CHESS
さぁ、戦いの幕開けだ!
魔法が本格的に出てきます!
南部
誰のいない街中で、たてがみのような髪型の槍使いの少年と、突如この地に降り立ったものが戦っていた。
「まさか、ここまでの強さを持つやつに出会えるなんて、今日はついてるな。」
バーニアスはズタズタに負けていた。足場がふらつき、槍に重心が傾いている。まるで闘志のみでたっているかのようだ。
「命は奪わない。降参しろ」
いくつかの切り傷しかない蓮の体は、金色のオーラできらめいている。右手には、鋭い爪が三つ形成されている。
「征六龍火の名に懸けて、降参など絶対にしない!」
バーニアスは全力を出しきるように、槍を掲げると
「竜神突き!」
構えた槍に巨大な竜の紋章が浮かび上がる。竜の如きパワーを槍に充填させ、直撃したと同時に相手の体内に放出する突きである。バーニアスは自分の残っている全ての魔力を槍に込めた。
「六波動剣《業魔の星刻》!」
竜の紋章が盾となり、煌めく六波動剣からバーニアスをガードした。
六波動剣とは……、斉天大聖のみが操れる六つの魔力でできた剣のことであり、様々な属性を持ち、蓮の思うままに操られる。
「隙あり!!」
今までで一番スピードでバーニアスは槍で突いた。
辺りに空を切り裂く音が響く。
「速いな」
バーニアスの渾身の一撃を六波動剣は受け止めていた。六つの剣が重なるように蓮の前に展開されバーニアスの渾身の突きを防ぐ。
「《業魔の迅雷》」
蓮の六波動剣は進化していた。
疑似覚醒形態での六波動剣は剣を飛ばすだけではなく、その属性を宿した六つのエネルギーの剣を自らの身体に装備して攻撃することも可能になっていた。雷の力が剣に宿り、真神のそれには及ばないが、しびれるほどの威圧感を放っている。
「切り裂け、閃光の裁き」
目映い閃光が辺りを飲み込み、一瞬の出来事で勝負が決まった。
「終いだ」
バーニアスから血が吹き出し、バタリと倒れ去り動かなくなった。しかし、息はしているようだった。
「ハア…ハア、な、なぜ俺…を生かしておくんだ…?」
蓮は能力を解除し、静かに答える。
大人びた風貌になった今でも、眼だけは野望の如く、最前と朱色に耀いていた。
「命を奪うことに意味なんてない。……勿体無いんだよ、その命が」
そう言うと、手をかざし、北に歩いていった。
『良いのか? 野放しで』
心の中で何かが語りかけてくる。蓮は目を閉じた。心の中の光景が見えた。深淵なる闇に一人たつ男、白黒逆転している自分が話しかけてくる。
「バンス、久しぶりだな、話しかけてくるのは」
心で話しかける。バンスと呼ばれるのは、斉天大聖の化身である。疑似覚醒形態を発動する際、彼とは契約を交わさなければいけない。
斉天大聖は『覚醒』によってさまざまな力になる特殊な魔法である。
七聖覇者 基本形態
自我や精神は通常で、六波動剣も扱える。
しかし、本来の力を出せておらず、戦闘能力は一般的な魔法となんら差異はない。
覚醒形態
【ザ・バースト】
真の力を覚醒させた時になる。
限界能力値の斉天大聖の持つすべてを引き出せるが、自我を失いあらゆる物を破壊するまで止まらない。
疑似覚醒形態
【セカンド・オリジン】
初期覚醒形態で精神を安定させ、かつ精神世界の魔物(心が具現化した七聖覇者)
と対話し、力を借りることでのみなれる。
覚醒形態より能力は大幅に劣るが、自我が安定するところが利点である。
この三つの形態を『七聖覇者』達は持っていて、身体、精神の鍛錬により習得していく。蓮も、四年の月日を経て、ようやく疑似覚醒形態をモノにすることができた。
『歴代の斉天大聖の中で、お前だけだ、命を絶つことをしないのは……。』
心の中でバンスの言葉が響く。蓮は通常状態には戻らず、本の少しだけ、斉天大聖化《七聖化》している。
「別に良いじゃないか、あいつはもう人を殺さない」
『お前の言う通り、負のオーラが消えていた。まぁ、良い。それより、ヘッドフォンをつけろ。』
ヘッドフォンをつけることで、蓮の集中力がまし、スムーズに七聖化することができる。蓮は仲間たちのいる場所に行くため、歩いていく。
「まったく、いつになったら会えるんだ……?」
ラヴェール王国城壁付近 レイン VS ルーク
「俺を見破った? 冗談きついよ君」
ルークが笑いながら剣をヒラヒラさせている。
「お前の魔法の恐ろしさは、見交わし脚じゃない《連携》だろう?もうひとつの魔法がお前の魔法を隠している」
レインがそう言い放つと、ルークは笑いをこらえるように語りだした。
「君は随分回りくどい言い方をするね。そんなもんじゃない、俺の魔法は………」
