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貴族の務め

 ボロボロになった俺たち一行は帰路に就く。


「エイチさん、やりすぎです」


 今、俺とアイシーさんは2人で家に帰っている。


 ちなみに2人して泥だらけである。


 騎士メアリーの遥か後ろに撃ち放った一撃は大地を抉り、爆風を巻き起こし、遠く離れた俺たちに襲いかかった。


 檻の中に居た騎士メアリーは鉄格子に体をぶつけ、俺たちは爆風と共に迫って来た土に吹き飛ばされた。


 決闘は俺の勝ちということになった。


「いいでしょう、決闘には勝ったんだから。アイシーさんも売り飛ばされなくて良かったじゃないですか」


「私を売り飛ばそうとしていた張本人が何言ってるんですか?」


「帰ったらお風呂に入って着替えましょう」


「そうしよう」


 勝ったのはいいものの騎士メアリーは他にも話したいことがあると言って帰って行った。


 また後日、メアリーさんはうちに来るようだ。


 それにあの魔術師の女の子にも教える約束をした。


 あの子もまた来るらしい。


 あんな年端も行かない女の子があの破壊魔術を嬉々として使い方の教えを乞いにくるとは大丈夫なのかこの世界?


 そう言いながら歩いていると実家が見えてきた。


「それにしてもメアリーって人凄かったな、あんな鋭い踏み込みは見たことない。俺の出した檻の鉄格子も斬ろうとしてたし流石は名門貴族って感じ」


「この程度で名門貴族などと言っていたら本物の名門貴族を見た時に驚くことになりますよ」


 といきなり後ろから話しかけられた。


「あれ? メアリーさんがなんでここに居るんですか? 決闘も終わったので今夜の宿泊先にかえるんじゃないんですか?」


「その通りです。今夜の宿泊先に帰るのです」


「そうですか、では僕はこれで」


 と再び歩き出し実家の門の前に到着した。


「あの? なんで僕の実家の前に居るんですか?」


「私の今夜の宿泊先がここだからです」


「え?」


「それにしても先程の檻に入れられなす術もなく爆発に吹き飛ばされ、鉄格子に打ち付けられるとは」

 あ、これはあかん格上の貴族を怒らせてる。


「あの時の閉じ込められた屈辱感、あの時の絶望感。なんかこう感じいるものが。何か新しい何かに目覚めそうっ!!!!」


 と顔を少し赤らめ、恥じらうように言う彼女。


 あれ? 怒っていない?

 

 むしろ興奮していらっしゃる?

 

 こいつドMだったりするのか?


 何故名門貴族のメアリーさんが我が家に滞在するんだ?


 それも我が家で風呂に入り、長期間滞在できるだけの荷物も持ち込まれている。


 風呂に入り、土汚れを落として服を着替えた俺は改めてメアリー・アメリア侯爵令嬢と向かい合う。

 今度は父と母、つまりは我が家、貴族系当主と侯爵家令嬢の対面である。


「お久しぶりです。伯爵様」


「お久しぶりです。メアリーさん」


 何故か我が家の夕食の席に普通に同席している。


「あの、なんでメアリーさんが我が家の夕食に同席しているんですか?」


「あら、知らなかったの? メアリーさんあなたの婚約者よ」


「は?」


 初めて聞いたんだが。


 周りを見るとアイシーさんが頷いている。


 さてはこいつ知ってたな。


「顔合わせに来たのよ。縁談よ縁談」


「決闘しに来たんじゃないんですか母さん」


「それもあるけど、ほら貴方ももう16だし」


 この世界の結婚の年齢早っ!


 俺もう結婚すんの?!


 って言うか聞いてないんですが?


「そう言った話は今まで聞いたことないのですが」


 その疑問に答えてくれたのはまたもや母だった。


「あら、言ったことあったと思うけど? 貴方もその人でいいって答えてたじゃない。ほら、貴方が本読んでる時に聞いたわよ」


 ちょっと待てよそう言えばそんな話あったような気がしてきた。


 あれって本気だったのかよ?


