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十二月を迎えるその前、十一月になってからはまず、年中業務の一大イベント、年末調整のお知らせを始める。
年末調整は、その一年の所得税の金額を決定する大事な大事な業務だ。
普段お給料から差し引かれている源泉徴収所得税。お給料の総額、つまり収入から所得を導きだし、なんとか控除やらなにやらをやって、最終的に、その一年で納めるべき所得税額が計算される。
毎回ほんの少し大目に徴収されているうえ、様々な控除で課税分が減って、徴収していた分が多くなるため、ほとんどの場合、差額は還付される仕組みだ。
残念ながら私の場合はそのほとんどには当てはまらない。毎年不足となってしまう。
うちのお給料の計算をしている多田さんに、ごめんねぇ、と言われるけれど、それは多田さんが謝ることでも、私が謝られることでもない。定められた額は納付しなければ。日本には納税の義務というものがあるし。
でもね、やっぱり、その年の最後の給与支給日、まわりの人が現金で還付されているのを見るとね、やっぱり虚しくなるのよぉう。
うちは十二月のお給料の支給日、現金で還付される。封筒の中身と指定された金額が合っているかを確認するのだ。
正しく計算されて、納めるべき金額を支払っているのはみんな同じでも、やっぱり還付のあるなしで気分は違うよね……
計算して不足になってしまった人を見つけたら、その理由を説明しなければならない。そんなの仕方ないじゃん、と済ませたいところではあるが、不足となり追加徴収されているわが身としては、その気持ちがよくわかる。説明できるように、準備は必須だ。
と、その前に。
年末調整の書類は、十一月中頃に各会社、事業主に届く。
一年分の源泉所得税の納付書と年末調整のしかたの冊子、法定調書の冊子、丸扶(扶養控除申告書ってやつで、右上あたりに○の中に「扶」ってあるから、そう呼んでる)などがぎっしり入った大きな封筒だ。これを見ると、ああもうすぐ一年終わるんだなって、思ってしまう。
ここ最近はお国が、というか税務署なのか、とにかくケチで、丸扶やその他の提出書類を一部ずつしか入れてくれない。コピーして使ってもらうか、インターネットからダウンロードして印刷してもらうかだ。
なんでも電子化すりゃいいってもんじゃねぇだろ、と言ってやりたいところだけど、近々年末調整も完全電子化するとかで。時代は紙ではなくなっていく。
アナログのほうが見やすいのになぁ。けど、データのほうが入力作業が減って楽なのかなぁ。
支払っている保険の控除証明書やらなにやらも個人に届き出す頃です。
ってかね、もう十月には届いているんですよ。
みなさぁん、どうぞ捨てずに、しっかり素早く提出をお願いしますねー。
十一月末までにすべて回収、各人記入、入力し、あとは十二月の給与と賞与がある場合はそれを待てばOKの状態にできるのが望ましい。
――そうはうまくはいかないんだな、これが。
十二月の後半にもなると、お給料が確定してきて、どんどん忙しくなる。今年もやっちゃるぞ、と気合を入れるのが十一月の中頃なのだ。私の場合はね。
保険料控除は特に、証明書をくっつけるだけでまったく記入せずに提出してくる人もいる。間違いだらけで出されるよりはまだいいかもしれない。うーん、どっちがいいんだろ。
私はパズルを埋めているみたいで、この地道な作業はけっこう好き。
年末調整をやっていて思うのは、ある人のところには金がある、ということ。
とある人の保険をかりかり記入して計算すると、あらびっくり、私の年収よりもはるかに多い金額を保険料として支払っているではありませんか!
こういうときばかりは、格差を感じても私の懐が狭いとは言えないと思いたい。財布の紐はきついけどね。
今年も、毎年変わる様式の書類や証明書とにらめっこして、昨年と比較したりなんだり、忙しい日々がやってくる。
暇よりいいじゃないか!
面倒だ、とよく耳にするけど、私はこの作業が結構好きだから、この忙しさは苦ではない。なにより、これをしていると時間の経過が早くて。
そしてこれが終わると年末年始、途中でクリスマスも入ってくる。
一年の締めの行事。
すっきり終わらせたいと思い望む、今年の年末調整だ。
目指せ、残業ゼロ!
自分の分は確実に不足となるとわかっていても、他の人のはなるべく多く還付されるよう、奮闘の日々が始まる。