【4月某日】
この日は研修最終日。
我々は入社式以来に五十嵐くんを取材する。
といっても研修は7日間。
今日はノンフィクションノベル〈What is Real?〉のネタになるブラックな出来事は起きるのだろうか。
Q.おはようございます。会社の方はいかがですか?
「ぼちぼちですね。
まだ分からないことが多いんで。
それよりも、明日配属される営業部がなんていうか…その…。」
彼は言葉を濁らせながら我々に語る。
なんとなく、言葉を発する彼の唇が青ざめてる様に見えた。
我々はそんな彼の研修風景を取材する。
Q.研修はどうですか?
「えっ、えぇ…。
まさか研修が7日間しかないとは。
それに覚悟はしてましたが、やっぱりサービス残業当たり前なんですね…。」
彼はそう言いながら、教育担当が読み上げる研修テキストの文字を追う。
その時だった…。
ズバーン!!
!?
我々はその音にビックリした。
同時に彼の顔が青ざめる。
そして借金取りでもいるのかと思うくらいの、けたたましいヤクザ口調な怒鳴り声が聞こえてきた。
Q.なんか…スゴイ音と声が隣の部屋から聞こえましたが?
「…はい。
隣は営業部の部屋です。
なんか机を思いっきり叩いて、テメェよぉ!とか暴言が聞こえますよね…。
自分、明日営業部配属なんですけど、研修初日にこれ聞いて、正直隣の営業部の部屋に行きたくないです……。」
彼は微笑しながら我々に話してくれたが、明らかに顔色が悪い。
これは話しに聞いたアイツの声…いや、アイツの必殺技だ。
クライシス営業部史上最強No.1四天王、赤鬼部長の必殺技、おたけびクラッシュだろう。
そんな中、教育担当は他人ごとかの様に、営業部は厳しいですが辞めないでくださいと、至って冷静に言う。
辞めないでくださいって…えっ?
その後も我々は、研修中に何回も赤鬼部長の必殺技、おたけびクラッシュを聞いた。
彼は後に、研修の頃から、クライシスがブラック企業なのではないかと薄々気付いていたと、我々に語ることとなる。