとこれで必ず上手くいく。レディ・ピエロを仕留められる。」

 「まぁ悪魔の物語書きがそう言うんなら、信じるけど。わかってるわよね。私たちに次は無いわ。」

 「ああ。わかってる。だからこその、この作戦、だ。」

 ふん、と鼻をならす一条。それから飲んでいたペットボトルを長谷川に投げて寄越すと、自分は別の新しい奴の蓋を開ける。

 「お、おっと。」

 「飲みなさいよ。私達の世界のドリンクよ。体力と気力を回復させるわ。」

 「ちょ、俺のは飲みかけで自分は新品、かよ。」

 「貰えるだけ、ありがたいと思いなさい。」

 見下すように笑いながら新しいのに口を付ける一条を傍目に、その半分程しか入っていないペットボトルを飲む長谷川。

 (っつーか、これって関節キス、じゃ。)

 「いい。」

 声をかけられてそっちを向く。一条はテーブルに肘を付いて偉そうな態度で長谷川を見つめている。そして、長谷川はその姿になぜかシュリーズの女社長の事を思い出した。

 (どっちも、覚悟を決めてる、って事なんかな。)

 一条にはもちろんそんな長谷川の感想なんか聞こえない。自分の発言を続ける。

 「オコゼ。もう一度言うけれど、私たちに次は無いわ。」

 「ああ。」

 「生きるか死ぬか、よ。」

 「そりゃ、違うな。」

 首を傾げた一条に長谷川は続けた。

 「倒されるか、倒すか、だ。」

比較するのは面白いですね。ジムでも、相手の戦い方を比較していくのが面白いって会長が言ってました。長谷川もどんどん出会った人を比較してみたら面白いのですが。その比較の幅が、その人の世界の幅ですよね。

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