血濡れの行軍
「騎士団長さん、大火力で一撃で消し飛ばします」
「お願いします!」
「エクスプロージョン(仮)」
土煙に向かって一撃を放った。
流石に今ので消し飛んだだろう。
「あれ? 効いてない気がするんですが」
「鉱石嵐は小さな鉱石の魔獣です。何十体どころか何千体何万体何千万体もの個体で群れなんです。何せ嵐ですから台風とか暴風とかそんな感じの魔獣です」
なるほどそれで鉱石嵐!
本気で一撃入れたら効くかも知らないが爆風でこっちにまで被害が出る。
「もう一発お願いします」
騎士団長さんが青い顔で言った。
さらに続けてこうも言った。
「鉱石嵐に集られたら全身から魔力を吸われて干からびて死んでしまいます」
「そんな恐ろしい群れなのかよ!」
「当たり前です。魔鉱石を燃料にして使ってモノづくりしようとして鉱山を開拓したら鉱石嵐が飛んできて新しく開拓した鉱山が廃墟と化した事例なんて山のようにあります。それでどの国も魔鉱石採掘は諦めたんです」
なるほど、エネルギーの採掘は文明の発展に不可欠だ。
それでこの文明はエネルギー源になる魔鉱石の採掘ができずに産業革命のような出来事が起こっていなかったのか。
「もう一撃行きますよ」
「私も加勢します!」
とこの事態の元凶である冷凍庫が何か言ってる。
「私が一撃入れて氷漬けになったところにエイチさんが一撃入れて消し飛ばしてください」
「なんだか腑に落ちないけどそれしかない! やるぞ」
「大出力広範囲凍結魔術絶対零度」
土煙をあげていた鉱石嵐の大群が完全に氷付になり地面に落ちていく。
「エイチさん、頼みました」
撃ち漏らすことなくそこに一撃を入れる。
「エクスプロージョン」
緊急クエスト 鉱石嵐の討伐完了
俺とアイシーは見事に氷漬けにされその後焼き尽くされた鉱石嵐の群れから大量の素材をゲットした。
ちくしょう。荷物用の馬車の荷台が重くなって侯爵領に到着するのが遅くなる。
そんなこんなで討伐を終えた俺たちは二手に分かれて行動することになった。
「エクスプロージョン」
ボフッと爆竹くらいの爆発を起こしながら移動する俺達パーティ。
ボフッという音はロクサーナさんの魔術の練習である。
「それにしてもあの破壊魔術を遠慮なく練習しながら移動できるなんて夢みたいです」
とルンルン気分で撃ちまくるロクサーナさん。
俺達は今、二手に分かれて行軍している。
なぜそんなことになったのか。
その理由は簡単だ。
鉱石嵐、その本体は小さな魔鉱石でありそれが魔獣として嵐の如く空を飛び回りあたり一体の魔力を吸い尽くし干からびさせて飛び去って行く悪夢のような魔獣。
こんな恐ろしいやつに出会っただけでも運が悪い。
がしかし、討伐に成功したのならそれは物凄い収穫になる。
そう何せ本体は魔鉱石。
つまり金になる。
そして今回討伐した魔鉱石の群れは全滅した。
その素材はと言うと。
今、俺達一行の行軍スピードを遅くする要因になっている。
何故ならば。
「こんな大量の素材運ぶ必要あるんですか?」
とは騎士団長の発言である。
「何言ってるんですか?! 鉱石嵐の素材ですよ! 大量の魔鉱石ですよ! 領地復興のために絶対に必要です!」
とは侯爵令嬢の発言である。
そう、つまりは金になる。侯爵領と伯爵領地復興の元手になるのだ。
だが問題がある。
物量が多すぎて行軍スピードが遅くなるという問題。
鉱石嵐は討伐したら魔鉱石をドロップするが、その魔鉱石自体が魔獣を引き寄せる。
この二つが問題だ。
仕方ない。
「あの、一つ提案なんですが、二手に部隊を分けて一つの部隊は魔鉱石の運搬と護衛。もう一つの部隊は侯爵領へ討伐に行ってはどうでしょうか?」
そう、俺達パーティは騎士団を鉱石嵐の素材の護衛として残し、先行しているのだ。
それもこうやって魔獣がわざわざ寄ってくるように魔術をそこらじゅうに放ちながら。
つまりは囮兼討伐である。
俺達が辺り一体の魔術を引き寄せると同時に討伐しまくり、後ろに続く騎士団は俺達が魔獣を討伐しているので安全に移動することが可能だということだ。
そして引き寄せ戦闘冷凍庫は大いに役立っている。
絶好調である。
「あ、魔獣が来ましたよ! 討伐しちゃっていいんですか?」
久しぶりにメイドとしてではなく討伐者、冒険者として活躍できると大喜びしてる冷凍庫さんに一言。
「好きなだけ暴れてください」
辺り一面を氷漬けにして喜ぶ冷凍庫さんは絶好調である。
「これ、寄って来た魔獣を切りまくっていいんですよね!」
眼を爛々と輝かせて戦う戦闘狂の婚約者さんも絶好調で斬りまくる。
絶好調である。
「回復しますねー」
敵にバフをかけ、味方にデバフをかけるノーコン後衛ヒーラーも直接相手に触れれば問題なく活躍
する。
絶好調である。
さらに言うのであれば。
「すごいどれだけ撃っても当たらない」
とノーコンヒーラーは遠距離からメアリーさん目掛けてバフを撃ち、敵に目掛けてデバフを撃つが、流石ノーコン。味方にかけるはずのバフが敵に当たり、デバフがメアリーさんに飛んで行く。
そしてそれを見事に回避するメアリーさん。
その程度のデバフ、背後から飛んできても当たらんぞとばかりに回避しまくる。
絶好調である。
一方、バフを受けた敵が強くなったと大喜びして氷漬けにする冷凍庫さん。
絶好調である。
俺はルンルン気分で敵を葬り去る彼女達を横目に遠距離から眺めている。
討伐しまくって魔獣がドロップした素材は道端に置いていく。
後から来る騎士団が回収してくるかもしれない。
もし回収してきたのなら、それなりに金になる。
ちなみに即座に換金できそうな素材などはルンルン気分で持ち運べる大きさのものは回収して侯爵へ持っていく。
絶好調である。
返り血を浴びまくった素材を運ぶ袋は血濡れだが全く気にならない。
絶好調である。
次から次へと討伐しまくって行軍した結果。
侯爵様の屋敷付近にまで到達した。
ちなみに侯爵領の市街地に入ってからと言うもの俺達はさほど苦労することなく侯爵様の屋敷付近まで来ることができた。
というより、もはや道案内してもらったも同然である。
何故ならば。
ルンルン気分で魔獣を討伐しまくった彼女達はというと。
「何、あの人達、血塗れよ!」
「きっと人斬りだわ!」
「盗賊か何かか?!」
「皆んな家の中に逃げて!」
「き、騎士団を呼べ!」
討伐しまくり魔獣の返り血を浴びまくり、ご機嫌で侯爵家へ向かう最中に街の人達に人斬りや盗賊に間違われた結果。
「何故あなた達は血塗れなんだ」
現在、俺は野盗、人斬りの頭目であるとの冤罪をかけられ侯爵家の騎士団詰所にて事情聴取中である。




