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侯爵領敵討ち作戦

 俺はパーティメンバーに声をかけ侯爵様と話した内容を伝えたところ。


「侯爵領壊滅の敵討ということですか。私は賛成です」


 メアリーさんはもちろん賛成してくれると思っていた。


 何せ民間人の人命に損害はなかったとは言え実家の領地がこれほどの壊滅的被害が出たんだ。むしろ今からでもフェンリルを1人で追いかけそうな勢いだ。


「ロクサーナさんはどうしますか?」


「私も冒険者の端くれです。これだけの被害を受けた民間人を見捨てる気はありません。それにこの被害は私達がフェンリルを見過ごしてしまったミスによるものです。私も討伐に参加します」


 ロクサーナさんは気合い十分なようだ。


「アイシー、お前はどうする?」


「そんなの決まってるじゃない! 私を檻ごと飲み込んでゲロまみれにしたやつよ! 放っておくわけないじゃない! 氷漬けよ氷漬け!! 本気で凍らせてバラバラになるまでアイスハンマーで全力でぶっ叩いてやるわ!!」


 全員気合い十分だ!


 侯爵様から騎士団には話をするらしいが、騎士団側がなんと言うかは正直未知数だ。


「一応、侯爵様から騎士団に話をしてもらうようになってるけど、騎士団が討伐に参加してくれるかは未知数ってことは伝えておく。それと侯爵領の領民の皆さんがどう言うかも未知数だ。もし侯爵様と騎士団それに領民の皆さんが討伐に反対ならこの作戦は実行しないことになる」


 俺の発言に反応したのはメアリーさんだ。


「もちろんわかっています。私も侯爵家の者としてなんとしても騎士団と領民の理解を経てきます。今から父のところに向かい領民と騎士団を説得する手助けをしてきます」


 メアリーさんがそう言い残して立ち去ろうとすると、そこに騎士団長が現れた。


「メアリー様! その心配は不要です! 騎士団員全員、討伐に賛成です。 領民の皆さんも地下シェルターに逃げ込んでいたので人命に被害はなかったのですが、家や街を破壊され尽くしているので敵討ちとまではいきませんが、やり返してくれという気持ちのようです」


「領民と騎士団とパーティメンバーに領主である侯爵様の了承を得た。ということで間違いないですね?」


 俺がそう聞くと騎士団長は強く答えた。


「ええ! その通りです!!」


 俺は言う。


「では作戦会議です!」


 全員の声が揃う。


「「「「はいっ!」」」」


 全員やる気満々だ。


 おや? 領民達が駆け寄ってきた。それに騎士団員も寄ってきた。


「俺たちの敵を取ってくれ!」


「私の家、フェンリルに壊されて跡形も残ってないのっ! 討伐してちょうだい!」


 どうやら、侯爵様の話を聞いて領民と騎士団の方々が集まってきたようだ。


 人だかりができてしまっている。


「みんなー! やってやるぞーっ!」と言いたい。


 やってやるぞー! と心の底から雄たけびを上げてパーティメンバーや騎士団の人達の士気を上げるようなことを言いたい。が俺は言えなかった。


 俺はアイシーを見た。


 この領地が壊滅した元凶の冷凍庫は意気揚々と言っている。


「もちろん討伐するわ! 任せておいてちょうだい!」


 アイシー・ゲフリーレン、彼女はまさに自信満々、意気揚々。そして自らの体質の尻拭いである。


「でも、本当にあんな怪物倒せるのでしょうか?」


 民衆の中から疑問の声が上がった。


「たしかに、あんな怪物、伯爵家ご子息の破壊魔術だけで対処するのは難しいのでは・・・」


 民衆は皆、不安にかられ始めた。


「心配不要です。大火力持ちは一人じゃありません。これを見てください!」


 そう言った彼女は伯爵領出発時と同じ氷の巨大な塊を人のいない遠く離れた場所に作り出し、そして地面にぶつける。


 轟音がここまで届く。


「おおっ! 大火力持ちが二人も! これなら倒せるぞ!」


 アイシー。アイシー・ゲフリーレン。Gefreeren。たしかドイツ語、もっと言うとルクセンブルク語だったか。


 Gefreeren。氷結、凍った。という意味の名に相応しい魔術を見せた彼女はドヤ顔で言う。


「少なくとも私は本気で倒す気でいます」


 民衆から歓声が上がった。


 そして、討伐作戦実行日。


「なんでまた私が囮の餌にならないといけないんですかーーーー!!!」


 壊滅した侯爵領繁華街跡地に置かれた檻の中からアイシーの叫び声が聞こえた。


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