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推しのために転生したら最強になってたので、乙女ゲーの攻略対象を全部潰します

作者: 黎明
掲載日:2026/02/19

 ヲタクが異世界転生したとして、なにをするだろうか。魔法を極めたり、剣を極めたり、冒険者になったり、地球の知識を生かしてして商人になったり、・・・まあ、いろんな方法で第二の人生を謳歌するだろう。




こういう異世界転生物の話は大抵、主人公がチート能力を持っている。知識チートだったりね。主人公の行動で周りが助けられて主人公に惚れて主人公のために動き崇拝する。そして主人公はそれに気づかない。そういう、無自覚チート。




おかしいだろ。気づくよ、普通。あと、基本的にどんな作品でも共通しているのは、主人公の容姿が良いこと。話に関わってくるキャラも良いけど主人公は別格パターン。主人公は基本最強。強すぎるだろっていう能力を持ってる。そして欠点無しのハイスペ。顔良し声良し性格良しの三拍子が揃って、どんなことでもできる才能。初めて剣を持った主人公が極めてる人をあっさり倒したりは当たり前。さらには誰かを助けるために自分の命を懸けるお人好しっぷり。




モブとか脇役、悪役に転生した主人公でも転生してる時点で知能系でチート扱いなんよ。あとスペックが平凡だったとしても実は最強の何かがある、とかやたら運がいいとかある。




 まあ、つまりは異世界においてどんな主人公も最強なのだ。




んで、








 ‘‘ヲタクが異世界転生をしたらなにをするか‘‘








これに話を戻す。




 結論。推し活である。




 




これはヲタクの種類によるが、今回の例、私であれば迷いなく推し活を選ぶ。




好みの男を攻略?チートで何不自由ない生活?ワクワクドキドキの楽しい冒険?んなもんいるか。野郎に興味なんざねえよ。絵なら愛せるかもだけど、生きてんのは無理。




何不自由ない生活?暇でしかなくてすぐ飽きるわい。冒険は歩くだろ。こちとらひきこもりのヲタクじゃい。動きたくねえんだよ。厄介事なんざくそ食らえ。








 ・・・コホン。とにかく、推しが存在するヲタクは何においても推しが優先なんだよ。推しに貢ぐために働き、推しを愛でるために食事や睡眠なんかの行為をする。風呂も推しのため。くっさい奴に推されるなんて推しが可哀想である。どうせなら臭い奴よりいい匂いのする奴に推される方が良いのだ。良いよね?








 そろそろ自己紹介をしよう。




 転生前は近藤茜。三十代会社員の独身女。




 今はアシュレイ。15歳。性別は一応女。一応、というのは私いつも男装しているから。




 転生してから知ったが、私は同性愛者のようだ。思えば男に触れられるのは気持ち悪く、触られた箇所は鳥肌が立っていた。・・・これだけだとただ男が嫌いなだけである。誤解されたくないので言っておくが、女相手に触られたとしても気持ち悪いのだ。改善できるかとも思ったが体質なので諦めた。








 って、私の話はどうだっていいのだ。私の転生先は乙女ゲーの世界だった。はいよくある展開。創作なら大歓迎だけど、現実は断固拒否。とまあ、乙女ゲーだろうとなんだろうと好きにしろとしか思わないのだが、この世界は別。




 何を隠そうこの世界。私の推しがいる世界なのだ。








 私の推し。それはこの乙女ゲーの主人公である。




セミロングの緩くウェーブした明るい栗色の髪に、くりっとした大きい翡翠色の瞳。平均より小さめな背丈。華奢な体つきは庇護欲をかきたてる。全体的に可愛い印象の彼女だが、周りに流さない自身の意思を持っている。守りたくなる彼女、でもいざという時はそこら辺の奴等より頼れる。このギャップがたまんない。




私は彼女の容姿もそうだが、その性格にも惹かれている。




 そして、彼女は才能に溢れている。剣を持たせれば1日で達人をも凌駕し、魔法を教えればすぐに習得し使いこなす。




 魔法といえば、彼女は普通の魔法は使えない。変わりに光魔法と呼ばれる極稀にしか使い手が現れない魔法を使うことができる。








 この乙女ゲーは好きな絵師が立ち絵を描いていたから購入した物だ。絵師様には感謝している。絵師様が居なければ彼女を知る事はなかった。そんなの想像したくもない。








 買ってしまったから一応プレイしてみただけだった。スチル見たかっただけだった。




でも、彼女の立ち絵を見て吸い込まれた。見た目だけかと思いもしたが、それは違った。過酷な生活で人に裏切られてもいじめられても前を向き、信じ続ける姿は格好良かった。ヒロインに格好良いはどうかとも思ったが、本当に格好良いのだ。




