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討伐出発日

 数日後。


「というわけで、討伐作戦の詳細以上だ」


 侯爵家の訓練場に騎士団を集めて騎士団長が壇上に上がり騎士団員に討伐作戦の内容を説明し終わったところだ。


 そして最後に侯爵様が激励する。


「今回の作戦の要は大きく分けて5段階。一段階目は潜伏と隠ぺいと防御の魔術を使って騎士団が攻撃ポイントから少し離れた場所に隠れる。二段階目がドラゴンやフェンリルといった上級魔獣をおびき寄せるための罠だ。これに引っかかってくれなければ、その後の攻撃ができない。三段階目の要は大規模火力による攻撃、ここまでは伯爵家ご子息のエイチ殿とそのパーティメンバーがやってくれる。四段階目は騎士団による中級魔獣と下級魔獣の掃討だ。おそらくさだが四段階目の下級魔獣の中級魔獣は大規模火力の攻撃で逃げていく可能性が高いが油断はできない。四段階目はもし今の作戦で討伐不可能だったのならば次の五段階目だ。罠と囮の餌を仕掛けながら全力で撤退する。諸君らの討伐作戦に我が侯爵領の存亡がかかっている! 私からの話は以上だ! 全員生きて帰ってきてくれ!」


「はいっ!!!」


 侯爵様の激励に騎士団一同は大きな声で返事をした。


 さすがは元魔獣の一台討伐地。騎士団全員精鋭揃いだ。


 まあ、討伐する魔獣は伯爵領に引き寄せられて仕事がなくなっていたみたいだが。


 そんな状況の中、いきなりの大物魔獣の群れ。つまり大儲けのチャンスであり同時に存亡の危機が来て全員気合が入っているか死地に向かう恐怖心でいっぱいなのを無理やり声を出してごまかしているかどちらかだろう。


 移動用の馬車におとり用の餌と防具などの討伐に必要な道具や罠は全て昨日の内につみこんである。


 出発前の集会も終わり、後は出発するだけだ。


 偵察隊はもうすでに俺たちが侯爵領に到着するよりも前に魔獣の群れを補足するために出発している。


 あとは偵察隊からもたらされた情報をもとに俺たちが罠をしかけて、おびき寄せられたところに一撃を浴びせる。


「うまく罠にハマったところにエイチさんの魔術で一網打尽! これで奴ら魔獣は殲滅されるわねっ! 楽な仕事じゃないですか」


 とアイシーが言っている。


「そういやアイシー、お前のステータス俺見たことないんだけど。どんなステータスなんだ? 冒険者カード見せてくれよ。あれだけの氷を魔術で作れるんだからかなりのステータスだと思うんだけど」


 俺もずいぶん前に冒険者カードを造ったがかなりステータスは上がってる。


 それに、子供のころから冒険者をやっているから汎用魔術もかなりの数を習得できた。


「そりゃそうよっ! 私を誰だと思っているんですか? 私はアイシー。アイシー・ゲフリーレンですよ。魔力量も膨大です。殆どカンストしてます」


「そりゃすごい。見せてくれよ」


「いやです」


「なんでいやなんだ?」


「女性のステータスを見るだなんてエイチさんは破廉恥です」


「・・・・なぁ、お前何か隠してないか?」


「隠すわけないじゃないですか」


「それならいいんだが」


「・・・・透視っ! フォーカス! スティールっ!!!」


 俺は昔会得した冒険者の盗賊職スキルや敵戦力把握のための透視と狙いを定めるスキルフォーカス。さらに相手から物を盗むスティールの汎用魔術の三連コンボでアイシーの冒険者カードを奪い取る。


「エイチ殿、何やってるんですか。女性の冒険者カードを盗むなんて貴族の風上にも置けませんっ! 斬らせてもらいます」


 とメアリーさんに怒られる。


「ちちちょっとまった! なんですぐに切りたがる」


 まぁ怒られるのは当然といえば当然だ。冒険者カードは個人情報。ステータスに使用できる魔術まで記載されている。


 汎用魔術なら難しい魔術の専門書を読んで練習する必要もなく。誰かから使い方を教えてもらって冒険者カードでスキルポイントを消費して習得するし。どんな魔術が使えるのかも冒険者カードに記載されている。