 俺は昔のことを思い出した。


 あれはまだ14歳くらいの時だ。


 もう既に冒険者として活動していた時期だ。


 しかも、表向きはジョンとして活動し本名はギルドの協会長と親しか知らない時期だ。


「エーチ、あなたの婚約者は誰にする? 一応もう縁談の話はいくつか来てるわよ」


「適当に選んどいて、一番強そうで頼りになりそうな人なら誰でもいい」


 魔獣討伐で使えそうな人がパーティメンバーに欲しいって思いながら本読んでたからそんな答えかたになった気がする。


「それで、なぜ婚約者が決闘を挑んできたのでしょうか?」


「それは決闘前に説明した通りです。それに加えて我が一族は騎士の家系、軟弱者に家督を譲る気も婿入りさせる気もないというのが父の意見です。ドラゴン討伐を成し遂げた強者ならばいいだろう。ただし、お前を倒せる程の腕前かどうかも見ておく必要があると父も言っているので参った次第です」


 これはあかん。


 いつの間にか親のお墨付きまで出てる。


 父も満足そうに頷いている。


 逃げ場が完全に無くなってる。


「一つだけ聞きたいのですが、メアリーさんは納得してなさってるのでしょうか? いえはじめて会う男性といきなり結婚しろと言われても中々に酷なのではないのでしょうか?」


「それが貴族というものです。ですがどうせ結婚しなければならないのなら、領民と国民のためになり家督を守り抜く実力ある人物でなければ意味がありません。それに現在、我が侯爵領は魔獣討伐で素材を集めて加工して売るという討伐と加工と貿易のわが領地の三大産業が魔獣の大移動によりすべての産業が衰退しているのです」


「でしたら、私のような軟弱者ではなく。強者の騎士の家系どうして御結婚なさってはいかがでしょうか? もしくは経済関連に強い家柄の方とご結婚なさってはいかがでしょうか?」


 よし! うまく切り抜けられそうな一言を言ったぞ。これで逃げられる!


「ドラゴン討伐という偉業をたった1人で成し遂げてなお謙虚でいらっしゃる。そんな方は中々おりません。さらに先ほどいろいろと伯爵様から伺ったのですが、エイチ様は冒険者として稼いだ資金の多くをこの街の防衛許可の資金に秘密裏に充てていたと聞いております。これから先、この伯爵領に魔獣が多くなることを見越しての判断、見事なまでです。経済にもお詳しくなければこの判断場できないかと思います」


 ・・・逃げ場がなくなったぞ。


 さらに言うのであればこの女性、家柄もいい。

 

 さらにアイシーさんが言ってたけどこの人は侯爵家令嬢だ。


 しかも現在侯爵様には息子がおらず後継者はいないらしい。


 つまり成り行きでドラゴン討伐の功績を残した俺に侯爵の椅子に座るチャンスが来たと言う状況に父も母も嬉しそうだ。


 がしかし言えるわけない!


 アイシーさんに吸い寄せられて魔獣が我家の領地に集まった結果、この辺りの生態系変化しまくって魔獣の生息域になり、元々我家の領地の産業である農業等は衰退し、更には隣の侯爵領からその魔獣が雪崩れ込んできてきて侯爵領経済まで破壊して不況引き起こしてるなんて言えるわけない。


 それにこの人なんだかいやな気がする。


 だがしかしこれは尻拭い婚約というわけだ。


 ならば仕方がない。


 今まで尻ぬぐいならいくらでもやってきた。


 冷蔵庫召喚の尻ぬぐいなら慣れている。


 これもその一環だ。

 

 そして結婚し家の存続と発展に貢献するのも貴族の務めである。


 俺は今までの人生で見せたことないくらいの笑顔で言う。


「とりあえず、友人から始めましょう」


 この場ははぐらかし、婚約者破棄に持っていく作戦である。


皆様こんにちは。

作者のうつのうつです。


現在執筆中のこの作品を読んでいただき、ありがとうございます。


なろうに投稿する作品としては2作品目になります。


ちなみに1作品目はこちらです。


午時葵の吸血鬼

https://ncode.syosetu.com/n6765im/


皆様ご愛読ありがとうございます。


病気療養兼社会復帰のための仕事の合間を縫って書いているので、あまり投稿ペース上げられないと思いますが何卒宜しくお願い致します。

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