 だから転生先があの乙女ゲームだと知った時は嬉しさでいっぱいだった。自分の憧れに、推しにあえるのだと。8歳の子供に転生してると気づいた時は絶望してたのに、我ながら変わり身が早いな。




 だが、問題がある。転生先は平民であり、じきに子爵家の養女として貴族になる彼女と接点がもてない。








 ならば自分も貴族の養子となるか。無理だ。貴族に会うことができれば取り入ることは可能。だが、養子を欲しがっているような貴族との繋がりなんぞない。








 彼女が子爵家に居る間は会えない。ならば学園に入学する時に近づくのがいい。そうとなれば金がいる。金は生活にも貴族に紹介状を書いてもらうためにも必要だ。




貴族の護衛として入るのもかんがえたが護衛だと自由時間が取れない。だから生徒として学園に入る。それならば近づくことも可能だろう。




そして、手っ取り早く金を稼ぐには冒険者がいい。依頼達成の報酬はその場で受け取れるからすぐに手に入る。それに魔物討伐系の依頼を受け報酬をうけとり、魔物から取れる素材を売れば更に稼げる。




そうと決まれば早速登録・・・といきたいところだが、登録にも金がかかる。そして、町を出るにも金か冒険者カードのどちらかが必要。当然、そんな金は無い。なので、町の外壁を登って外へ行くことにした。




 勿論、外壁というのは簡単に登れるわけじゃない。普通なら大人でも登れない。だが、そこは異世界。転生特典ご都合主義なのか今の身体は天才なのだ。身体能力が良く、魔力量もそれなりに多い。最初はこの程度だったが全力で鍛え上げると身体能力は抜群、魔力量も膨大になった。延びしろが多い身体である。まあ、血反吐吐きまくったせいで貧血でぶっ倒れたけど。生きてるから良しとしよう。




 鍛えまくったお陰で今は、最高ランクの冒険者になれた。




 ある程度稼げるようになった時、推しの居る孤児院に行ってみたところ、既に引き取られた後だった。帰ってから泣いた。推しが引き取られてからの時間から考えて、推しは私よりも二つ年下らしい。








 となると私は王太子達と同い年か。攻略対象は三年生が四人。二年生は一人。一年生が二人。可愛い我が推しは一年生として入学。攻略対象は例によって高位貴族。




推しと攻略対象をくっつけたくはない為、フラグは徹底的に潰す。推しが野郎といちゃつくのは絶対嫌だ。それ地雷です。相手殺して呪う未来しかない。呪い殺すんじゃない、呪ってから殺す訳でも無い、殺してから呪うんだ。我ながらねちっこい。愛重すぎるだろ。








 私生活している町と推しが生活してる王都はかなり離れている。そのため、会うことはできない。だが会いたくなってしまい、王都に行くことにした。普通に行くと一ヶ月くらいかかるがそこは執念で頑張った。それでも三日かかった。ほぼ睡眠と休憩無しで移動したんだけどな。水分補給と食事は歩きながら。   




 途中、過労と魔力切れで倒れかけた。さすがに目の前が真っ暗になった時はやばいと思って寝た。一時間だけと思ってたのに、丸一日寝てた。そのおかげで魔力と体力が回復してすぐ王都に到着した。




 宿で一日休んで子爵家の推しの部屋に忍び込んだ。一日休んだのは、魔法で綺麗にしててもお風呂に入りたかったから。臭くはないはずだけど推しに会うのにそれは駄目だ。動きやすい服にまとめ髪といういつも道理の格好で警備をくぐり抜ける。子爵とはいえ貴族。警備員は当然存在する。面倒くさいことこの上ない。捕まっても殺されるわけじゃないから魔物相手より気が楽だった。












 寝ていると思っていた。




 夜中だし、子供は寝ている時間だったから油断していた。




 起きていたのだ。空のベッド。窓際に置かれた小さい机と椅子。そこに彼女はいた。ゲームの時よりも長い、うねった栗色の髪。月明かりを受け、キラリと光る翡翠色の翡翠がこちらを見て丸くなる。




