パーティ会議
さて、討伐の後は反省会である。
今回の討伐対象はウォーターストライダーだったが、それは簡単に討伐し街へと帰ってきた。
「さて、今回の討伐で戦力を把握しようとおもっていたのですが、いろいろ聞きたいことがあります」
と話を切り出す俺は続けて言う。
「偶然遭遇したスノーベアの討伐と大した報酬も出ないウォーターストライダーの討伐に成功はしたのですが、その討伐中に気になったことを聞かせていただきます。まずメアリーさん」
「なんでしょうか?」
「なんであなたそんなに前に出まくるんですか? 最早前衛じゃなくてたった一人で電撃戦やってるじゃないですか」
「そんなの決まっているではないですか、騎士として当然の務めだからです」
これはあれだ。
このまっとうな人間っぽい回答はあれだ。
俺の何かしらのセンサーが反応している。
「討伐の最中に魔獣を痛ぶるということに関して負けるとは不覚!って聞こえたのですが。一応、今後侯爵領で討伐を行う仲間になるので把握できることは把握しておきたいんです」
よし! 今のは我ながらいい感じで本心聞き出せる聞き方だぞ。
「実のところを言うと、こういった家柄ゆえ心労を抱えることも子供の頃から多く。それで昔、騎士団の低級魔獣の討伐に参加させていただいたことがあるのですが、その時に魔獣を痛ぶる快楽にめざめまして。それ以来、趣味で討伐に参加してるのです」
魔獣を痛ぶる快楽とは?
そんなものを俺は今までの人生で感じたことないぞ。
「それで、最前線でしかも最前線にいるメアリーさんの護衛を置き去りにして一人だけで討伐に向かうだけの自信と実力を手に入れたということですか?」
なるほど、ストレス発散のために狩りをしていたら腕前があがったということか。
それなら納得できる。
「いえ、そうではなくてですね。あまりこういったことを言いづらいのですが、いたぶる快楽に目覚めて討伐に夢中になるあまり、気が付いたら護衛を置き去りにして一人で前に出てしまい護衛の騎士から怒られるという毎日でして。それに攻撃に夢中になるあまり、防御系の魔術などの習得をおろそかにしてしまいまして、一撃でも攻撃を受けるとほぼ致命的なんです」
あ、あれだこの人、攻撃全振りの方でしたか。
でもこの人、軽装で前線に出てなかったか?
「ちなみに今まで攻撃を受けたときはどうしてたんですか?」
「いたぶられる趣味はないので、敵からの攻撃は全て回避しています。討伐に参加し始めた頃は回避系のスキルを習得していなかったので重装備だったのですが、敵の攻撃を受ける度に腹が立って、それで回避系のスキルを習得した次第です。回避に関してはかなりの自信があります」
つまり重装備だと回避しにくくなる。それで軽装なのかこの人。
なるほど、彼女は危険だ。婚約は上手いこと破棄の方向性に持っていこう。
よし話題を暴虐騎士からヒーラーに移そう。
「前衛に特化していると。で、ヒーラーのロクサーナさんは」
「メアリー様がうらやましい限りです。私は攻撃は全然ダメなんです。前線に出て戦ったり攻撃したりするのはちょっと何と言うか危険な目にあったり、討伐のし失敗した仲間のパーティメンバーのグロテスクな亡骸を見たこともあって、それで遠距離から一撃で攻撃する手段を探していたのです。そこで見たのがドラゴンキラーの一撃です」
「その呼び方やめていただけません? ドラゴンキラーなんてすごい人間じゃないですし。でも聞いてもいいですか? 何で僕の破壊魔法じゃないとダメなんでしょうか?」
「魔術のコントロールが悪くて遠くにいる味方に援護射撃を行うと味方に当たってしまうんです。それだったらいっそ一撃で全て消し飛ばせる魔術はないものかと探していたのですが、そんな都合のいい物に出会えるわけもないと諦めかけていたところ。エイチ様のあの一撃を見たのです。あの攻撃であればコントロールの悪い私でも魔獣に一撃を与えることができます」
それはまずい。
あの魔術は俺の魔力制御の技術、体内爆縮や体内内燃機関の技術があってこその攻撃だ。
それで俺は膨大な魔力を得ている。
それを会得していない彼女があの破壊魔術を使うとどうなるかなんて目に見えてる。
一撃打てば魔力枯渇、昏倒するに決まってる
「ちなみにコントロールが悪いと言ってましたが、攻撃魔術のコントロールが悪いだけなんでしょうか? それとも他のデバフやバフもコントロールが悪いんでしょか?」
「それが、今まで冒険者パーティは何度も渡り歩いてきたのですが、コントロールが悪くデバフが味方に当たり、バフが魔獣に当たると言うことが多々ありまして、なんどもパーティから追い出された次第です」
ノーコン後衛ヒーラー。ただしデバフやバフの効果は上級者。
それが敵の魔獣にバフをかけ味方にデバフをかけるとは、今までパーティを組んだ連中は地獄を見ただろう。
「直接触れる位置に味方がいると必ず外さないのですが、それ以外だと自信がないです」
ロクサーナさんの話を聞いたメアリーさんが意見を言い始めた。
「後衛で戦闘前にバフをかけてもらって私が前衛に出て戦って、エイチ殿とアイシー殿に私の援護をしていただく。と言うのが今の所の最善策ではありそうです」
確かにそれしかなさそうだ。
「ちなみに討伐には侯爵家の私設騎士団も参加するんですよね?」
「えぇ、もちろん。ただ、相手が上位モンスター複数となると我が騎士団もなす術はないかと」
やばい、戦力になるのは俺たちしかいない可能性が高い。
「ちょっとエイチ様、よろしいでしょうか?」
冷凍庫は俺があえて口に出さなかったことを口にしやがった。
「どうするんですか? これ? 戦力になるのエイチさんぐらいしかいないじゃない?」
「そう言うアイシーさんはどうするんですか? アイシーさんもこの街の最大戦力の1人ですよ」
「それはそうなんですが、私は癒しの女神とかではないのでそちらのスキルは得意とは言い難いんです。一度でもエイチさんの首がチョンパされたらおしまいです」
「クビチョンパは嫌だ。仕方がない。作戦を思いついた」
もうこれしかなさそうだ。
「前衛のメアリーさんが前線に飛び出す前に、一気に僕の火力で消し炭にして、残った魔獣をメアリーさんが討伐、アイシーさんがメアリーさんの援護射撃。メアリーさんが傷を負ったら全力で回収してロクサーナさんがメアリーさんを回復。メアリーさんが治療を受けている間に俺とアイシーさんで魔術を引き受けて火力で魔獣の接近を抑える。と言う作戦でいきましょう」




