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ネガイシステム  作者: ぼんべい
二章 女の子のラインは皆違う
13/62

2ー4

 ○ ○ ○


 木曜日の夜、十時過ぎ。

 長谷川はカガミと一緒に自転車を押しながら歩いていた。定期試験前の追い込みの塾の帰りで気晴らしとばかりにカガミが女の口説き方を長谷川に語ってはその評価を聞いていたのだ。

 塾、というシステムは長谷川の興味を引いた。学校という教育機関があるにもかかわらず、この国には塾というものがあってそこで学習を補う。時にはそこで学習し、学校で補う事さえある。

 二つでは存在理由が全く違った。学校は歴史的経緯から教育機関だったし、塾は単純に学習機関だった。テストでいい点を取ったり試験に合格したり。学校ではその事自体の意義に付いて考えなければならなかったが、塾にはその為に通うのでわざわざその理由を考える必要が無い。野球を楽しむか、バッティングセンターでバットを振る事だけを楽しむか。一見共通してるように見える事柄でも含む内容、目指す所が大きく違っている。

 というのが、今の所の長谷川の見解だった。じゃぁそれが具体的にどう違うのか、学校は何を目指し、塾にはどんな役割があるのか。そういう細かい所は今考察中、気長に考えるつもりで彼はいる。

 さしあたって長谷川が考えなければならないのは、次のカガミのアプローチの感想だ。

 「ずっと、君の事が好きだった。付き合って欲しい。」

 「ありきたりじゃね?」

 「これならどうだ。君が一番可愛く見える。」

 「その女の友達は敵に回すかもな。」

 「うーむ。じゃぁ花束持って、これが俺の気持ちだ!ってのは?」

 「今時花束ってどうよ。」

 「じゃぁ、札束見せびらかして、これ、欲しくないか?」

 「それ、意味違ってこね?」

 長谷川にはまだ異性との親密な経験というものが無かった。好きになった事はあるけれど、告白した事もされた事も、いわゆる女性経験というものも、無い。好奇心旺盛な彼は知識に関心が向いていたし、レジスタンスを始めてからは恋愛どころじゃ無かった。それに、向こうの世界ではこっちの世界で見られるような『恋愛だけが唯一の楽しみ』といった感じの閉塞感は無かった。それなりに自分にあった楽しい時間の使い方を模索するだけの空気も自由もあったのだ。何より、この国みたいに頻繁に学校で試験をする事が無いし、親がその試験の結果だけで子供の良し悪しを判断したりしない。

 だから、長谷川は本から得た知識や勝手な想像でカガミのアプローチを評価している。カガミも長谷川に女っ気が無い事は知っていたが、まぁ男同士の会話なんてそんなものだ。

 「僕の知識のコレクションの中に、君を加えたい。」

 「読書好きなインテリ系の女ならいいかもな。」

 「難しいな。君といれば僕はどんな時も頑張れる。」

 「あ、そう、って言われて終わりじゃね?」

 「もっとカッコよくなって、君を迎えに行く!」

 「今すぐ付き合わなくてもいいんだな、それ。」

 ふと、視界の端に何かが写った。気のせいか?という疑問が半分、何か写ったな、という警告が半分。長谷川は辺りを見る。

 「ん?どうした?」

 カガミもそれにつられ辺りを見た。

 「いや、別に、」

 そこまで長谷川が言った時だった。また、視界の端を何かが飛び去った。

 「どうもして無いと思ったんだけど、な。」

 「おおっと、この田舎町に都市伝説、おでまし、かな。」

 今度はカガミにも見えたらしい。その眼鏡をぐいと上げる。

 「別に、ここはそんな田舎じゃないだろ。」

 「都会に比べたら、田舎、だろ。」

 また、何かが視界の端を横切る。

 それは家の屋根と屋根とを飛び移り、側にあるビルの壁を飛び上がる。

 ひゅぅ、と長谷川は小さく口笛を鳴らした。

 影はそのまま屋上に行き、そこで見えなくなる。

 「どうやら、行ってしまったようだな。」

 特に残念そうでは無いカガミのその言葉に、長谷川も、ああ、と答える。

 「ピエロの恰好をした女殺人鬼。人間とは思えない身のこなしで地上を飛び回り、目に付いた人間は老若男女を問わず血の海に沈めて行く。」

 テレビの口上のようにカガミがこう語ると、続けて、

 「まったく。行ってくれて助かったな。」

 と、感想を漏らす。

 もちろん、二人共本当にそれが殺人鬼で人を殺し回っているとは思っていない。知っている人が次々居なくなる事も無ければ警察がひっきりなしに出動する事も無いし、第一本当にそんな事があればテレビや新聞を賑わせるはずだがそれも無い。

 だから、都市伝説と呼ばれるものの一つだ、とこの町では誰もが思っている。

 ただ、その身のこなしが尋常じゃ無く、恰好も普通で無いのは確かで、それがただの幻覚だの誰かの悪戯だのと気軽に片付けてしまう事が出来ないでいるのも確かだった。

 「まったくだな。」

 長谷川もカガミの『行ってくれて助かった』に賛成する。万が一、こんな所で殺されたりでもしたらたまったもんじゃ無い。願いも仲間も一条の仕事も全て投げ捨てる事になってしまう。ここで都市伝説の一部になる為に、こっちの世界に来た訳じゃない。

まぁ男同士の会話なんてそんなものだ。←こんな感じの表現気に入ってます。頭の説明部分については今までと同じ。なんでこんな説明なのか、俺。そして都市伝説()wこの頃はまだラノベの視線がよくわかって無かったんですよね。まぁ今もですが。

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