 あ、終わった。




 見つかってしまった。目があったし、さすがに逃げられないよねぇ。




 自分の口元に人差し指を当て、声を出さないように伝える。




 慌てて口元を手で押さえる推し。うん、可愛い。てか、3Dで動くとか反則だろ。




 何か言っているが手と口元がもごもご動くだけでわからない。彼女は室内、私はバルコニー。間にガラスがあるから聞こえない。




 会っちゃったものはしょうがない。開き直って鍵を開けて中に入る。




 どうせなら話したい。




 さらに目を丸くする彼女。そんなに開けて乾燥しないのだろうか。だが、そんな顔も可愛い。スチルもんだろ。ガチで欲しい。永久に保管しておきたい。




 私よりも低い背。今は六歳のはずだけど思ったより小さいな。椅子に座る彼女に声をかける。




「はじめまして、お・・・お姫様(推しだあぁぁぁ!可愛い可愛い可愛い可愛い)」




 推しと言いかけて言い直す。お姫様なのはおから始まる始まるから。お嬢さんやお嬢様よりはこっちのが特別感出そう。




 またもや何か言う彼女。口を押さえてるためさっぱりわからない。




 苦笑しつつ手をどけてやるともう一度話してくれた。




「あの、あなたはだれですか?」




 生声最高。うちの推しは声まで可愛い。心の中でガッツポーズ決めた。誰も居なかったら床を転げ回ってバク宙3回からのガッツポーズだった。変質者過ぎる。








 うんうんそうだよねぇぇぇ。夜中に知らない人間が入ってきたら気になるよね。質問しちゃうよね。可愛いなあ。








 さて、なんて答えようか。選択肢はいくつかある。冒険者。これは職業。アシュレイ。これは名前。茜。これも名前。とりあえず茜は無い。馴染みがなさすぎる。冒険者もなし。抽象的すぎる。となると名前か。アシュレイ・・・は噛みそうだな。舌っ足らずな印象だし。なら愛称か。




「アシュだよ。お姫様」




 アシュレイの愛称はアシュ。・・・だったはず。いやこれはアシュリーの愛称だったか?ま、いいか。




「アシュ?」




 首を傾げて返してくる。天使。天に召されそう。




「そう。アシュだ」




「わたし、おひめさまじゃないよ?」




 ぐふぅ




 可愛すぎる。




 お姫様じゃない、か。君からはそうでも私からしたらお姫様なんだけどな。




「君は私のお姫様だよ」




「じゃあ、あなたはおうじさま?」




 何でそうなる。




「だって、わたしはあなたのおひめさまなんでしょ?それじゃあ、アシュはおうじさま!」




 えへん、どや顔してる推しも良い。




 それはそうとして、その理論に吹き出してしまう。




「アシュ?どうしたの?」




「っくくく、いや、なんでもないよ。そうだね。君がお姫様で私は王子様か」




「うん!アシュはわたしのだんなさまになるの」




 ん?だんなさま?だんなさまってあの旦那様?




「何で?」




「だってね、おうじさまとおひめさまはけっこんしてたよ」




 そういうことね。童話か何かで読んだのかな。




 推しと結婚。いいかもしれない・・・・・・って、なに考えてんだ。私は女。この子も女。結婚できない。そもそもロリコンじゃない。




 勿体ないが断らないと。




「えっとね。結婚は好きな人とするものでだから─」




 ズキ




 何だ?断らないと。なのに、言いたくない。




「アシュのことすきだよ?」




「え」




「アシュはすきじゃないの?いや?アシュはわたしとけっこんしたくない?」




「!」




 悲しそうに、翡翠色の瞳が私の顔を覗き込んでくる。




 ずるい。推しに。大好きな人にこんなこと言われて断れる訳無い。それに、あり得ないことだけど。でも、多分、私は彼女に恋をしたのかもしれない。もし違ったとしても、幼いときのことだ。いずれ忘れるかもしれない。ならば、答えは一つ。




 彼女に跪き、手を取る。




「好きだよ。大人になったら結婚しよう。・・・ルーシャ」




 ルーシャ。ルーシャ・カトリス。この世界の主人公で私の推し。私の大切な人。




 この世界、女同士で結婚できるのかはわからない。忘れるのなら、それでいい。




「!うん!」




「必ず迎えに行く。それまで浮気せずに待っていてくれるかい?」




「うん!うわき?はしないよ」




「約束だよ」




「うん!やくそく」




 ルーシャは私の手を自分の頬に当てて遊んでいる。私は浮気すら知らない子供に何を言っているのだろうか。




「そういえば」




 ふと、気になったことを聞いてみる。




「何でこんな時間に起きてたの?」




「・・・寝れないの。ここにきてからうまく寝れない」




 なんと。ここにきてからということは、不眠か寝れても浅いのか。ゲームでこんな設定はなかったぞ。




「ルーシャ」




「なに?」




「寝よう」




 今のままだと不味い。人間、寝ないと死ぬぞ。私がぶっ倒れた後すぐに動けたのは鍛えてるからであって、特別体が丈夫な訳でも無い彼女には辛い事だろう。




「でも・・・」




「大丈夫。一人が嫌ならルーシャが寝るまで側にいる」




「!ほんと?」




 今、側にいるって言葉に反応したな。家族同然の存在から引き離されて一人は寂しいのかな。まだ子供だから、人が恋しい年頃だろうに。孤児院ではみんなで寝ていたらしいし。いきなり一人は心細いのかもしれない。




