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事情聴取のティータイム

 ティータイムはそのまま事情聴取の時間と変わることになった。


「アイシーさん、ここ数年の国中に広がってる寒波ってもしかして」


「・・・」


「アイシーさん、ここ数年の寒波による国の作物の不作ってもしかして」


「・・・」


「アイシーさん、ここ数年の父の治める領地のあたりに魔物が出現する理由ってもしかして」


「・・・」


「魔物って魔力に吸い寄せられるって聞いたことあるんですが。一応言っておきますけどしらばっくれないでくださいよ」


「はい、ほぼ間違いなく私です」


「ほぼじゃなくて犯人あなたじゃないですか」


「犯人なんて言わないでくださいよ! 私だって好きでやってるわけじゃないんです。体質なんですから」


 そう最早体質である。圧倒的戦闘能力、圧倒的高性能、圧倒的高魔力。しかし問題が出る。


 メリットとデメリットは表裏一体なのである。


「まぁ、体質なら仕方ないです。俺だって病気の時のハイテンションで無理矢理アイシーさんのこと連れて来ちゃったようなもんですし。僕にも責任があります。それより対策を練った方がいいです。このままじゃ国が食糧難で国民の不満が溜まって革命が起こっちゃいます」


「そんなまさか? たかか私1人召喚されただけで革命なんて起こるわけないじゃないですか。 私が原因で革命なんて起こったら、国中の人が私の命狙ってくるじゃないですか。あり得ないでしょう。エイチさんも冗談がうまい」


「自覚ないんですか? この辺り、元々は国の食糧生産地だったんですけど、今となっては不作が続き、魔物も寄って来て、魔物討伐の専門家達の集まる一大狩猟地になってますよ。ここ最近は数こそ少ないですが、こっちの地方にドランゴンとかも寄ってきている報告も来てます」


「なっ。ここ数年、メイド業に専念して冒険者業はあまりやってなかったので、あまり周辺の領地や国の情報は集めていなかったんですが。本当にそこまで影響出てるんですか?」


「出てます。魔獣引き寄せ体質の影響で思いっきり生態系変化してます。生態系の変化に加えて気候まで変化してます。一応、これを付けておいてください」


 そう言い、とある品物を渡す。


「魔力属性による体外への影響を大幅に抑える魔道具です。天から降臨した冷蔵庫に効果があるかはわかりませんがとりあえず気休めにはなるかもしれません。あと、暑い日は冷蔵庫として食料の貯蔵を手伝ってください」


「呼ばないで! 冷蔵庫なんて呼ばないで! ちゃんと氷司る天使ってよんでください。 でも、ありがとうございます。そんな高価なものどこで手に入れたんですか?」


「僕がなりたての中級冒険者として討伐した魔獣の討伐報酬を貯めて買った品物です。モンスターが増えたおかげで討伐を仕事としてこなす人達が増えて、その人達が装備品やらを買うために武器屋や魔道具店やらが増えに増えたのでたまたまそのお店の中から見つけました」


 そう、僕は中級冒険者だ。

 ただしなりたてほやほやの新米に毛が生えたぐらいの冒険者。

 どこかのパーティに時々参加させてもらって討伐報酬をもらっている後衛の魔術師だ。


 表向きはそうなっている。


 ちなみに彼女は上位ランクの冒険者兼メイド。

 この魔道具がかなりの金額のものだと彼女も知っているはずだ。


 だが隠していることがある。


 本当は生まれた後、密かに読み耽っていた魔導書の知識を試すために夜な夜な誰にも見つからないように家を抜け出し、魔導書の知識を試すかのようにたった1人で討伐に出かけて魔獣狩りして手に入れた素材を売却したのだ。


 俺の実際の実力はというと国でも上位に入るのではないだろうか。


 表向きは魔術師、戦い方は魔術を駆使して後衛として前衛をフォローしバフやデバフにヒールで援護する。


 裏では魔剣士、戦い方は剣と魔術の両方を使い自分自身にヒールやバフをかけ身体強化しまくって戦う戦闘スタイルだ。


 魔剣士状態で討伐報酬を受け取る時は偽名で、魔術師として討伐した時は本名で受け取っている。


 でも、そんな事が知られたらそれなりに大きな波紋を呼ぶだろう。


 1人で討伐に出かける魔術師なんてものは世の中にはなかなかいない。


 表向きは社会勉強中の貴族の跡取りとして、裏ではガチの魔剣士冒険者として稼いでる。


 この魔道具も魔剣士として偽名を使って稼いだ金で買った。それもかなりの金額を出して購入した。


 中級冒険者の討伐報酬じゃ買えないくらいの代物であることは間違いない。


 というのも俺の剣術、魔術は同年代の間でも真ん中程度、良くて中の上くらいだろう。


 一個人で魔獣狩りなんてできる実力ではない。それは俺の関係者は全員知っている。


 でも実際には魔術に関しては別次元にいる自覚がある。


 そしてそれを知っているのはごく一部だ。


 知ってるのは父と母、この街の冒険者組合の支店長さんくらいだ。


 俺の実際の実力は彼女には教えてはいない。


 まあ、ここ数年の寒波の原因でありこの辺り一帯の領地を巨大魔獣生息域に変えた冷蔵庫と呼ぶべき女性は、実力的には軽く俺の上を行くのは間違いない。


 彼女がどれくらいの実力なのかそれはよく知っているし、見聞きしている。


 なぜ俺が彼女の実力を知っているのか。


 その理由は簡単だ。


 俺の尻ぬぐいの冒険が始まったあの日のことだ。


 俺の生まれたあの日から話を始めよう。




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