四年後の世界
さぁ、ストーリーが本格的に始まっていきます!!
週一ぐらいで載せていくので、よろしくです!!
穏やかな気候とそこにすむ生物たち。それはあなたたちが住む世界と同じであろう。しかし、この物語の世界には変わったモノが存在している。─────魔法。人間の力だけでは到底できないことを可能にする力である。
これは、KAEZと呼ばれる魔法機関で奮闘していた少年たちの物語の、四年後を描いた物語である。彼らの真の物語を語るには、未来から始めなければならないのだ。
ここは四年後のKAEZ西南支部。
第一線戦闘部隊 大佐の霧ヶ峰出雲(19)は欠伸をした。
「あれから四年もたつのか……。」
そう、今日この日3OX5年3月6日の丁度四年前にある事件が起きた。
危険度最高値の“闇魔戦士ギルド”『フェルナンデス』との紛争、それはある少年の『重要性』が鍵を握っていたのだ。しかし、作戦の指揮をとっていた、 戦闘部隊 最高司令官 洙廉総帥は反抗勢力を端から叩き潰し、KAEZを軍に変貌させた。
「霧ヶ峰大佐、東南支部からユーリス・ブラッドレイ 准将 が御見えです。」
突然ドアがノックされ、ユーリス・ブラッドレイ(20)が入ってきた。
「ブラッドレイ准将、何のようで?」
「俺のところの部下がある情報を掴んだ。」
彼はいきなり要件を伝える。急いでいるのかもしれない。ユーリス・ブラッドレイはこの四年で大佐の一階級上の准将まで昇格した。
「ある情報?」
霧ヶ峰は書類に何かを書き始める。仕事をしながら話を聞くつもりだ。
「……お前に行かせたい。あいつの目撃情報がラヴェール王国で出た。」
霧ヶ峰の筆の手が止まる。霧ヶ峰は呆気をとられた。
「そんな………まさか。」
一通り説明したあとユーリス准将はさっていった。
「……秋道美紀 特殊科学班 室長、高坂香 治療班 班長、 真神維鶴 戦闘大連隊 第二部隊隊長、神保彰 冥皇五帝 補佐官 に連絡しろ」
部下に命令を下す。今のKAEZの軍は、比較的若い世代が中佐周辺の地位についている。そして、特殊な魔法(能力)を持つ魔戦士は特殊部隊に所属し、様々な特権を与えられている。連絡をとり、伝えたあと、霧ヶ峰は準備をする。それを見かねた部下は
「霧ヶ峰大佐、どこかへお出かけへ?」
霧ヶ峰はコートを羽織ながら扉を開けた。天馬の刺繍が施された戦闘服である。愛刀を握り締め部下に、
「3日ほど出ていく。俺の有休から引いとけ」
と告げて出ていった。
同時刻 特殊科学班
KAEZには、冥皇五帝(総帥)の下に、『軍事部』(兵隊や指揮を取る)『情報部』(情報整理局ともいい、あらゆる情報を管理、伝達する)『支援部』(治癒魔戦士、援護魔戦士)の3つの組織があり、それぞれ、軍事部は将軍、情報部は室長、支援部は最高支援官 が統括している。
「アイナー班長、この資料を纏めといて頂けますか? ……これから席を外さねばならないので」
周囲にそびえたつ二メートル越えの本棚。机に散乱している様々な言語の書類たち。そういう環境の下で仕事をしている特殊科学班は『情報部』に所属している。四年後の秋道美紀は情報部の最高役職、室長まで上り詰めていた。
「わかりました室長。」
アイナー班長はサクサクと仕事を進める。美紀は悪いなと思いつつ、コートを羽織った。だて眼鏡を外し、扉を開けた。
「霧ヶ峰、久しぶりだなぁ。……みんなどうしているんだろう。」
空に呟く。
雲の流れは、始まりを予期していたが如く、鮮やかに、ゆっくりと、晴天を拒むように流れていった。
同時刻 戦場
「援護魔戦士はまだか!」
戦場 といっても、紛争の誰もいなくなった城下町で、四年後の真神維鶴は叫んだ。敵の奇襲にあったのである。
彼ら戦闘部隊は、各国で勃発する戦争・紛争に『より平和的な思想の側』飲み方として参戦していた。これがこの魔法界全体の規律のようなものである。
「 隊長! 援護部隊、間に合いません!」
隊員全員の額に汗が滲む。部隊の怪我人が増えてきた。
「俺が活路を開く! ひとまず撤退しろ!」
隊長である真神は、仕方なく、緊急の作戦をとる。部隊の命が最優先だ。
「隊長………しかし………わ、わかりました!!」
副部隊長が隊員に指示を出す。真神は静かに歩き出す。
「『狩り尽くす迅雷」発動!」
第二解放:光る獅子の装甲
バチリバチリと雷鳴が轟き、輝く鎧兜が真神を包み込む。装甲は見るものを威圧するように、周囲に電撃を放っていた。肩から突き出た角に様な形の突起が、獅子の牙のごとく怪しく光る。
「汚ねぇやり方しやがって、まとめてぶっ潰してやる!!」
隠れていた敵兵士が飛び出した。その数約三十。皆銃火器を装備している。真神は腕に雷鳴を宿した。
「だらあぁっ!!!」
腕に雷を纏い、バッタバッタとなぎ倒していく。敵兵士の銃などものともせず なぎ倒していく。それはまるで、指で豆腐を引き裂くような……?それほど圧倒的に潰していった。
「改造魔銃を喰らいやがれ!」
敵兵士の数名が巨大な大筒を運びあげ、真神に標準を定めた。先ほどとは威力が数倍も上に見えるが、とてつもなく重いため数人がかりで発射させようとしている。真神はこの隙を逃さなかった。
「うおおぉぉお!!」
