盤は砕かれた
他の連載の更新スピードがおっそいですww
「ラヴェール王国攻防戦」もうクライマックスです!
「あ…………悪魔…。」
結城は、元の面影がないほどに変貌を遂げたレアルを見て、思わず声を漏らしていた。細身の体に似合わず魔力に満ちたその姿は、恐怖を具現化させたものを彷彿させる。
「悪魔かぁ、まあそうだね。ラルク姉、 こいつはボクが仕留めるから静かにしていて」
白を基調として、黒色の線が入った法衣を羽織っているレアルが言った。と言っても、顔が白くなり目の下に黒い線、軽く逆立った髪、左右の黒白の翼が悪魔と印象ずけていた。
「《空閃の牙》じゃなくてボクの魔法は《黒白悪魔》って言うんだ。多分あんたより強いから」
堂々としたその物言いは、どうやら姿だけでなく中身も変貌しているかと想像させる。そのようなことを結城が考えていると、レアルが目の前から消え、結城の足下に忍び寄り連撃を放っていく。黒と白のエネルギー刃を時には交差させ放っていく。結城は刀でかろうじて受け流していくが、捌き切れていない。
「……先ほどより、早い!」
防戦一方になっていた結城だったが、一瞬の隙を突き、刀を降り下ろす。黒色の剣閃が綺羅びやかに光り、レアルを直撃するが、音ほどのダメージは与えれていない。
「反射神経はすごいなぁ。……でも、そんなもんじゃ悪魔は捉えられないよ。」
《黒白の舞“絶”》
「ご、ごはぁっ!!」
結城は黒と白の二本の槍に両脇を貫かれ、崩れ去るように地面に突っ伏した。レアルは余裕の表情で佇んでいて、もはや勇気に成す術はなかった。
止めを刺しにレアルが空に上がった時、二人の斬撃がレアルを切り裂いた。レアルは上空でバランスを崩し、落下仕掛けていたが、なんとか体制を整え着地した。
「大丈夫か!結城!!」
二刀を携えて、霧ヶ峰出雲が立っていて、すぐに雄塀も駆けつけた。二人の表情は硬く、悪魔の姿に変貌しているレアルを見ても、全く動揺していない。
「俺達に任せて貰おう、結城君、よく耐え抜いてくれた。 隊員たちは無事だよ。」
安堵の表情を浮かべた結城は、その後ガクリと気を失った。戦闘の開始を示すように、雄塀は静かに印を構えた。空気がさらに張りつめていく。
「レアル!、二対一なら私も参戦するよ。援護する!!燐歌の旋律!」
ラルクは弓を引き絞って放つ。空気をぶち抜くような風圧にのせて、ゆらゆらと矢は霧ヶ峰に向かっていく。その音色は耳に心地よく、まるで音楽を奏でているようだった。
「まだまだ!!」
《速音のリズム“ファ”》
流れるように弓を何本も放つ。リズミカルにたんたんと
「霧ヶ峰抜刀術、弐の太刀」
右刀を上から凪ぎ払い弓矢を渾身の力で弾き落とし、左刀でスピーディーに何本も矢を打ち落とす。風を切り裂くような音が鳴り響き、霧ケ峰はラッシュをかけるべく全力の剣技を構えた。
「昇華!」
《諸刃の剱“暮波”》
霧ヶ峰が赤く光る。体力を攻撃力に変換させる昇華に、防御を攻撃力に変換させる諸刃の剱。四年前使用した『諸刃の剱゛紫炎"』という技は乱舞で斬りかかるものだったが、暮波はまた数段上の剣技だった。素早くラルクに迫り、左刀で横に凪ぎ払うが、ラルクは辛うじてかわす。見切った!と言わんばかりにラルクが体勢を持ち直し、弓を構えた瞬間、霧ヶ峰の右刀が現れた。
「 弐の太刀………」
《暮波一閃》
縦に一閃、霧ヶ峰は静かにラルクを追い抜き様に切り裂く。肩から一閃喰らったラルクは、バタリと倒れ意識を失った。霧ヶ峰は冬の風のように冷たくラルクを見ると、
「……たとえお前が女でも、仲間を傷つけたやつは…斬る!」
刀を両腰の鞘へ納め、雄塀が戦っているほうを見た。霧ヶ峰が決着をつけている時、雄塀とレアルの空気は針積めていた。レアルは脳裏で、
(………こいつは西南の四強、望月雄塀! 下手に仕掛ける訳にはいかない。様子をみるか)
と考えていた。出し惜しみをせず黒白悪魔を全開に発動し、万全の姿勢で翡翠の槍を打ち出す。槍は的確に猛スピードで雄塀に向かっていく。
「……悪いが、様子をみる暇は無いんだ。幻影騎士・刻雅」
雄塀は魔法、『精霊達の進撃』で、漆黒のマントに身を包む騎士を呼び出し、その身に宿し能力を意のままに操る。翡翠の槍は雄塀を貫通するがダメージはなく幻影を突いただけであった。
「読まれてる!? くそっ! 」
《黒白の舞“獄”》