 まさに個人情報の塊のようなものだ。


「何言ってるんですか。戦力把握のためです。僕はアイシーの実力は知っていますがステータスはしりません。それに僕の冒険者カードもお見せしますし」


 俺は適当な言い訳をして納得させる。


「そういうことであれば私もお見せしましょう。どうせ、今回のドラゴン討伐で死地に向かう仲間たちです」


 よかった。メアリーさんも話に乗ってきてくれた。


「まだ決死隊気分だったんですか?」


「当然でしょう。ドラゴン4体に中級下級魔獣の群れにフェンリルです。勝算があるとは思えません」


 マイナス思考な発言に割って入ったのはロクサーナさんだった。


「決死隊かどうかはおいておいて、冒険者カードを見せあってパーティメンバーの結束を高めるというのは賛成です。それじゃ私から行きますね」


 俺は感激の声を上げる。


「これはなかなかのステータスだぞ」


 魔力量は俺より多い。ただし通常状態の俺の魔力量よりだ。体内魔力爆縮を行った時の俺には遠く及ばないがなかなかだ。平均値より上。いや、もっと多い。


「ヒーラーとしてはそれなりに自信があるんです」


 確かにデバフ、バフ、ヒールに関しては見たことないくらい優秀なステータスとスキルだ。


 だが、命中率のステータスが異常に低い。


 というか皆無といってもいい。


 そりゃ、敵に向かってバフが飛んでいくわけだ。


 それに幸運の値もあまり高くない。平均値以下といったところだ。


 敵にバフをかけるヒーラー。よく考えたら使い道あるのかこの人。


「それでメアリーさんはどんなステータスなんですか?」


「お見せするのは恥ずかしいのですが、仕方ありません。どうぞ」


「拝見します」


 ・・・・・こ、これは


 幸運の値が異常に高い。回避のステータスも尋常じゃないほどに高い。


 物理攻撃と斬撃、さらにスタミナのステータスも半端じゃない。


 そして防御力のステータスが異様に低い。


 ・・・・(。´・ω・)ん?


「あの、メアリーさん。このスキル見たことないんですがどんなスキルなんですか?」


「ああ、加虐ですか? 敵に攻撃を加えれば加えるほどに私の攻撃力や回避のステータスが上がっていくという特殊スキルです。その特殊スキルのおかげで私は趣味の魔獣狩りに専念しているのです」


 あ、なるほど。そっちの方ですか。


「じゃあ俺のステータスを見せますよ」


 と俺は冒険者カードを取り出してメンバーに見せる。


「これは以外です」


 メアリーさんの感想だ。


 ロクサーナさんはというと。


「確かにあの大破壊魔術魔術を使用している方のステーションとは思えません」


 まぁ、そう思うよね普通。


「私にも見せてー」


 とアイシーが顔をつくっ込んでくる。


「え?! 知力が高いのは魔術書とか毎日読み漁ってるからなんとなく気が付いてましたけど。魔力量が平均より上だけど、よくその程度の魔力量であんな大破壊魔術が使えるわね? どんな卑怯な手口を使ってるんですか?」


「卑怯とは失礼だな。子供の頃から純粋に知識を手に入れて技術研鑽したに決まってるだろう。第一あの破壊魔術は固有魔術なんだ。ロクサーナさんに教えてること自体普通はあり得ないんだからな」


「え? なんとなくそんな気がしていましたが、やっぱり固有魔術だったんですか? すみません。固有魔術の教えを乞うだなんて魔術師の風上にも置けないことをしてしまいました。申し訳ありません」


 ロクサーナさんは落ち込んでる。


 無理もない。


 この世界の魔術は主に二つある。


 一つが汎用魔術あるいはスキルとも言われ、もう一つが固有魔術。


 汎用魔術は他の冒険者職や盗賊職、プリーストやナイト、と言った他の人が会得している汎用魔術を見せてもらい教えて貰えば、冒険者カードから習得できる。スキルの習得というと大抵の場合はこっちのことを指す。


 そしてもう一つ、それが固有魔術だ。


 固有魔術は自分で専門書や魔術書、あらゆる知識を駆使して作る。製作者オリジナルの魔術と言っていい。


 汎用魔術は使い勝手がよく、スキルポイントとそれを習得できる職業についていれば会得可能だ。

 だが弱点は汎用ゆえに世間の冒険者達に知れ渡っているということ、つまり対人戦、国家間の戦争では敵に対策される。だが魔獣討伐ではよく使う。


 固有魔術はその人の作り出したオリジナルの魔術。ゆえに対人戦において相手に固有魔術を使われたら対処法がわからない。


 ちなみに俺は野盗、盗賊を相手に固有魔術を多用している。


「悪く思わなくていいですよ。教えてもいいっていたのは僕ですし、その代わり何か代償を頂けるとありがたいのですが」


 あはは、と冗談めかして代償を要求してみたが。


「もちろんです。何せ固有魔術を教えていただいてるわけですから。それなりの対価は払うべきです」


 なんか対価貰えることになった。


 ラッキー。


「で、肝心のアイシーのステータスはと」


「そんなの決まってるじゃないですか! とっくの昔にカンストしてます」


 カンストと言ったな。相当なステータスなのは間違いない。


「どれどれ」


 俺、ロクサーナさん、メアリーさんがアイシーの冒険者カードを覗き込む。


 ロクサーナさんが感激の声を上げる。


「これはすごい! 今までこんなステータス見たことありません。 ほぼ全てのステータスが世界最高レベルです! 特に魔力量は突出してます! ただ幸運のステータスは平均より少し下ですね」

 

「どうですすごいでしょ。ちょっとは私のこと褒めてもいいんですよ」


「ちょっと気になるんだが。このステータスなに?」


 俺は見たことないステータスを指さして質問した俺にメアリーさんが答えてくれる。


「珍しいですね。悪運のステータスです。持ってること自体が珍しいレアなステータスです」


 それも悪運のステータスが魔力量並みに高い。


 そりゃ魔獣が寄ってくるわ。


「なあ、一つ聞きたいんだが。俺の破壊魔術、あの魔術をアイシーが直撃したとして耐えることってできるか?」


「直撃は流石に無理よ」


「じゃあ、伯爵領に造った氷の城壁の小型版をアイシーの周りに結界的な感じで張り巡らされたら耐えられるか?」


「その状態なら数十発くらいあの破壊魔術を受けても耐える自信があるわ!」


 ・・・・・よし、こいつをおとりの餌にしよう。


「出発前にちょっといいでしょうか。この街に魔獣のを閉じ込めておくための檻ってあります?」


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