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緊急クエスト 鉱石嵐遭遇戦

 俺が大穴を開けた地点を遥かに通り過ぎて、もうすぐ夕方という時間帯。


 俺達一行は馬車に揺られながらこんな話をしていた。


「それにしても空中破壊要塞デヴァステイターがやってこないだけ良かったと思います」


 ロクサーナさんが何か不穏なことを言い始めたのだ。


 デヴァステイター?


 御伽話のあれのことか?


 昔、母親に絵本で読んでもらったことがある。


 悪い子はデヴァステイターがやって来て友達ごと破壊し尽くしちゃうぞーというアレである。


 メアリーさんはその話に同意する。


「本当にそうです。もしデヴァステイターが魔獣と同じように魔力に引き寄せられる性質を持っていたのでしたら、侯爵領も伯爵領も廃墟と化していたでしょう」


 まるで実在するかのような言い方だ。


「あれって御伽話か何かなんじゃないんですか?」


 頭の弱い子を見るような目で俺を見るアイシーがいう。


「何言ってるんですか? 実在するに決まってるじゃないですか」


 ロクサーナさんは親切にも説明してくれる。


「空中移動破壊要塞デヴァステイター。圧倒的な火力を空中から地上に叩き込み、魔獣も人間も街も何もかも破壊し尽くして飛び去っていく恐ろしい兵器です」


 メアリーさんもその兵器の恐ろしさを語り始める。


「100年以上前にとある帝国が威信をかけて作り上げ、幾つもの国が滅ぼされたと言われています。もしあんなものに魔獣と同じように強大な魔力に引き寄せられる性質があったら、それこそ伯爵領のこの街に引き寄せられてもおかしくはありません。なにせあれだけの破壊魔術を使ったわけですから」


 そりゃただの兵器でよかった。


 上位魔獣でさえ逃げ出す威力でエクスプロ―ジョン撃ったのだから、魔獣だったら引き寄せの法則発動は間違いない。


「本当にただの兵器でよかったです。魔獣のように魔力に引き寄せられる性質がもしあのデヴァステイターにあったなら、伯爵領に引き寄せられてもおかしくはありません」


「それにしても不思議です。あれだけの破壊力を持った空中に浮かぶ要塞です。どんな方法で魔力を補給しているのでしょう。どんな技術で動いているのか気になります。まぁ、今となってはロストテクノロジーであることは間違いないんですが」


 そう発言したロクサーナさんは魔術師らしく原理に興味があるらしい。


「無限に魔力を生成し続ける魔力炉でも備えてるんじゃないですか? まあ、そんなもの上位魔獣どころか超位魔獣の体の一部でも使っていないと実現できないでしょうし。そんなものを人間が手に入れられるとは思えません。今回討伐するフェンリルもまだ成長しきっていない子供と聞いています。もしこれが成熟したフェンリルだったら超位魔獣確定で国軍どころか複数の国が連合軍を連れて討伐するところでしょう。出てくるのかもわからないデバスティタのことより他のことを心配しましょう」


 天より降臨せし冷凍庫さんはデバなんとかの動力源を当てずっぽうに言っている。


「それもそうですね。心配する必要性なんてほとんどないでしょう。むしろ警戒するべきは超位魔獣のヨルムンガントでしょう」


 あれ? ヨルムンガンドってたしか。


「ヨルムンガンドは100年以上前に討伐されたはずです。心配する必要性はないのではないですか?」


 俺は素直に疑問を口にした。


 昔聞いたことがことがあったはずだ。


「ヨルムンガンドは生きてます。100年以上前に勇者と言われる人物と数万人の国軍が討伐に向かい、討伐こそ成功はしなかったですが封印はできたみたいです。100年以上の時間の中で討伐されたと話が変化したのでしょう」


 なるほど、時代が進むにつれて話が民間人の間で変化したということか。


「王族や専門家、一部の貴族の間では討伐されず封印されていると知られています。実質討伐されたも同然なので誰も気にしていないという実情ではあったようなのですが、ここ十数年の魔獣の大移動に寒波による不作。この世界に何かが起こっているのは間違いないので、念のために国の調査隊がヨルムンガンドの封印を確認しに行っているみたいです」


 と国の現状を話してくれるメアリーさん。 さすがは騎士の一族の侯爵家令嬢だ。


 食糧生産地帯だった父のところにそんな軍事的な話は来ていない。


 と思う。


 十数年で一大討伐地とかしている父の伯爵領はまだまだではあるが軍事的な面にも強くなった。


 そんな話も来ているかも知れない。


 そんな危険な魔獣が復活したとしても絶対に行かないよ。


 行くわけがない、国王の命令でもなければ行かない。


 王命なら行かざる終えないかも知れないが、何かと理由をつけて断ろう。


「魔獣の大移動に幼生体とはいえフェンリルの出現、本当にこの世界で何かが起こってるとしか思えないできごとが続いてます」


 たしかに何かが起こりましたよ。


 というより起こしてしまいました。


 天より降臨した冷凍庫は聞こえないふりをして窓の外を見始めた。


 そんな話をしていると馬車が止まり外から声が聞こえて来た。


「ここで野営の準備をします」


 そう言われて俺たちは馬車を降りた。


「できればここで手解きを受けたいところではあるんですが、流石に城壁もない場所で魔術なんか使ったら魔獣が寄って来ちゃいます」


 おや?


