表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
天使の子供  作者: 夢乃間
第2章 野良犬
12/27

運命の出会い

新章開始ですが、誤字があったらすみません

アタシには使命がある。その使命とは【救済者】を宿した卵の捕獲、あるいは卵の破壊だ。アタシが所属する【独立傭兵団 スカルフェイス】は研究所で救済者を逃した。だがアタシらから逃げ続ける事は出来ない。何故なら、世界のあちこちにラプターの目があるからだ。奴らが逃げた場所を特定するのに時間は掛からなかった。

 そうして、アタシらは別々に日本へやってきた。アタシは一番可能性がある場所の担当になった。ターゲットは子供だと聞いているが、アタシは一切の情を持たずに任務を遂行する。全ては平和の為。

 そんな訳で、アタシはこの町を回っているのだが、とある重大な問題に直面していた。アタシは空腹続きなんだ。タバコを吸って凌いでいたが、昨日と今日の雨でタバコが濡れて駄目になってしまった。

 解決方法は二つある。一つは他人の家の食料を取る事だが、これは悪行だ。もう一つは食料を買う事なんだが、日本の金は持ち合わせてはいない。

 つまりどういう事かというと、どうにもならないという事だ。悪行を犯すつもりはないし、かといって金も無い。任務を遂行する為に日本に来たというのに、食料品店の試食を待ちわびている様だ。

 今日も今日とて試食タイムを待ち続けていたのだが、店の人から追い出されてしまった。彼らの言い分は「店に損害が出る!」との事だ。

 反論の余地も無い正論にアタシは従い、行き場の無いアタシはエスカレーターの傍にあるベンチに寝っ転がった。


「はぁ……タバコも飯も無い。こんなんじゃ任務を遂行する以前に餓死だ……あー、腹減った……」


「あ、あの~……」


「あ?」


 目を開けると、見知らぬ女がアタシを見下ろしていた。誠実で争いには無縁の人生を送っている顔。年齢は10代……いや、日本人は幼い顔立ちをしている事を察するに、20代か? 質素な服、質素な靴、アクセサリーは無い、だが貧しいようには見えない。

   

「えっと、言葉通じますか? 日本語」


「……」


「え~、どうしよう……! こういう時、英語で話した方がいいよね? でも私、英語話せないんだよなー……」


「……日本語は喋れる。会話が出来る程度だがな」


「え? あ、やだ! じゃあさっきまでの分かってました!? ちょっと恥ずかしいなー!」


 声色は明るく、優しい。アタシを責める訳でもなく、自身への羞恥心が前面に出ている。良い奴だ。


「それで? アタシに何か用?」


「あ、いや……ずっとそこで横になってたから、どこか具合が悪いのかなーって」


「どこも悪くないよ。心配かけたようで悪かった」


「いえいえ! こっちが勝手に勘違いしただけですから! それじゃ……」


 女がアタシのもとから離れようとした瞬間、アタシの腹の音が鳴った。その音が聴こえたのか、女は後ろに一歩進んだ足を戻した。


「……あの、お腹空いてます?」


「ああ」


「それじゃあ、そこにスーパーがありますよ?」


「出禁というやつになった」


「出禁……そ、それじゃあ、1階にフードコートが―――」


「日本の金が無い」


「ぁ、ぁ、ぁ……」


 流石に唖然としているな。いや、戸惑っているのか? 一体何を戸惑っている?


「……あの!」


「ッ!?」


「私の家! 来ませんか!?」


「は?……嬉しい誘いだが、施しは受けないよ。アタシは物乞いじゃない」


「なら! これ持って!」


 そう言って指差す方を見ると、女の足元にはパンパンに膨れた袋が二つ置いてあった。


「これを私の家にまで持っていく! そして、私はあなたにお礼をする! ほら、これで施しじゃないでしょ?」


「いや、そうとも言えるが……ほんとに、いいのか?」


「困ってる人、見捨てられないでしょ? あなた、良い人に見えるし」


 アタシが、良い人……今まで他人を良い奴か悪い奴かを判断してきたが、自分が判断された事は無かったな。アタシを良い人と見るか……この女、知らず知らずの内に厄介事を引き受けてそうだな。


「それでどうする? 空腹の外人さん」


「……レインズ。アタシの名前だ」


「レインズ。外人さんってカッコイイ名前が多いなー!」

 

「それであんたは? マザー」


「マザーって、私はまだ20代ですよ!?」


「知ってる、洒落だよ。あんたから始めただろ?」


「あ、そっか。私は宮田京子」


「宮田京子……憶えた。それじゃあ宮田京子。あんたの依頼、引き受けるよ」


 ベンチから飛び起き、宮田の荷物を手に持った。持てないとは言えないが、かなり重い。パーティーでもするのか? なんにせよ、これで空腹問題は解決する。ようやく任務を再開出来るな。

 宮田と歩幅を合わせて歩いていくと、タバコ販売店があるのが目に入ってしまった。いや、流石に無理だよな。飯を食わせてもらうだけでもありがたいんだ。

 ここは我慢……我慢……!


「……なぁ、宮田」


「ん? 何?」


「……タバコ、1箱だけ買ってくれないか?」


「……」


「……すまない、知り合ったばかりでこんなお願いなど。忘れてくれ」


「……もう! 一箱だけだからね?」


「え? あ、ちょっと!」


 引き留めようとするも、宮田はタバコを買いに行ってしまった。アタシから言い始めてしまった事だが、流石にお人好しが過ぎるぞ。

 しばらく待っていると、宮田はタバコを手にして戻ってきた。 

 

「お待たせ! タバコって種類が一杯あるんだね! どれがいいか分からないから、適当に選んじゃった!」


「宮田……」


「もう、そんな顔しないで! 私、お金をあんまり使わないから、少しの出費くらい平気なの! だから気にしないで!」


 宮田……それ、カートンだ。1箱じゃなく、10箱だ。言うべきか? いや、ここで言えば厚意を損ねてしまう。それにカートンなら、当分タバコに困らない。しかし、アタシがお願いした十倍の量だぞ? 

 言うんだ……間違っていると……!


「……宮田」


「ん?」


「……ありがとう」


「フフ。どういたしまして!」


 すまない、宮田……この借りは、必ず返す。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