迅雷獅子の鉄拳
大筒が発射されると同時に、素早く接近し、殴りがかり、大筒を叩き潰した。大筒の破裂する音が、不快に戦場にいる兵士たちの耳に鳴り響く。
「こ、これが、『雷鳴魔神』…………。」
最後の敵兵士が、がくりと倒れた。四年後のこの世界では、KAEZの軍事強化(来るべき魔法戦争に備え、次世代(12~16歳の若い者達)の育成に力を入れる)により、本部、全支部あわせて総勢25名が魔法の『第二解放』に成功した。この25名には、魔法に見あった称号を与えられ『新世代の二十五人』と呼ばれる。
彼、真神維鶴もその一人。対戦争に特化した魔法を扱い、『雷鳴魔神』の称号と戦闘大連隊 第二部隊部隊長(実質的には大佐とほぼ同等)の位を授けられた新世代の要である。
真神は作戦の成功を部下に無線で伝えた。周囲には魔力の反応はもうない。張りつめていた気が抜けるのと同時に身体から力が抜ける。その時、西へ吹いていた風が、途端に南へ吹き始めた。
「風が……変わった!?」
先ほどとは風の向きが変わっていた。強い魔力に反応したのかもしれない。南の方に真神が振り向くと、遠くの方に1人、先ほど倒した兵士とは段違いに禍々しい魔力を秘めた男がたっていた。あまりにも遠いので シルエットしか解らない。やがて影は消え、そこには紛争によってボロボロに崩された民家しかなくなった。
「遠距離に敵の影を発見。危険度は S と推定する。応答願います。」
真神は無線で本部へ通達した。
「至急、追尾を開始しろ。但し深追いはするな、三時間おきに本部へ連絡を入れろ」
「了解!」
真神は微かに探知できるほど離れた影を追うため煙のように消えた。
翌日
-KAEZ本部-
今年一番と言ってもいいほどの快晴の空が窓から覗ける。しかしそんな天気なのにもかかわらず、1人の男が、頭を悩ませていた。四年後の望月雄塀である。彼は、軍事部 准将に任命され、先ほど指令が入った。指令室に呼び出し通りに向かうと、想像通り任務の言い渡しであった。
「西南にそびえる小国『ラヴェール王国』に闇魔戦士が侵攻し、KAEZに応援要請が入った。…国が落ちるのも時間の問題だが、あの一帯を根城にされたら面倒になる。強力な魔戦士を数名組ませるから 殲滅させろ……なぁに、演習は必要ない。………あったらわかる。」
とのことだった。
「ラヴェール王国………かなり遠いじゃないか。」
雄塀は、戦闘や移動が嫌いだった。戦闘になれば素早い勝ちを選ぶ。自分と同等以上ではない相手と戦うとき、めんどくさくて仕方ないのだ。だが、その面倒が再び少年達と彼を引き合わせる。
同時刻
-ラヴェール王国 市街地-
─────こんなことが、こんなことが起こるなんて!
市街地に響く爆音、発砲音。普通では到底起こる筈がないことが起きている。
「……ここに隠れていろよ。兄ちゃん少し見てくる。」
路地裏に兄弟が二人隠れていた。弟はガタガタと身を震わせ、物陰にしゃがみこんでいる。まだ5才ほどだ。兄は便り無さそうなナイフを片手に立ち上がり、弟を落ち着かせようとしている。兄はひっそりと気配を殺しながら 大通りに出ていった。
…………沈黙。
弟は気になり、大通りのほうへ話しかけた。
「……お兄ちゃん?怖い人、いない?」
一瞬の出来事だった。激しい爆音が鳴り響くと、兄が吹き飛ばされ弟の目の前を横切った。弟は何が吹き飛ばされて行ったのか解らず、とりあえず見た。………そこにはやはり、ボロボロになった兄が子途切れていた。弟がどうなったのかは言うまでもない。
「……こんな簡単に制圧出来るとはな。小国は実に大したことない。」
大通りを三人の人影が歩いていく。
「ルークさん達は、もう乗り込んでいるかなぁ」
たてがみのような髪型の少年が言った。少年は地面を踏みしめながら、笑っていた。
「まもなくKAEZがくるぞ。…俺達『征六龍火』の力を見せつけろ」
KAEZ
闇魔戦士による襲撃を受けているラヴェール王国。それより南に位置するKAEZ西南支部に、望月雄塀他 部隊のメンバーが集められていた。ここのところ風が強く、天候としてはあまりよくない。
「望月、 久しぶりだな。 いつ以来だ?」
KAEZ西南支部支部長 新賀努 が明るく声をかける。支部の運営を任されている新賀と、支部、本部通して「准将」である雄塀。役職的にはどちらが上とも解らないが、同期生なのでお互い敬語は使わない。
「お前が説明してくれるんだろう? 今回の……ラヴェール王国 攻防戦を」
新賀は深刻な表情になる。
「はっきり言って、今回のはヤバイぞ。急襲の犯人は『征六龍火』だと情報が入った」
望月はそれを聞いて、何故か安堵したように笑った。
「それを聞いて安心したよ。……強くないとやりがいがない。メンバーはどこだ?」
新賀は「お前らしいな」と小さく溜め息をつくと、指で合図した。………ついてこい だそうだ。
廊下に足音が響く。
「懐かしいメンバーばかりだぞ。」
新賀が扉を開けた先には、数名の男女がいた。
霧ヶ峰出雲
秋道美紀
高坂香
レイン・サインソード
「『魔導祭』以来だな、俺も呼ばれたんだ。」
相変わらず軽そうなレインが言った。
「久しぶりだな、みんな」
望月雄塀は、久しぶりに、心から笑った。