鋭く伸ばした漆黒の両爪で、雄塀を引き裂いていくが全てが幻影で全く捉えられない。その姿をあざ笑うように幻影は消え、現れ、消え………を繰り返していた。
「くそっ!!くそっ!! どこだぁ!!!」
苛立ちに飲まれ、集中力を切らしているレアルの後ろに、雄塀は静かに回り込んだ。もはや気配もわからず、全く気付いていなかった。
「こっちだ。月牙……真裂斬!!!」
激しい音と共に、雄塀の黒い刃から放たれた膨大な影に飲まれ、レアルは姿を消した。あっさりと悪魔を葬り去った幻影の騎士は消え、雄塀は静かに佇んでいる。
二人は結城と他の隊員たちを臨時キャンプで休ませ、城へと向かおうとした。その時、雄塀の無線が音を発てる。無線の先は透き通る声で静かに、簡潔に、言った。
『………望月雄塀、応答せよ。……帰還命令だ。……魔力探知により、征六龍火はあと1人だと探知した。……よって、望月雄塀には違う任務に出てもらう。……怪我をした隊員と共に帰還せよ。……以上』
伝えることだけ伝え終わると、回線は途絶えた。相手の返答を全く聞こうとしないのは、上層部の人間が直接命令を下している証拠だった。
「随分勝手だね。悪いが霧ヶ峰君、1人で向かってくれ」
雄塀はそのまま、魔法で翼を生み出し、負傷者がいる方角を見定めると、ゆっくりと飛び去って行った。一人取り残された霧ヶ峰は、激しい魔力を感じ取ると、
「真神達が心配だな、急ぐか」
静かに呟いて、霧ヶ峰は城へと走っていく。
ラヴェール王国 国境 城壁
崩れ去った岩ががらがらと音を発てる。戦闘で無残な姿になったこのあたり一帯は、もはやかつての面影は全くなかった。しばらくすると、中から蒼い髪のレインが右腕と顔を出し、苦しそうに呟いた。
「……俺はまだまだ強くなるぞ…!………必ず」
そう言って彼は再び倒れた。
ラヴェール王国 王宮前
2つの鋭い視線が交錯する。不気味に笑うルークの眼。片眼だけが金色の輝きを放ち読めない眼。双方の魔力は凄まじく、全開に発動させている今は、常に大気と大地が震えている。
「ついに見つけたぞ、七聖覇者!!……お前を捉えれば俺達が《サテライト》の復活に一歩近づける!!」
ルークの表情に笑みが浮かぶ。彼が発した謎の単語。サテライトとは、後に語られる重要な《超科学的生物古代兵器》のことであった。蓮はかすかに動揺を見せると、
「……お前、どこでそれを…!?」
尋ねながら、業魔の剣を腕に装着して襲い掛かった。地を蹴り、その反発直をすべてスピードにしたというような速さで、ルークに直進していく。
「《業魔の星刻》」
蓮の腕から放たれたエネルギーの刃は、流れ星のように何度もルークに突撃し凪ぎ払う。空を切り裂く風の音が、集中を邪魔するように不快な音を発てていた。
「……ぐっ、なかなかの威力だ……」」
ルークは二刀で受け流していくが、肩に二本、足に数本、薄く傷ができた。さほどダメージは通っていないが、攻撃スピードに内心驚き、焦りが生じる。
『さぁて、クイーンの技は見抜かれている。……ここはあれを』
ルークは反撃に、素早く連撃を放っていきながら、頭で考えていた。蓮は自分も攻撃で切り替えし、相殺している。
「はぁぁぁあああ!!!」
蓮の周りに揺らめいている、朱色と金色の焔がより爆発し、腕に纏われた。恐るべきスピードで、ルークの右刀は粉々に叩き割られ、右肩に鋭い焔の拳を喰らった。ルークは吹き飛び、地面に崩れ去る。立ち上がった時には、蓮は炎を集中させ、魔力をためていた。
「……この威力!禁じ手だ!」
《僧正》から《王》!
静かに手を合わせ、ルークは魔力を集中させていく。激しい魔力のぶつかり合いが、目に見えてわかるように、地響きが五月蠅く鳴っていた。ルークの最後にして最大の魔法が発動されようとした瞬間、蓮は阻止すべく奥義を発動した。猛スピードで駆け出していく。
「ああああああああ!!!!!」
朱眼 焔聖連撃
激しい爆発音と共に、蓮の腕のあらゆるところからバーナーのように剣を象った炎が噴き出していた。その数は10を上回っている。その焔の剣を、蓮は駆けながら実に三十七連撃浴びせ続けた。辺り一帯焔で包まれ、焔の中央で何が起きているのか解らない。ただ、〔ルークが魔法を発動するより速く蓮がルークを倒した〕ことは明白だった。
ルークは体に無数の斬撃痕と火傷を負って意識を失ったが生きていた。蓮はルークを縛って抵抗できないようにすると、深い傷を火傷させ止血した。
戦いが終わったとき、蓮がふと空を見上げると、夕日が沈み掛けていた。