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侯爵領壊滅

 侯爵領壊滅という多大なる犠牲を払ったのだが、ことの経緯はこうである。


 前線にて戦う騎士団達の援護射撃に集中していた俺はフェンリルがアイシーの背後から近づいて来ていたことに全く気がついていなかった。


 もっと言うと騎士団も総出で前線に出ていた。


 アイシーも前方から来る中級下級の魔獣の討伐を檻の中からドヤ顔で行っていたのだが、フェンリルは俺達の背後に周り。


 檻ごとアイシーを一飲みにして走り去っていった。


 俺は騎士団長にもう一発、破壊魔術を使い魔獣を一掃すると伝えて、騎士団は安全な場所に隠れ、中級下級魔獣ごとあたり一体を消し炭にした。


 その後、騎士団と俺達パーティメンバーは二つに分かれて騎士団は数少ない中級下級の生き残りとドラゴンの死骸の回収。


 パーティメンバーはアイシーを丸呑みにしたフェンリルは侯爵領に走り去り。


 俺達はそれを追う形になった。


 そして到着した時には既に遅かった。


 領民は避難していたから人命に損害はないが、フェンリルとの戦いで破壊魔術を使いまくった。


 そしてその結果。


「我が領地が滅んだ・・・」


 侯爵様の顔色は真っ白である。


 結局、フェンリルは討伐できず。


 破壊魔術をフェンリルの腹に数発入れてアイシーを吐き出させることに成功。


 そしてアイシーはというと。


「すげぇ、アイシーからゲロの匂いがする」


 素直な感想を口から出してしまった。


 ぐすん。


「ありがとね! ありがとうね!」


 檻ごと胃液で消化されそうになっていたアイシーはフェンリルの体内で氷系の魔術を使いまくったそうだが、どうやらフェンリルは体内に取り込んだ者から魔力を吸収するらしい。


 次から次へと氷魔術を使いまくった挙句、魔力切れを起こしてなす術なしの状況の中、俺の破壊魔術がフェンリルの腹を直撃してアイシーを吐き出し、そのままどこかへと逃げ去った。


 無事にゲロまみれのアイシーと廃墟と化した侯爵領が目の前にある。


 これがこの数日間の戦いの結果である。


 十数発も撃ち込んでもまだ走り去る体力があるところを見るとフェンリルは侮れない。


 あれがもし伯爵領に来たのなら、滅ぶことになるのは間違いない。


 だからこそここで仕留めなければならない。


 侯爵様に話をしなければ。


「アイシー、とりあえず水浴びでもして汚れを落として服を着替えておいてくれ、俺は侯爵様と話をしてくる」


 そう言い残して俺は侯爵様のもとに向かう。


「侯爵様、よろしいでしょうか?」


「なんだ?」


「フェンリルに関してなんですが、もし奴がまた現れたのなら、現れる場所が伯爵領や王都だとしたら、間違いなくこの国は滅びます」


「あれだけの怪物だ。当然と言えば当然だ。それよりよく追い払ってくれた。礼を言わせてくれ」


 気力を失っているのか言葉に力がこもっていない。


「この状態、この状況でこう言うことを言うのはなんだと思いますが言わせていただいてよろしいでしょうか?」


「なんだ」


「この廃墟と化した侯爵領でもう一度フェンリルと戦わせて貰えませんか?」


「倒せるとでも?」


「さっきも申し上げた通り、このままでは他の領地、王都も危険に晒されるのは目に見えています。それであればもう一度この場所にフェンリルを呼び寄せる手段を考えて全力で破壊魔術を叩き込みます」


「君のあの固有魔術か、あれを使っても追い払うことしかできなかったではないか」


「領民の避難のことも考えて本気の一撃は撃っていません」


「あれより破壊力を大きくできると言うのか? それなら倒せるかもしれん」


「その通りです」


「個人的には賛成だ。だがこの場所で戦うとなると領民達や騎士団の意見も効かないといけないな。時間をくれ」


 領地が廃墟にされて怒っているようだ。俺の意見には賛成とみていいだろう。


「もちろんです」


 話を終え、俺は侯爵様のところから離れ、街を見渡す。


 瓦礫の山しか残っていない。


 領民達の避難場所は地下だ。


 元々魔獣の生息域だったこの地は、もし魔獣に襲われたとしても領民を非難させる手段として地下にかなり頑丈なシェルターを作っている。


 それも大量に。


 地上で大爆発が起こったとしても地下なら被害はない。


 さて、あとは領民の人達とアイシー達にフェンリル討伐をもう一度この場所でやると伝えるだけだ。


「ちょっと集まってくれないか」


 俺はパーティメンバーに声をかけ侯爵様と話した内容を伝えた。


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