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ネガイシステム  作者: ぼんべい
二章 女の子のラインは皆違う
15/62

2ー6

 その時二人は小さな公園に通りかかって、そして公園の向こう側から大声をかけられた。

 「ちょっと!あなた達!どうしたのこんな時間に!」

 その声に強引に現実に戻されたような気分になりながら二人してそっちを向くと、アヤメ先生が二人と同じように自転車を押しながらこっちへ向かって来ていた。カガミが答える。

 「塾の帰りなんです。定期試験の前なので少し遅くなりました。」

 「あら、そう。気を付けなさいよ、塾を辞めなさいとは言わないけれど、こんな時間に外を出歩くのは関心しないんだから、先生。」

 近寄ってきた先生がいつもの声音で二人を諭す。二人は素直に頷いた。

 「はい、先生。なのでこうやって二人で帰ってます。」

 「うん、それはいい事ね。都市伝説だかなんだか知らないけれど、刃物持ってる人もうろついてるって噂だから。」

 「そうですね。気を付けます。」

 (でた、カガミのポーカーフェイス。いや、カガミだけにミラーフェイス、か?)

 「ところで二人共、アンドウさん見なかった?」

 「え?アンドウですか?見ませんでしたが?」

 「そう。」

 心配そうにこぼした先生の態度が気になり長谷川は聞いた。

 「アンドウがどうかしたんですか?」

 「え?ああ、別に、ね。なんかアンドウさんらしい人を見たって連絡があったから、ちょっと気になって、ね。」

 「家には電話してみたんですか?」

 「ええ、もちろん。でも誰も出ないのよ。まぁ寝てるだけなのかもしれないけれど、アンドウさんのお母さんは帰りが遅いって聞いてるし、なんとも言えなくて。」

 お父さんは、と聞きかけて長谷川は思い止まった。先生は律儀な人だし、生徒への愛情というものをきちんと持っている事は知っている。そんな先生がお母さんが帰りが遅いから家に誰もいないかも、と言ったのだ。それだけで察してあげるべきだろう。

 それに、嫌われ一条とつるんでる生徒でもある。詮索しても得は無いだろう。

 そう思ったのはカガミも一緒だったのか話を纏めようとした。

 「そうですか。見つかるといいですね、あるいは何事も無ければ。」

 「ええ、そうね。ありがと。先生はもうちょっと探してみるけれど、あなた達はすぐに帰るのよ。」

 「はい、わかりました。」

 そして先生は行ってしまった。

 「本来は警察に通報するべき事案だと思うが。」

 また自転車を押して歩き出しながらカガミが率直な感想を漏らす。

 「そうかもしれないね。」

 「やはり、生徒達の事は極力自分の手で解決したいのだろうか。」

 「どうだろうな。」

 「社会的分業に反する行為だ。行き過ぎれば問題視される。」

 「だろうね。でも、俺はけっこあの先生、好きだけどな。」

 「おお、ついにハセも初恋かぁ!?」

 「ちょ、違うって。」

 「しっかし、大人の女性に恋するとは、やるなぁ、大変だぞぉ。そだ、さっき考えた俺の口説き文句、おまえにやってもいいぞ。」

 「(使えそうなの一個も無かったろーが。)だから、違う、っつーの。だって俺は、」

 異世界から来た人間だ、と、言ってしまいそうになり慌てて口をつぐむ。

 「を?を?だって俺は、なんなんだ?まーさか、好きな人が本当にいるのか?え?どうなんだ?」

 「いないよ、そんな人。」

 そこで自分の部屋のあるアパートの前に辿り着き、詮索したそうなカガミと別れるとそそくさと長谷川は退散してしまった。

 寝る前に一度だけ、自分が今夜文字通り一命を取り留めたという事を思い出した。その原因も理由もわからなかったが。

 しかし、何もわからないでいるよりはわからないとわかっている事の方が、何倍もマシなものだ。

 よほど勉強と緊張とが長谷川を疲労させていたのだろう。そんな事を思った後すぐ、彼は眠りに落ちた。

 深い眠りで夢は見なかった。


「本来は警察・・・」の台詞はアヤメ先生が行って二人きりに戻ってからなので、この前に状況を入れるべきでしたね。カガミの感情の移ろいについていけないハセ感をもっと出せればよかったですね。

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