「ほんと。だから安心して。ゆっくり寝て」




「うん。ありがとう」




 なんとなく、彼女をお姫様抱っこしてベッドまで運ぶ。




「にゃっ!?アシュ!?」




「静かにしてて。人が来ちゃう」




 声を出すのは予想してたが、ここまで大きいとは。




「あっ」




 慌てて口元を押さえる。やっぱり可愛い。




「よっと」




 ゆっくりとベッドに下ろす。毛布を掛けてやり、横の床に座る。




 ルーシャは毛布から目だけを出してこちらを見つめてくる。その様子があまりにも可愛いくて、小さく笑ってしまう。頭を撫でてやると気持ちよさそうに目を細めている。天使。




「おやすみ、ルーシャ」




「ん、おやすみなさい」




 ゆっくりと目を閉じ、少しすると寝息が聞こえてくる。




 指で髪を掬うと、ベッドに落ちていく。艶のあるサラサラの髪。少し冷たく、心地いい。








 おそらく、というか確実に、ルーシャは私が女なのに気づいていない。結婚は男女がするものだというのは子供でも知っているだろう。それに、ルーシャは私の事を王子様と言った。女だと気づいていたら言わないだろう。




 もし、ルーシャに女だと知られたら拒絶されるだろうか。気を使って何も言わないかもしれない。




 彼女にそんな思いをさせたくない。








 安らかな寝顔に安心する。その顔は幼く無防備だ。警戒した様子はない。




 無性に愛おしく思える。ああ、やっぱり、私はルーシャに恋をしたのだ。前世から一度も感じたことのない感情。いくら幼くとも結婚の意味は知っているだろう。もしも忘れていたとしても、関係ない。どちらにしても、私に惚れてもらう。大人としてはこんなことはしないで応援するべき。それはわかっている。




私がやろうとしていることは彼女の未来を潰すことだ。本来のストーリーならば、攻略対象と障害を乗り越えて恋愛を楽しむ。




でも、体の年齢に引っ張られているのかそもそもこういう性格なのか、ルーシャが他の誰かと恋をするのは耐えられそうにない。だから、ルーシャには悪いが、私に惚れてもらう。








 まずは当初の予定どうり学園に入学して、ルーシャが入学してくるのを待つ。ルーシャが来るまでの二年間に攻略対象として他に劣らない存在になる。そこに関しては特段問題は無い。




性別は見た目だけならいくらでも変えて誤魔化せる。それに、今のまま魔物を狩り続ければ、最高ランクまでは問題なく上がれるだろう。幸い、攻略対象の中に冒険者は居ない。キャラが被ることはないだろう。




ただ、この世界、平民は読み書きなどの最低限の教養しかない。それは私も例外では無い。そして、攻略対象は何か一つに特化している奴が多い。




 ならば私が目指すのはどの分野でも高いレベルの攻略対象。それだけだと王太子とその従者。この二人と被る。ただその二人には特筆すべき能力は無い。バランスが良いステータス、将来も安泰の地位が約束されている事だけ。




それなら勝てる。私には冒険者という武器がある。




 それに、剣などの武術は技術、経験と共に自信がある。なので、気にする必要はない。




 問題は知識などの勉強面である。








 最低限というのは本当に最低限であり、かろうじて読み書きができる。その程度。一応、ルーシャに会うために多少の勉強はしていたが、今とは状況が違う。前はルーシャに会うためで、今は攻略対象を目指している。要求されるレベルが桁違いである。学園で浮かない程度の平均から、学園での上位だ。いや、印象付けるためならトップを狙う。








