4ー8
翌週の水曜日、学校帰りに曲がり角でどん、とぶつかってお互いに尻持ちを付く、というベタな展開で二人は再会した。
「いたタタタ、」
「あいっててて、」
起き上がりお互いに相手を見て、しかし反応を示したのは長谷川だけだった。
「あ、ごめんね、ちょっと姪のお迎えで急いでたの。ん?私に何か付いてるかしら?」
「あ、いえ、別に。」
女性はお尻をぱんぱんと叩きながら、
「そっか、私、雑誌とか乗った事あるから。それでかもね。これでもおっきい会社の社長だったんだ。今は売っちゃって、パートタイマーだけどね。」
そこら辺の女性のように、にっこりと屈託無くその人は笑った。
「そうなんですか、大変ですね。」
「まーね、姪がちょっと重い病気でね。・・って、こんな事言っちゃってゴメンね。あ、もういかなきゃ。大丈夫?怪我は無い?」
「あ、僕は大丈夫です。」
「良かった。じゃぁね!」
手を振りながらその女性は小走りに去って行った。
「ホントに何も覚えてないんだ・・・・」
その走り去る女性の背中が長谷川に語りかける事柄はとても多かった。
彼女にとって、大事の前の小事ってのは向こうの世界の事になるんだろう。
ふと、長谷川はその背中を見ながらそう思った。
この部分を切り離して小さな段落にしたのはよかったな、と思ってます。冒頭の「ようこそ僕の世界へ!」ですが、元ネタではwelcome to this world!でしたw




