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KAEZ TIME!!(NEXT)  作者: KeiTa
第二章:Darkness begins to move.
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空閃の牙



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 KAEZ本部から北へ6万キロほど離れた地に、『セルナーレ共和国』という国がそびえている。その国の首都カイベンにはKAEZ北東支部が建っていた。

北東支部となれば、真っ先に名前が出てくるのはクラウン・ド・ダーツである。彼は北東支部のエース魔戦士であり、世界屈指の戦闘センスをもち、『最強の近接戦闘魔法』と呼ばれる《|空閃の牙》《エアロ・デューク》を編み出した。

 その魔法は、左腕を白い魔獣のような腕に変貌させ、指先から突き出る爪は、あらゆる防御を引き裂く攻撃力を、腕全面はあらゆる攻撃を耐え抜く固さを備えている。

 その最強の男がいる北東支部の門に1人の人影。


「西南支部から参上した望月雄塀 准将です。グリフォード総帥まで通して頂けますか」

 雄塀がインターフォンに言うと、静かに門が開き、中から若い男が出てきた。KAEZのどの支部も、訪問する際は名前と役職を言わなくてはいけない。自分で自分の役職を言うことが雄塀はもっとも嫌だった。今も不機嫌な顔で門を見つめている。それも一瞬で、普段の表情に戻ると、若い男のほうに視線を移す。


「総帥室まで案内させていただく エリック中尉と申します。ついてきてください」


 指示に従い雄塀はついていく。門の奥にそびえる これまた大きな扉がスライドして開く。北東支部は、

《他の支部より少しでも良い設備を整える》ことにただならぬこだわりを持っており、KAEZでは最も設備に費用をかけている支部である。


「いつ来ても思うが、金の無駄遣いだな」


 雄塀が呟くと、曖昧な笑みを浮かべながらエリック中尉が答えた。


「ずっとこうですからね。北東支部と言えば《技術開発の支部》と呼ばれたりしてますよ」


北東支部は装飾のみならず、研究や開発、その他あらゆる技術的分野においての設備も整っており、技術的分野では群を抜いて本部や他の支部より進んでいる。


 支部の中に入ると、暖かい熱風に包まれ、雄塀を冷やしていた冷気の感覚が消えて行く。正面玄関から真っ直ぐ進んで行くと、一際目立つ大きな階段が見えてくる。100年以上の歴史をもつ『中央大階段』だそうだ。その横幅は20m近くもあり、現代とはかけ離れてい凝った彫刻が彫られている。


「総帥室は4Fです」


 中央大階段で2Fまで上がり、突き当たりを左折する。角を曲がるとエレベーターがあり二人は乗り込む。するとエリック中尉は、内部に備え付けられた5×5の入力パネルに素早く数桁打ち込んだ。

 魔法世界においてのエレベーターは、パネルに固定の番号を入力することによって、その部屋の前まで自由に移動させられる。――壁が突然扉になる。等ではなく、入力された場合のみ、登録された部屋の前まで来る、と言った感じである。(主に総帥室など重役の部屋などしか登録されていない)



到着を示すベルの音と共に、エレベーターの扉は静かに開いた。他の支部では扉の開く際の音が大きいのだが、北東支部は無音だ。こんなところにも最新の無音設備が導入されているのか。と、雄塀は笑いを含め呆れていた。


「到着しました。ではこれで自分は失礼させて頂きます」


雄塀が軽く礼を言うとエリック中尉はエレベーターで降って行った。総帥室の扉は全面白塗りで装飾は一切ない。いつも来るたびに雄塀はこの扉を見て身震いしている。


「何でどこの支部も同じデザインなんだよ。ナチュラルに怖いだろーが」


最高防音仕様の扉の前にもかかわらず、とてつもなく小さく呟いた。そして、決意を固めると指紋認証に指を添える。白い扉が音もなく開くと、奥には鋼鉄の扉が見える。雄塀が扉の端に目をやると、『魔法無効化』の魔方陣が見えた。

 この魔法は、物質にしか使用できないがあらゆる魔法を無力化する。雄塀はサッとカードキーを取りだし、横に備え付けられたリーダーに通す。


「毎度毎度すまないな。厳重な警備はどこも同じだろう?」


静かに座っていた総帥は、第二の扉を開け、入室した雄塀に、気さくに話しかけた。

 KAEZ北東支部 最高管理者 及びKAEZの全指揮権をもつ五人の一人、グリフォード。


「グリフォード総帥、入った直後に刃を突き付けられるのはここだけですよ」


そう言うとグリフォードは、手を軽くあげ、刃を突き付けている者を下がらせた。そう、雄塀が部屋に入ったとたんに、総帥の護衛の二人が刃を向けたのだ。そうするように訓練されているのだろう。


「この二人は、『皇剣』の者達だ。気配に反応してしまうのだよ」


刃を下に向けた状態で、剣を常に握っている二人の静かな男は、KAEZからは独立した機関『皇剣』に所属する戦士らしい。


皇剣とは、十二人の構成員から結成され、あらゆる武術を叩き込まれ鍛えられている集団である。彼らは魔法を一切使用せず、純粋な戦闘能力では魔戦士とは別格である。皇剣は世界中のあらゆる機関・国の高官の護衛のため存在しており、その実績の数は数えきれない。


「皇剣が来るなら、俺は要らないんじゃ……?」


「いや、皇剣は私の周囲に張り付いているのだ」


隣にその皇剣がいないかのように、グリフォードは淡々と話している。二人の戦士は静かに剣を握っているだけである。その不気味ともとれる佇まいに、雄塀の額に僅かに冷や汗が滲む。


「君には私の護衛ではなく、クロウド・ラルバートを討ってもらいたい」


グリフォードは本題を出した。その眼差しは、魔戦士ではなくなった今でも覇気をまとっている。雄塀は立場上、断ることも出来ず、勅命任務の詳細を連絡された。


「敵の数は100以上は確実だ。安心しろ、クロウド以外大したやつはいない。君の部隊は、アイツとのコンビだ」


 刹那、雄塀は理解した。グリフォード総帥の言う《アイツ》とは、北東支部のエースのことである。彼ほどの男なら、クロウド・ラルバートと言えども易々と倒せ、サポートがあれば大部隊も潰せる。


「クラウン・ド・ダーツ……。最強の矛」


 そう呟くと、雄塀は扉へと振り返り、白い扉にそっと手を触れた。音もなくスライドした扉を静かに見て、雄塀が総帥室を出ようとしたとき、


「これは始まりの闘いになるだろう。古代兵器を奴等に渡してはいけない」

 グリフォードはこう呟いた。雄塀は聞こえていたが、名前も知らない古代兵器のことを気にしている暇はなかった。向かうべきところがある。

 最強の矛とさえ言われる、クラウン・ド・ダーツへ会いに行かなければならない。








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