剣を再びヒラヒラとさせ、剣先を相手に向けた。再び瞬間移動を繰り返し、レインを切りつけていく。
「見破ったなんて、無理して言うもんじゃない。」
レインは剣先を読み、タイミングをあわせて、受け流した。
「もらった! 彗星爆発!!!」
バランスを崩し、瞬間移動が止まった瞬間、勢いよく攻撃を放った。蒼い炎をまとったレインの拳は、恐るべき速さでルークに向かっていく。この魔法は、相手に拳が触れるとエネルギーが勢いよく爆散し、拳の威力を何倍にも高める魔法である。彼はこの魔法とともに「蒼い彗星」の異名を獲得した。
「っこれはっ!?……外した……!?」
「くくくくっ、どうやら本当に瞬間移動の《制約》は見抜いてるみたいだな、だがまだまだ甘い。俺の『盤上の軍神』の真の力はここからさ。……モード切り替え《騎士》から《僧正》へ!!」
レインの後ろに、ルークが回っていた。その手に持っている剣は今までの細剣はなく、黒き剣と白き剣の二刀流になっていた。
「これが君の言いたかった《連携》か………?」
先ほどの剣より、遥かに重みもスピードもある連続攻撃をレインに浴びせていく。瞬間移動はしていないので、反応こそして受け止めたりしているが、その攻撃の多さ、次第にhitが増えていく。
そう、これがルークの魔法。
《騎士》は、障害物を乗り越える〝疑似瞬間移動”でき、味方も飛び越えて移動できるナイトのようである。そしてこの《僧正》は、四方向に同時に斬撃を放つことができ、ルークはこの四方向を二方向にし、二倍の威力の斬撃を二方向(二刀流)に放っていた。斜め四方向自由に移動できるビショップを象っている。
「こ、このまま、負けてたまるかっ!! 俺の2つ名は『蒼い彗星』、速さなら負けない」
レインから蒼い火花が散っていく。体の至るところに蒼い炎が宿っている。
「……限界解除、身体への負担を無視して全力を出しきる魔法だ!」
レインは落ち着き、拳を握った。
レインから発せられる爆風に、小石がコロコロと地をつたっていく。
「ハハハハッ!!面白いよ君!!!………君に評して、本気で相手してあげるよ」
ルークは高らかと笑う。彼が動きを見せた瞬間、神速の居合いでレインが抜き去った。ルークの脇腹に、通りすぎさまに鋭い連激を数発放っていた。ルークが脇腹を抑える。
「なかなか速いな………だがこれくらいの攻撃じゃ、俺は死なないぞ・・・?」
ルークは二刀流の剣の矛先を向けた。勝負を楽しむように笑っている。彼にはレインと違って余裕があった。まだ魔法の〝モード”を、三つも残しているのだ。
「はああぁぁあ!!」
二人の凄まじい連激の衝撃波ががラヴェール王国の城壁を破壊していく。
「………こいつ、まだ速くなるのか!?」
レインの彗星の連続攻撃をルークは二刀で辛うじて受け流して、攻撃を放つ。
「星屑翔連鎖!!からの…………」
天の川のような鎖をルークの二刀に巻き付けた。その鎖は彼の心とリンクしており、生半可な力では切れない。
左右の刀と刀は繋ぎ会わされ、ガチャガチャと鉄の軋む音が鳴り響く。
「流星彗剣!!」
足に蒼い流星のエネルギーを纏い、剣に具現化させ斬りかかった。二度目のこのパターンの攻撃だが、今度は確実に当てられるだけのスピードがあった。レインのすべてをぶつけるようなこの攻撃の衝撃で、辺りに凄まじいエネルギーが広がっていく。
「うおぉぉぉぉおおお!!」
レインの踵落としは、ルークの二刀にクリティカルヒットした。二刀は砕かれ、地面に破片の散らばる音が乱反射していく。レインは降り下ろした右足を地面に着地させ、遠心力にものを言わせて左足で蹴りを放った……………が、
「……二刀を砕くか……この硬さを意図も簡単に…いい技だ。……」
蹴りを右手で受け止められたレインは、動きを封じられた。ルークの絶妙な力の入れ加減に、振り払うことができないでいる。そんなことを見ながら、彼は淡々と続ける。
「いくらでも作れる刀を壊しても意味ない。……しかし、ここまで僕と渡り合った君を評価して、特別に見せよう《クイーン》が動く『トキ』を………『Re:BUSTER』」
ルークの身体が、紅紫の不気味な色に包まれた。刹那、音もなく、ラヴェール王国の城壁前の乾燥した岩場は、消し飛んだ。
………砂ぼこりの中に倒れているレインはもう、気絶していた。
ラヴェール王国に再び進行していく、征六龍火筆頭、ルーク・アルデヒド。彼は、憤怒の形相を浮かべながら言った。
「……いい余興にはなったな。バーニアスは始末されたみたいだが、俺を侮るなよ、斉天大聖」
完全に王国に足を踏み入れたときには、彼の表情は普段とかわりなく戻っていた。
感想をぜひお願いします^^