討伐実行2
さて、大喜びで斬りまくるメアリーはアクロバットな動きで魔獣の攻撃を躱し、間髪入れずに斬りまくる。
斬りたくて斬りたくて仕方がないとばかりに剣を振る。
「この討伐、フェンリルが出てこないのなら容易く討伐できそうです」
遠く離れた場所から俺の聴覚強化された耳がメアリーさんの声を拾った。
フェンリル出現フラグっぽい発言はやめてほしいのだがここは異世界とはいえ漫画の中じゃない。
そんな都合のいいことが起こるわけがないから安心だ。
「フェンリルも見当たらないですし、僕はもう殆ど用済みですかね。僕はいったんこの場から前線で戦う騎士団員とメアリーさんの援護射撃します」
「よろしくお願いします」
騎士団員も是非お願いしますという顔だ。
「ファイアボール」
俺はなんてことのないただの汎用魔術ファイアボールを前線で戦っている騎士団に向かってくる魔獣の群れに放った。
ただし、体内魔力爆縮のおかげで大出力で何もかもが焼き尽くされる。
前線で戦う騎士団から歓声が上がったのが聞こえた。
「それにしてもフェンリル出てきませんね?」
隣にいる周囲警戒任務中の騎士団員の声である。彼は今も周りに魔獣が新たに出てこないか索敵中である。
「ホント出てきませんね」
俺は彼の疑問に答えた。
俺と彼の二人はドラゴン4体を一撃で消し飛ばした場所を見る。
護衛の彼はさらに続けて言う。
「ドラゴン4体があっちから出てきたってことは、間違いなくドラゴン4体と同じ方向からフェンリルも出てくるはずです。私はそっちの方向を警戒しておきましょう。エイチ様は援護射撃をお願いします」
「そうしましょう。では援護射撃を続けます」
ちらりとアイシーを見たがドヤ顔で近寄って来た魔獣を檻の中から討伐している。
「アイススピアー。この程度の相手なんて戦っても面白くもないわ。フェンリルくらい出てきたらどうなのよ。まぁ、私が出る必要性もなくエイチさんの魔術でこんがり焼肉にでもなるんでしょうけど」
満足そうな顔で自分の実力を見せつけているあいつに援護射撃は必要なさそうだ。
満足な顔を通り越してもはやドヤ顔である。
さて俺は前線で戦う騎士団への援護射撃に集中しよう。
「フォーカス」
射撃精度、命中率を上げる魔術を使い遠距離からの本格支援体制に入る。
「アイススピア」
「エイチさんが! エイチさんが私の存在意義の氷魔法を使ってる! お願いやめて」
安心しろアイシーほど使いこなせないから。
何せ氷の城壁なんて一晩で作れやしない。
それにしてもあのドラゴンはしぶといな。
三体は一撃で戦闘不能になったか絶命してるが、一体はまだ生きてる。
「あのドラゴン、まだ生きてますけどもう一発破壊魔術を使いましょうか?」
「いや、必要ないでしょう。遠距離からの支援攻撃で十分です」
「それじゃあ集中して支援攻撃しますね。聴覚強化も前線に集中させます」
「お願いします」
俺は聴覚強化も前線で戦っている騎士団達の声を聞くために聴覚も前線に集中させる。
そうして前線に出ている騎士団達の援護射撃を行い。遠く離れた生き残りのドラゴン一体にも攻撃を入れ続けていた俺は気がつくことさえなかった。
そして数日後。
「すげぇ、アイシーからゲロの臭いがする」
俺は率直な感想を述べた。
見事に背後から現れたフェンリルに気が付かなかった俺は檻ごと喰われたアイシーを助け出すために侯爵領壊滅という多大なる犠牲を払ったのである。




