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・・・わが領地が滅ぶ

 なんだか向こうが騒がしい。


 がやがやしている。


 なんか声が聞こえて来た。


「申し訳ありません! 遠路はるばる討伐に来てくださったとは知らずに失礼なことをしてしまいました」


 慌てた様子で俺の閉じ込められている牢屋に駆け寄ってきた男性。


 よっしゃーついに来たぞ!


 婚約破棄の口実を手に入れた俺はその男性に対して問答無用で間髪入れずにクレームをつける。


「いきなり拘置所に入れるとは何事だ!! 討伐のためにわざわざ足を運んだ伯爵家跡取りと知っての狼藉か!?」


 と言おうと思っていた。


「それにしてもなんと胆力のある男だ。投獄されてなお人生経験が増えると喜んでおられる。私はアメリア侯爵、今回は討伐よろしくお願いします」


 いきなりお偉いさん兼婚約者の父である領主が出てきて俺の威勢は消えてしまった。


 胆力のある男と評価されたぞ。

 

 そうして今、侯爵家屋敷である。


「流石、ドラゴンを討伐した男。牢獄に入れられて素晴らしい人生経験と喜びの叫び声を上げるとはなんたる胆力」


 ・・・・・・・・。


「いえいえ、決してそんなことは。ただ面白い経験ができたな。と」


「牢獄に入れられ、殺人の罪で処刑になるところであったかも知れないにも関わらず。それを面白いと」


 ・・・・・・・・。


「エイチさんちょっといいかしら」


 アイシーさんに連れられて部屋の隅っこに行く。


「忘れてるかも知れないけど、この世界文明レベルは中世くらいなもんよ。ロクな警察の捜査能力なんてないから疑われたら首チョンパよチョンパ」


 ・・・・・・・・。


 俺は席に戻る。


「先ほどの話、殺人罪で首を刎ねられるのも面白いとは思いますが、流石に婚約者の領地でそのようなできごとにあっては婚約を継続するわけにはいきません。ただ、討伐は行いましょう」


 婚約は破棄の方向性に持っていこう。


「もちろん。君を捉えた騎士団にはきつく言っておく。婚約は継続していただきたい」


 ・・・無理やりにでも結婚させようとしている。


「婚約は継続しません。それより差し迫った魔獣の討伐について話をしましょう」


 俺は話を魔獣の討伐に移す。


「今聞いている限りでは婚約の話をしているほどに余裕があるとは思えません」


 話を無理矢理討伐の話に移す。


「確かにその通りだ」


「それでは話を進めましょう。討伐対象はドラゴン数体とフェンリルの幼生体で間違いないですね?」


「その通りだ」


「ではもう少し情報を整理したいので魔獣の出没地域の地図を持って来てもらえませんか?」


 そう言うと執事らしき人物が地図を持って来てくれ、説明までしてくれる。でもこの執事さん、服の上からでもわかるが金骨隆々だ。


 鍛えているのだろうか? 


「フェンリルとドラゴンの出現地域はここです。そして予想進路はこの通り、侯爵領の最も繁栄した

街、つまりはここに真っ直ぐ向かって来ています」


 ・・・・・・この進路、やっぱりあれだ。伯爵領、もとい俺のこの世界の実家に向かってる。


 尻拭い案件確定である。


「ちなみに元々、現在ドラゴンとフェンリルのいる地域は魔獣の出没地域なので、随分昔から3重に城壁を作り魔獣の侵入を防いできたのですが、流石にドラゴン数体とフェンリルともなるとその城壁も崩れ落ちると言うのが我々の予想です」


 侯爵様が説明してくれる。


「確かにドラゴンなんて城壁くらい空飛んで超えてきちゃいますしね」


 同意する形のアイシーさん。


「一応、前にドラゴンを討伐した時に利用した罠を持って来てはいます。前にドラゴン討伐を行った時は罠の餌にデバフ効果のある薬品を混ぜて、さらには餌にデコイの魔術までかけて寄って来たところを一撃で仕留めました」


 俺は前にドラゴン討伐した時のやり方を説明した。


「今回も同じ作戦で行こうかと思っています。ただし、今回もうまく行くかはわかりませんが」


「なるほど、確かに一度使った作戦、しかも成功した作戦なら使えるかも知れない」


「それとかなり破壊力のある被害範囲の大きな一撃を入れるので広い場所で人のいない場所じゃないと使えないです」


「それでしたらここなどいかがでしょう。城壁の外側で山に囲まれている場所です。魔獣の群れの予想進路にも入っています」


 ここに罠を仕掛けよう。餌を仕掛けて餌自体にデコイの魔術をかけまくりドラゴンとフェンリルがおびき寄せられ餌を食べているときに一撃を打ち込もう。


「それはよさそうな攻撃場所です。でもなんでそんなに詳しいんですか?」


「今でこそ執事を行ってはおりますが元々は騎士団長だったもので」


 筋骨隆々な執事さんは騎士団長だったのか。


 それは強そうな雰囲気が出ているわけだ。


「なるほどそれで」


「とはいえ引退してしばらくたちますので腕は衰えています。前線で使い物になるかどうか」


「引退した方を無理やり前線に向かわせようとは思いません」


 俺がそういうと侯爵様が言う。


「騎士団を引退したとはいえ、彼は執事兼冒険者でもある。協会にも登録している。前線で使い物にならないと謙遜しているが、中級魔獣の討伐にも参加しているほどだ」


 なんと、引退した後も戦っているのかこの執事さん。


 それも中級魔獣の討伐に参加しているのか、かなり規格外の強さだぞ。


「今回の討伐は中級魔獣も群れをなして迫ってきているらしい。護衛に騎士団をつけるが、それだけの戦力で足りるかどうか。それに、伯爵領へ行った騎士団の部隊は君たちが討伐した鉱石嵐の素材を運んでいと聞いているし彼らがもしフェンリル討伐に間に合ったとしても戦力が足りるかどうか」


「国軍動かす規模って聞いていますが」


「その通りだ。国軍は今、・・・・わが領地が滅ぶと予想して別で対策を立てている」


 いつのころだろうか、どこかの伯爵もある時期を境にある言葉を何回も言っていた。


 「・・・わが領地が滅ぶ」である。

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