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ネガイシステム  作者: ぼんべい
六章 一人でダメなら二人で殴れ それでもダメなら千人で殴れ
43/62

6ー2

 「なんですか、『条件』と『制約』。」

 「『あいつが俺の事を思い出す』。『あいつが俺の事を忘れている』。」

 「それならその恋人さんに事実を話せばいいじゃないですか。」

 再び嘲るように鼻で笑うタニグチ。

 「した、さ。とっつかまえて散々、それこそ泣きながら言い聞かした。でも、な。あいつは何一つ、思い出さねぇんだよ。」

 「・・・」

 「医者にまでみせたんだけど、な。こっちの世界の記憶じゃねぇから、脳に異常は無ぇって始末だ。」

 「・・。」

 「だから、よぉ。酒飲むぐれぇしか俺にはもう、するこた、ねぇんだよ。」

 「その、自分を忘れた恋人に仮面を被せて近くに居させて、ですか。」

 ちらちらと仮面のバーテンを見ていたタニグチから長谷川はそう察っし思い切って切り出す。ほんの僅か、皿を洗うために動いていたバーテンの手が止まったが、タニグチはそれには答えずこう言った、

 「こんなんなら、まだ向こうの世界であがいてた方が望みがあったのかも知れねぇ。」

 「・・・『小さな事に不忠な者は、大きな事にも忠実になれない』。」

 「んあ?」

 「こっちの世界で聞いた言葉、です。向こうの世界であがけるんだったら、こっちの世界でもあがけるんじゃないでしょうか。同じように、こっちの世界であがけないんだったら、向こうの世界でも結果は同じなんじゃないかな、って。・・・出過ぎた事言って、すみません。」

 「ふんっ、構わねぇよ。まぁ所詮青いガキにゃわかんねぇ事だ。」

 言い過ぎたかな、と思う長谷川を他所にタニグチは軽く流した。長谷川もただ思い付きや若者特有の打開心でそう言っただけじゃない。

 過去の苦しい現実を乗り越えてきたミキモトや、敗北に涙を流して悔しがる一条の姿が、長谷川に戦うのならどの世界かは関係無い、と思わせたのだ。

 バーテンが空になったバスケットを下に敷いてあった布ごと下げ、新しい布を持ってきた。しかし置かれたそれはナッツの入ったバスケットでは無く、太目の銃口をした拳銃だった。

 「これは!?」

 (俺達の世界の銃?それも魔力型の奴だ)

 それを手に取ったタニグチは握りの方を長谷川に向け差し出す。

 「持っていけ。」

 長谷川は、静にそれを受け取った。

 「動力源はメダル、だ。お前もこっちの世界に来た時に貰ったろ。取っ手の上の所にメダルを差し込む。一発、一枚。メダルは砕けるが、思った所を破壊する光線を射ち出す。」

 手の中で弄び全身を確認する長谷川。

 「レディ・ピエロ相手なら、太股を砕く、とでも思っとけ。なぁに、本当に砕けるわけじゃない。こっちの世界で太股が使えなくなる感じだ。それが骨折なのか肉離れなのか、そういうのはなってみないとわかんねぇけどな。」

 「ありがとうございます。」

 「あぁ、それから俺からいっこ、アドバイス。学友とは仲良くしとけよ。最近、喧嘩したんだろ。」

 (学友?あぁ、サオトメ達の事、か。)

 「そんな事まで知ってるんですか?」

 「言ったろ、俺は情報屋だ、それぐらいのこたぁ、知ってんだよ。」

 真顔で切り返すタニグチ。それから続けて、

 「なんで一条なんかとつるんでっかは、知らねぇけど、な。」

 「学校の中の関係図まで把握してるなんて、恐れ入ります。」

 立ち上がりながら、長谷川。

 「外すなよ。」

 「もちろん。ジュース、ご馳走さまでした。」

 「おごりなんて言った覚えはねぇぞ。」

 「バーで高校生がお金を払えると思ってるんですか。」

 「ふんっ、じゃぁ、出る時に誰かに見られんなよ。」

 「もちろん、です。」

 人を馬鹿にするのが唯一の楽しみの酒飲みかとかなり悪い第一印象だったが、長谷川は少しこのタニグチという男を好きになり始めていた。それなりに過酷を経験し、褒められた答えでは無いにしても自分なりに考え、向き合っている。

 しかし、長谷川がバーを出る時、もうタニグチはただの酒飲みで彼の事など微塵も気にかけなかったし(片手を軽く上げて挨拶はしたが)、バーテンもただ黙ってグラスを拭いたりタニグチのグラスにおかわりを注いだりするだけだった。

 その人にとってはメインクエストでも他人からしたらそれはサブクエストに過ぎない、という事かもしれない。

よい感じにかけたかな、と思ってる数少ない部分の一つですwもうちょっと膨らませたかったですね。タニグチのような人間との接触で変わっていく長谷川の心情みたいなものも書ければよかったです。人間、接する人間の数、人間のタイプが多い程、多くを学んでいくものですよね。

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