 となると武術、剣と魔法。勉強どれも首位を独占する。できるなら入学してからずっと。その方がルーシャにもすぐに伝わるだろう。




 正直、勉強も簡単だ。覚えるまでひたすら繰り返せばいい。




 前世でもそうやって赤点回避してきた。幸い、若いとは素晴らしいもので、基本、一回で覚えられる。




 思考を中断し、紙とペンを取り出す。冒険者や貴族。商人などの弱みを偶然掴む事もあるため、常に持ち歩いている。握っておいて損は無いからな。




まあ、こういう使い方は想定していなかったが。さて、何と書こうか。












 ルーシャへ








 必ず迎えに行くから、待っていて。












                       アシュ








 我ながら短すぎる。でもこれで、夢だったと思われることはないだろう。ただ、これだけだと忘れられるかもしれない。何か持っていたかな。




ポケットの中を漁ってみるが、渡せそうな物は何もない。




さすがにナイフとか魔物用の毒とか回復用のポーションは渡せない。前者二つは危険すぎるし。あと持っているのは・・・これぐらい。




他になんも無いししょうがないか。諦めてペンダントを外す。首飾りにはスターチスとハーデンベルギアの絵が描かれている。ペンダントをルーシャの手に握らせ、手紙の文章の間に追加で書き込む。








 ルーシャへ








 必ず迎えに行くから、待っていて。




 夢じゃないから忘れちゃだめだよ。浮気しないように。




 ペンダント、預けておくから。無くさないでね。私が




 君を見つける時の目印にするからいつも持っていて。




 いい子で待っていてね。私のお姫様。








                       アシュ








 すやすやと眠る彼女に目を向ける。




 絶対に逃がさない。私のものになって、ルーシャ。私の推し。私の愛しい人。君を手に入れる為なら何でもする。他の奴と恋をしようが関係ない。




 まったく、我が推しも面倒な奴に好かれたものだ。少しだけ同情する。








 そろそろ行くか。どうせならこのまま連れ去ってしまいたい。だが、私は彼女を確実に守れると言える程強くない。次に会うまでの時間は己を磨き上げるための準備期間だ。そう思うことにする。いつか、彼女の隣に立てるまで。努力して、彼女に相応しい存在になる。そう、決めた。




 彼女の額にキスをして、屋敷を後にする。




 宿までの帰路でこれからやることをまとめる。








 ・冒険者ランクを最高まで上げる




 ・学園などに伝手のある貴族に近づき紹介状を用意




 ・男装技術を磨く(メイクや服、声、口調など)




 ・勉強(座学)




 ・魔法




 ・剣




 ・体術




 ・功績を上げる








 こんな感じか。




 最高ランクはあると都合がいい。貴族の指示に多少逆らえる。彼女より貴族を優先しろとか言われて逆らったとしても文句は言われない。最高ランクは一人で国を滅ぼせる力を持った人もいるし。下手に機嫌を損ねたくはないだろ。








 学園に入学する時にコネがあると入りやすくなる。




 




男装技術は必要。見た目は男で口調が女だと単純に気持ち悪い。それにちょっとした違和感から女だとばれるかもしれない。今の内から慣れておくとぼろが出にくくなるはずだ。まあ、元々男寄りの喋り方たが。








 首位を独占するとなると、幼い頃から勉強している貴族のガキどもに勝たないといけない。できれば入学前に三年分の勉強を終わらせておきたい。その方が余裕が持てる。がり勉キャラもいるし。平民だからとなめられることもなくなるだろ。後から入学してくるルーシャへの当たりも弱くなるかもしれない。やって損は無い。








 魔法に関しては魔法馬鹿の攻略対象よりも詳しいのが理想。




 剣も魔法と同じ。騎士なんかが使うような基礎的な型と実戦でのアドリブ。どちらもできるといい。




 体術は基本使わないだろうが、武器を所持していない時に襲われたり、相手を殺さないで勝てるように必要。








 功績は、貴族に恩を売るため。社交の場で交渉なんかを有利に進められる。欲を言えば王に恩を売っときたい。褒美に学園に入れてもらう。とかできるし。それいいな。




仮に王の意見だけだと弱いとかだと恩を売っといた他の貴族に後押ししてもらえる。位の高い貴族と物の流通を担っている商人が狙い目。恩は王に、というより国に売る。




 これができればルーシャを手に入れる邪魔者は居なくなる。さすがに勉強ができて、剣も強い最高ランクの冒険者に勝てると思う奴は居ない。攻略対象共のプライドをへし折ってやる。
















 最高ランクの冒険者となり、貴族や王、国に恩を売り、男の外見となり、座学、魔法、剣、すべての分野で入学から首位を独占。国の危機を救う。その無謀すぎることをアシュレイはやり遂げた。




 名実共に、最強の冒険者となった。












 すべては推しの為に。愛しい人を手に入れる為に。というのは、誰も知らない。







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