 たしかにこんなだだっ広い草原のような場所で魔術の練習なんかしたら魔獣が寄ってくるのは当然だが。


「騎士団長、なんだか遠くから土煙のようなものが上がってるんですが」


「あれは魔獣の群れですね。ここら辺で土煙をあげて群れをなすような魔獣なんて思いつくのは幾つかしか思い浮かびません。鉱石嵐か、植物系モンスターの繁殖期の乱ナーズ胚の群れぐらいでしょう」


「それ大丈夫なんですか? こっちに向かってくるんじゃ?」


「どっちにしてもこっちに向かってくることはないでしょう。鉱石嵐は豊富な魔力におびき寄せられますから、ほったらかしといたら魔鉱石の採掘所とかに突っ込んで行くのでこっちには来ないですし。乱ナーズ胚なら雌の乱ナーズ胚に向かって飛んで行くんで人に襲ってくることは珍しいです」


「それなら安心して野営の準備に入れますね」


「念の為に一応監視はいておきますが、問題ないでしょう。念の為に全員体外に放出する魔力は押さえておきましょう」


 騎士団長さんと話して全員に魔力を抑えるように指示が出された後、俺は野営の準備に向かおうとする。


 がやはり気になる。


「騎士団長、あの群れこっちに来ている気がするんですが」


「あれは鉱石嵐ですね。でもおかしいですね。豊富な魔力におびき寄せられますし珍しいこともあるもんです」


 俺は疑問に思ったことを聞く。


「豊富な魔力って鉱石くらいにしか宿ってないんですか?」


「流石にエイチ様の破壊魔術発動時の魔力くらいになると寄ってくるでしょうが、それと同等の魔力を常日頃から放出してるようなものなんてないでしょう。鉱石嵐は常日頃から魔力を放出してないと寄ってくることはありませんから」


 ・・・・・ん?


 あの大火力と同等の魔力を常日頃放出してる人物?


 俺は離れた場所にいるアイシーのところへと駆け寄る。


「お前、魔力の放出量抑えてるよな?」


「当たり前です! 今だけじゃありません! 常日頃からメイド業をやっている時も討伐に行く時も全力で放出量を抑えてます当然じゃないですか!」


 こいつ、常日頃からと言ったぞ。


「ちなみにその放出量抑えるのっていつからやってるんですか?」


「もちろんこの世界に降り立った時からです。この世界の魔獣が魔力に引き寄せられるのは知ってますし、降り立ったその時からずっと制限をかけてます! それなのにエイチさんは私を魔獣の引き寄せ体質とか言って人の努力も知らずにふざけるなってずっと思ってたんです」


「ちなみに制限かけたとして、放出される量ってどれくらいの量なんですか?」


 普通、人間には人の放出する魔力を目視確認するなんて不可能だ。


 専用の道具を使って測定するのが普通だ。


 だから聞いてみたのだが。


「そりゃ決まってます! どれだけ放出量を抑えたとしてもそこら辺の魔鉱石の採掘所なんて目じゃないくらいに溢れ出ちゃいます。冒険者登録した時も職員さんが魔力量を測定して驚いてました。世界記録叩き出せるんじゃないかって言ってたくらいです」


 なぜかこの冷凍庫は胸を張って言っている。


「あの騎士団長、やっぱりこっちに向かって来てる気がします」


 監視を行っていた護衛の騎士団員がそう言った。


「もっと放出量抑えられないんですか?」


「無理です。最大限に抑えまくってます。私が本気で放出したら、それこそ普通は目視さえできない魔力が眼で見れてしまうほどです」


 なっ!


 使用時以外は目視不可能な魔力が、普通に生活してるだけで目視可能な量を放出してしまうほどの規格外だとは。


 やっぱり今度ステータス見せてもらおう。


 こいつは俺が領主引き継いだら手錠かけて牢屋にでもぶち込んでおこう。


「騎士団長! やっぱりこっちに向かって来てます!」


 騎士団員さんの声が聞こえて来た。


「アイシー、戦闘準備だ」


 俺はそう叫びアイシーを馬車の外に連れ出す。




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