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あけぼの税理士事務所のあやかし担当  作者: ぬりえ
のぼるはるなの
40/199

2.

 暑さがやわらぐユニホームとかないのかなぁ。

 最近は暑くなってきたから、空調服がよく出るという。

 そうよね、外で仕事してたら立ってるだけでも辛いのに、熱中症にならないなんてことのほうがおかしい。


 うちは決まった制服はない。男性はみんなスーツにジャケットで、夏場はクールビズでネクタイなしのワイシャツだけど、女性はいわゆるオフィスカジュアルというやつ。だから男性に比べれば温度管理はしやすいところではある。

 暑さをどうしようと考えると、ユニホーム屋さんよりも、ユニクロのエアリズムとかを一番に考えるのが普通だと思う。

 でも話を聞いていると、私たちの耳に入らないようなブランドは、高品質のそういった商品を製造しているらしい。その分高くなるけど、品質がいいなら少し高くても、という人や会社は少なくないはず。

 量販店にまぎれて、一部の業者さんしか知らないような良いモノを、どうすればもっと知ってもらえるのだろう。それができれば、ちょっと辛い状況のここも、上向きになるはず。お客様の範囲も増えるはず。


 社長がけっこうお歳を召しているこの会社さんは、新しい取引先の開拓をするよりも古くから懇意にしてくれている取引先に重きを置いている傾向がある、……気がする。

 このご時世、ネットでなんでも購入できる。価格の比較もできて、同じようなものもすぐに見つかる。まったく同じものだってある。安く同じもの、またはそれに似たものが手に入るなら、私だったらネットで見つけた安いもののほうを購入する。それは会社も同じなんだよね。安い方がいいもん。


 こうして、昔からのお客様は安い方へと離れていってしまう。離れないようにするために値下げすると、利益が出ない。売れないよりはいい、とは言うけれど、はたしてそれでいいのだろうか。

 どうにか打開策を見つけたい。

 とはいえ新しい顧客ゲットしろ、と言うのは簡単でも、実際はやるのは難しい。

 ネットと比べられて、とちょこちょこ耳にするから、じゃぁこちらもホームページを作ってみたら? と思う。


 日曜日に放送されるのにタイトルが月曜日の番組で、ユニホームを扱う会社がホームページを一新したことで大儲け♪ みたいなのを見たことがある。

 ネット社会になった今、調べようとしたときにまずホームページがないと、新規顧客はなかなかつかないだろうな、と思うのは私だけかな。だって私も、欲しいものがあったらまずネットで調べるから。

 でも、ホームページを作るってのは、口では簡単でもやるのは難しいのよね。なんでもそういうものだ。今はホームページを作るサービスを提供する会社があるくらいだから、そういうのを使う手はあるけれど、やっぱり経費がかかる。需要があるってことはやっぱり必要な気はするんだけど。うーん。


 服を通販で買う時に怖いのは、大きさが合わないこと。肌ざわりや色や見栄えのちょっとしたイメージとの違い。肌ざわりとかそのへんは仕方ない範囲があるにしても、大きさだけはどうにもできない。

 体のサイズをすべて公開した人が実際に来た姿を写真でわかりやすく見せると、返品やサンプルの提供も減るはず。儲かってます、とテレビで出ていたユニホーム屋さんも、たしかこれをやっていた。


 安くするだけではダメ。

 今までどおりもだめ。

 時代の変化に対応して。


 具体的な案はない。身勝手にこのままじゃ、と心配しているだけの私は実際役に立てない。立たない。力になれるとすると、税金をいかに安くするか、だけだ。それも黒字の会社でなきゃあまり意味をなさない。


 私は私の担当先が好き。

 嬉しいことに、担当させてもらった会社さんの人たちはみんないい人で、力になりたいと思う。

 なのに何もできない……ただ決算、確定申告をするためだけの機械的で事務的な作業に来ているだけの自分が、情けなくなってしまう。


 もし良いアイディアがあったとしても、どこまで首をつっこんでいいの?

 身の程をわきまえろ、と自問自答して終わってしまう。


 だって、口で言うしかできない。実際に行動するのは、私ではない。

 私がこの仕事に就いたのは、めぐりめぐってつながったご縁だけど、役に立ちたい、と思うのはだめなのかな。


 事務所で「ありがとう」「助かる」と言われることは無に等しい。それは私が使えない人間だからなのだけど。

 お客様からその言葉を聞けたら、それは、私にとって仕事をしている意味になる。ほしいなぁ、いつか、早く。


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