自然災害か、事故か、事件か、それとも超常現象か
「で? なんでこんなことになってるんですか?」
とはアイシーさんの言葉。
「いや、それがいきなり決闘を挑まれまして」
一旦、話を聞こうととりあえず2人を屋敷の中に入れて庭にあるいつも俺がティータイムを楽しんでいる場所に座っていただいている。
「とりあえず、お二人にお話を伺ってはいかがでしょうか?」
そうアイシーさんに促される俺はアイシーさんを連れて2人の待つテーブルに向かう。
「あ、そうだアイシーさん。お二人にお茶でもお出ししていただけるかな」
「承知いたしました。少々お待ちください」
そう言いアイシーさんはお茶の準備をしてくれる。
ティートローリーに乗せたティーポットからお茶を注いでくれる彼女を横に話を進めよう。
もし何かあったならきっと彼女がフォローを入れてくれるはずだ。
荒事にならないよう良い感じで追い返す方法を探ろう。
「一応、聞くのですが決闘を挑みに来たというのは本当なんでしょうか?」
「その通りです」
「ちなみに決闘の相手は私で間違い無いのでしょうか?」
「えぇ、間違いありません。我が侯爵家の領地内でドラゴンを一撃で討伐した人物はあなた以外にいるはずありません」
「あの、侯爵家の領地内と言われてもあそこは誰もいない山奥のはずじゃ?」
「私の実家である侯爵家の別荘地そのすぐそばで凄まじいまでの破壊が行われ、我が家の所有する別荘や近隣の道路まで被害が及んでいます」
あれ? これ完全に俺の責任じゃない?
「さらに言うのであれば、もともと我が領地は魔獣の討伐や戦いで功績をあげたことで貴族位を得た家系、所謂騎士の家系です。そのこともあり我が一族は魔獣の多い土地を幾つか賜ったのですが、その領地の主な産業は魔獣の討伐により得た素材を売ることや加工して販売することにより得る売上だったのです」
だったのです。と言うことは過去の話か。
「ただ、ここ数年の魔獣の大移動により、我が領地から魔獣はいなくなり、その産業は衰退してしまい、領民は不況に喘ぎ苦しんでいるのです」
あれ? アイシーさん?
俺はチラッと横目でアイシーさんを見る。
彼女は顔を背ける。
やばい思い当たる節がある。
「かと言って他に我が領地に目ぼしい産業があるのかいと言うとやはり魔獣の討伐程の産業は無く。そんな時に領地の端に一攫千金を狙えるドラゴンが現れたのです。これ程の好機を逃してはならないと思い、我が一族はドラゴン討伐を成し遂げ、産業を復活させるために討伐隊を即座に編成し討伐へと赴いたのです」
「赴いたと言うことは実際に現地へ向かったと?」
「その通りです。討伐対象のドラゴンを見つけ、討伐の為に装備の点検を行い、ついに奇襲攻撃を仕掛けようとしていたところ。我等討伐隊の目の前でドラゴンが肉塊に変わり果てたのです」
あ、やばい。2人目の目撃者だ。
「なんとしても産業と景気の復興の為に我々の手で討伐しなければならなかったのですが、いきなりに横槍を入れられ、しかも我が領地内であれ程の破壊を行われてしまっては我等侯爵家としても黙ってはおけません。真夜中の出来事だったのでドラゴン討伐を成し遂げた人物の顔を見ることはできなかったのですが、ようやく見つけることができた次第です。よって公正に決着をつけるために決闘に参った次第です」
ふむなるほど。
「そちら側の事情はわかったのですが、何故こちらの魔術師の女性と一緒に我が家の門の前にいらっしゃったのでしょうか?」
そう、この2人は一緒に我が家の門の前に立っていた。
「理由は簡単です。ドラゴン討伐を成し遂げた人物の聞き込み調査を行っていたところ、彼女が目撃者だと知り、こちらに案内していただいたのです」
なんと言う不運。
「ちなみにそちらの魔術師の方はドラゴン討伐を行った時に使った魔術を教えて欲しいとのことで間違いないのですよね?」
「はい、その通りです。今まで魔術を使い魔獣の討伐を行ってきたのですが、あれ程の破壊力を見たことがありません。是非教えて頂きたく思います」
「なるほど、そう言うことですか」
これはもう、魔術を教えた後で戦うしかなさそうだ。
がしかしこちらは穏便に済ませたい。
少し頭を使わなければならない。
「決闘について聞きたいのですが、魔獣討伐の産業さえ復活すればよい。つまり、魔獣が再び大移動してそちらの侯爵領にもどす手助けをしたとしたら見逃して頂けると言うことはないでしょうか?」
「もしそんなことができたのなら神の御技でしょう。そのようなことあなたにできるとでも?」
「もし本当にできたら決闘は見逃して頂けると約束願えますか?」
「もし本当にできたらな約束しましょう」
如何にも騎士の一族という雰囲気を出して、まさに二言無しと言わんばかりに約束してくれた。
「少し待っていていただけますか? 重要な話をしてまいります」
そう言い、アイシーさんに目配せをして彼女を建物の陰に連れて行く。




