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第五話 通学

いつも読んでいただきありがとうございます!

 「行ってきま~す」


午前7時ちょうど、俺は家を出る。


電車を乗り継ぐこと20分、割と大きな駅に着く。ここから俺は地下鉄に乗り換えて、学校へ向かう。


が、今日は少し違った。


「おはよ」


藤村 詩織。俺の小4からの友人だ。昨日この駅で偶然会ってから、地下鉄まで一緒に登校することになった。


「ほんとにいた……」


昨日、「これから毎日この時間に来る」と言っていたが、俺は半ば冗談だと思っていたため、少し驚いた。


「行こ」


相変わらず、藤村は口数が少ない。しかし、もう慣れてしまった。


「今日、私、小テストある」


基本単語で話す彼女だが、最近はこうして短文で話すことが多くなった。

中学生になってから会っていなかったが、語彙力が上がったのだろうか?


「そっか。範囲は?」


「英単語。100個」


「そりゃ大変だ……」


「真優は、ないの?」


「今日はないな」


「うらやましい……」と、藤村はこちらを睨んで来た。

しかしまぁ、身長差的に兄妹に見えるので、通行人がこちらを気にすることはないのだが、何というか、ほんの少し恥ずかしい。

こいつの上目づかい気味のふくれっ面には、かなりの破壊力があるのだ。


「定期試験、どうだった?」


藤村の話題転換は極めてアグレッシブだ。

だが、3年も一緒に居れば、もう混乱することはない。


「まぁまぁだな。中の下ぐらいだ」


「私は4位」


「昔から頭良かったもんな」


「どや」


隣でどや顔を披露してくれている藤村はさておいて、そろそろ地下鉄の改札が見えて来た。


ピッ


という聞きなれた音を鳴らしながら、俺たちは改札を通過していく。


「感想は?」


藤村が、ほめてほしい!という欲を前面に出した顔をしている。俺に褒められてうれしくなるのだろうか? と疑問を抱きながらも、慎重に言葉を選ぶ……訳もなく、


「シンプルにすごい。以上だ」


「…………そっか」


不服そうな顔だ。まぁ気にしない気にしない。


「…………」

「…………」


気まずくなった。言葉選びを間違えると、藤村は途端に黙り込む。昔からの癖みたいなものだ。


「すまん。訂正する。学年4位はマジですごい。頑張ったんだな」


俺が正直な感想を話すと、藤村はこちらを向いた。

次の瞬間、電車が通過して、藤村の髪が後ろに流れる。


輝いた表情がそこにはあった。


「えへへ……♡」


ショートヘアの黒髪が、いい塩梅で耳にかかり、無邪気さとちょっと大人な色気を放っている。

こいつはモテるんだろうな~と、俺は思った。


「お前モテるだろ?」


「うち女子校」


いつもの藤村に戻った。

少し暗めな雰囲気に戻っている。


「どうして女子校に?」


「そこしか行けなかった」


この話題には踏み入ってはいけなそうだ。

俺たちは電車が来るまでまた沈黙するのだった。


・・・


数分後電車が来て、俺たちは乗り込んだ。途中の駅で藤村は降りて、俺一人になった。


藤村が


「また明日」


と言っていたことから、明日も俺に時間を合わせてくれるのか。と、少し申し訳なくなった。


その時電車が揺れ、白い物体が俺の足元に転がった来た。とっさに拾い上げると、それはブルーテゥース接続式のワイヤレスイヤホンの片割れだった。


「すみません」


女性の声だ。

まったく、気を付けてほしいものだ。踏んづけてしまったら、俺が訴えられかねないところだった。さてと、俺も次の駅で降りるし、このイヤホン持ち主に返してさっさとおいとま……。


「真優じゃん……!?」


こうして俺は、知り合い、根川 咲と、ラブコメみたいな出会いを果たすのだった。

おいおい。最近の俺、主人公補正でもついてるのか?


天の声:ついてます


続く

次回

第六話 根川 咲【負けヒロイン】


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