表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
彼女は勇者に向いてない!!  作者: white
プロローグ
3/33

プロローグ

初めての方は、初めまして。

少ないでしょうが、『虹の花~』を読んで下さった方は、お久しぶりです。


whiteと申します。

第二作目。連載としては実質初作品でして、おそらく亀進行になるかとは思いますが、よろしくお願いいたします。

 初めてみる景色。

 心を奪われるというのは、きっとこういうことを言うのだろう。

 その少年は、一人、ただ目の前の風景を見つめ、立ち尽くしている。


 頬を撫でる風は、優しい初夏の匂いがする。朝露に濡れた若草の匂いだ。

 まだ辺りは薄暗く、雲一つない藍色の夜空には星が瞬いている。

 ようやく白み始めた空に映った山の稜線は、遥か遠くに見える。

 広い、見渡す限りの草原。何リーグ先まで見渡せるだろうか。

 そのところどころに低い木が群生している。その部分だけが小さな丘のように見える。


 彼らのこれからたどる道筋の、その長い長い旅路の、その最初の一歩は最大級の幸運に恵まれた。

 この時期でも雪の残る山脈の(いただき)でもなく、身を焦がす灼熱の砂漠でもない。

 どこまでも穏やかで、どこまでも静かで。

 まだ明け切らない空の『紺』と、朝日を浴びる草原の『碧』が支配する世界。


 固く胸に刻んだ使命感も……。

 その双肩にかかる重責も……。

 その他諸々の俗世的な感情も……。

 すべて洗い流してしまう様な、そんな風景。


 しばし夢見心地のまま呆けていた少年も、ようやく覚醒したようだ。

 弾かれたように周囲を見渡す。

 やがて少年は、その視界の片隅に、目標の人物を見つける。


 艶やかな長い黒髪に、今は瞼に覆われている栗色の瞳。

 雪のように白い肌と、桜色の薄い唇。

 年不相応に凹凸の乏しい体。

 少年よりも、頭二つは小さい小柄な体躯の少女。


 名をクロエ・スルール――

 ――現在確認されている、唯一の“勇者の血族”だ。




 さて、この物語を語り始める前に、一つお詫びをしておかなければならない。


 この物語は、ただの、どこにでもあるような旅行記になるだろう。

 それはきっと、刺激的でも、喜劇的でも、悲劇的でもない。


 未知の世界、前人未到の秘境を目指す――。

 そんな冒険譚には、決してなり得ない。


 悪逆非道の魔王を倒し、無辜(むこ)の民と世界を救う――。

 そんな英雄譚も、彼らでは全くもって役者不足だろう。


 なぜなら、この物語は


 “魔王”を倒した後、“勇者”の少女とその“従者”の少年が、家に帰るまでの物語なのだから――

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