第七話 嫌味【いじめ】
いつも読んでいただきありがとうございます!
週に一度、姉貴はPTSDによるフラッシュバックで寝込む。
そして今日はその日だった。
「う~……」
俺の家の布団の中で、唸っている。一応熱が出ているので熱さましを飲ませておいた。
「おかゆ作るけど、リクエストある?」
「鮭入れて……」
いつものような覇気や元気はなく、か弱い女の子という言葉が似合う。
俺はそっと部屋を出て、考える。
こうなったのは彼女の不登校の理由に直結してくる。
今が2025年7月だから、今から約一年前か。
その時から、姉貴を取り巻く社会はおかしくなった。
・・・
一年前2024年7月。夏休み前でみんなの気持ちが浮かれていた時だった。
姉貴は告白された。
その人こそ、慶人さんだった。当時サッカー部の主将。みんなの人気者だ。もちろん、女子から向けられる好意も絶大だった。
だからだろう。姉貴は嫉妬の渦に飲み込まれた。
姉貴は学校では陰キャな方だった。活発に動くことはなく、ただ、頭がいいだけの(実は運動もできるのだが)教室の窓の外を眺めているような人だった。
また、姉貴は部活に加入しておらず、とことんマイペースだ。姉貴曰く、「空気何て読むのめんどくさい。だったら、自分が空気になればいい」とのこと。要するに全然目立たない女子だった。
眼鏡をしているので、本当は絶大な破壊力を持つ顔も周りは知らない。
以上の理由から、姉貴はいじめられた。
当時中二の、サッカー部マネージャー(女子)が主犯となり、その他慶人さんに好意を寄せていた、学年をまたいだ複数名の女子から嫌がらせを受けた。
その証拠に、姉貴は入学してから、教科書を13回、上履きを12回、筆記用具(必要な買い替えは除く)を128回、買い替えている。すべて、ごみ箱からぼろぼろの状態で見つかったそうだ。
姉貴は、「貯めていたお年玉が無かったら危なかった」と言っていた。
ここまではよかった。いや、よくはないが、姉貴も対処可能だった。
しかし、事件は起きた。
姉貴が俺の家に助けを求めたあの日の、放課後、運悪く掃除を押し付けられた姉貴は、教室で一人掃除をしていた。その時、スマホに一軒の着信があった。数少ない友人からだったそうだ。
『あんた!今すぐインスタ見て!』
インターネットの情報伝達速度は、姉貴の想像を絶していた。友人からののDMに添付されていたのは、以下のような投稿だった。
姉貴と慶人さんが話しているところを隠し撮りした写真に対して、
『中学生なのにやりまくってる変態女の誘惑現場発見!人の彼氏に手出してる!』
リプライ
『超最低』
『あばずれで草』
『尻軽』
『社会のゴミ』
………………この後も3万件を超えるリプライが飛んでいた。
その後、慶人さんが学校に通報。学校側は投稿の即時消去を当該生徒に指示。親を巻き込んだ大事になったらしい。ちなみに、主犯は慶人さんから縁を切られた挙句、クラス内でも孤立。先生からの信用もなくして、どん底まで落ちたらしい。
この件を受けて、慶人さんは受験もあるしと部活を引退。慶人さんで成り立っていたサッカー部も大きな打撃を被ったらしい。
「うわーん…………!!うっ、うっ、うう、、、ああ、、うううん…………!!!!!」
寝室から姉貴の鳴き声が聞こえてくる。週に一度俺はこの日が来るたびにはらわたが煮えくり返る。
今すぐにでも、現在中三のそのゴミどもを排除しに行きたい。が、姉貴は多分、自分でするだろうから、俺は野暮な真似はしない。一年前にそう決めた。ただ俺は、慶人さんがいない間、ひたすら姉貴をいたわり続ける。それが俺の役目なのだ。
・・・
姉貴が泣き止んだので、とりあえず、おかゆを出した。
「鮭入ってるよ。食べれる?」
「うん……ありがとう……」
俺は姉貴にそっと取り皿とスプーンを手渡す。
「熱いから気を付けて」
「分かってる」
言葉に絶妙に棘がある。うん。いつもの姉貴だ。正確にはいつもの姉貴よりも少し弱った程度。回復はしたようだ。
その証拠に、さっきから、俺が作った鮭おかゆを貪るように食べている。
「そ、そんなにうまいか?」
俺が聞くと、
「ほななふいてふの。いっはいなひたひふかれた。……モグモグ……」
「飲み込んでから喋れよ」
「…………んん(ゴクン)、、はぁ、ほんとにお腹すいてるだけだから。おいしいのはおいしいけど」
さっきまでの俺の心配を返してくれ。
土曜日の昼、俺の嘆きは虚空に消えていった。
その後、姉貴は全回復して、慶人さんとイチャイチャしていた。
ほんとに俺の心配と怒りを返して!?
続く
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