運命の出会い
新章開始ですが、誤字があったらすみません
アタシには使命がある。その使命とは【救済者】を宿した卵の捕獲、あるいは卵の破壊だ。アタシが所属する【独立傭兵団 スカルフェイス】は研究所で救済者を逃した。だがアタシらから逃げ続ける事は出来ない。何故なら、世界のあちこちにラプターの目があるからだ。奴らが逃げた場所を特定するのに時間は掛からなかった。
そうして、アタシらは別々に日本へやってきた。アタシは一番可能性がある場所の担当になった。ターゲットは子供だと聞いているが、アタシは一切の情を持たずに任務を遂行する。全ては平和の為。
そんな訳で、アタシはこの町を回っているのだが、とある重大な問題に直面していた。アタシは空腹続きなんだ。タバコを吸って凌いでいたが、昨日と今日の雨でタバコが濡れて駄目になってしまった。
解決方法は二つある。一つは他人の家の食料を取る事だが、これは悪行だ。もう一つは食料を買う事なんだが、日本の金は持ち合わせてはいない。
つまりどういう事かというと、どうにもならないという事だ。悪行を犯すつもりはないし、かといって金も無い。任務を遂行する為に日本に来たというのに、食料品店の試食を待ちわびている様だ。
今日も今日とて試食タイムを待ち続けていたのだが、店の人から追い出されてしまった。彼らの言い分は「店に損害が出る!」との事だ。
反論の余地も無い正論にアタシは従い、行き場の無いアタシはエスカレーターの傍にあるベンチに寝っ転がった。
「はぁ……タバコも飯も無い。こんなんじゃ任務を遂行する以前に餓死だ……あー、腹減った……」
「あ、あの~……」
「あ?」
目を開けると、見知らぬ女がアタシを見下ろしていた。誠実で争いには無縁の人生を送っている顔。年齢は10代……いや、日本人は幼い顔立ちをしている事を察するに、20代か? 質素な服、質素な靴、アクセサリーは無い、だが貧しいようには見えない。
「えっと、言葉通じますか? 日本語」
「……」
「え~、どうしよう……! こういう時、英語で話した方がいいよね? でも私、英語話せないんだよなー……」
「……日本語は喋れる。会話が出来る程度だがな」
「え? あ、やだ! じゃあさっきまでの分かってました!? ちょっと恥ずかしいなー!」
声色は明るく、優しい。アタシを責める訳でもなく、自身への羞恥心が前面に出ている。良い奴だ。
「それで? アタシに何か用?」
「あ、いや……ずっとそこで横になってたから、どこか具合が悪いのかなーって」
「どこも悪くないよ。心配かけたようで悪かった」
「いえいえ! こっちが勝手に勘違いしただけですから! それじゃ……」
女がアタシのもとから離れようとした瞬間、アタシの腹の音が鳴った。その音が聴こえたのか、女は後ろに一歩進んだ足を戻した。
「……あの、お腹空いてます?」
「ああ」
「それじゃあ、そこにスーパーがありますよ?」
「出禁というやつになった」
「出禁……そ、それじゃあ、1階にフードコートが―――」
「日本の金が無い」
「ぁ、ぁ、ぁ……」
流石に唖然としているな。いや、戸惑っているのか? 一体何を戸惑っている?
「……あの!」
「ッ!?」
「私の家! 来ませんか!?」
「は?……嬉しい誘いだが、施しは受けないよ。アタシは物乞いじゃない」
「なら! これ持って!」
そう言って指差す方を見ると、女の足元にはパンパンに膨れた袋が二つ置いてあった。
「これを私の家にまで持っていく! そして、私はあなたにお礼をする! ほら、これで施しじゃないでしょ?」
「いや、そうとも言えるが……ほんとに、いいのか?」
「困ってる人、見捨てられないでしょ? あなた、良い人に見えるし」
アタシが、良い人……今まで他人を良い奴か悪い奴かを判断してきたが、自分が判断された事は無かったな。アタシを良い人と見るか……この女、知らず知らずの内に厄介事を引き受けてそうだな。
「それでどうする? 空腹の外人さん」
「……レインズ。アタシの名前だ」
「レインズ。外人さんってカッコイイ名前が多いなー!」
「それであんたは? マザー」
「マザーって、私はまだ20代ですよ!?」
「知ってる、洒落だよ。あんたから始めただろ?」
「あ、そっか。私は宮田京子」
「宮田京子……憶えた。それじゃあ宮田京子。あんたの依頼、引き受けるよ」
ベンチから飛び起き、宮田の荷物を手に持った。持てないとは言えないが、かなり重い。パーティーでもするのか? なんにせよ、これで空腹問題は解決する。ようやく任務を再開出来るな。
宮田と歩幅を合わせて歩いていくと、タバコ販売店があるのが目に入ってしまった。いや、流石に無理だよな。飯を食わせてもらうだけでもありがたいんだ。
ここは我慢……我慢……!
「……なぁ、宮田」
「ん? 何?」
「……タバコ、1箱だけ買ってくれないか?」
「……」
「……すまない、知り合ったばかりでこんなお願いなど。忘れてくれ」
「……もう! 一箱だけだからね?」
「え? あ、ちょっと!」
引き留めようとするも、宮田はタバコを買いに行ってしまった。アタシから言い始めてしまった事だが、流石にお人好しが過ぎるぞ。
しばらく待っていると、宮田はタバコを手にして戻ってきた。
「お待たせ! タバコって種類が一杯あるんだね! どれがいいか分からないから、適当に選んじゃった!」
「宮田……」
「もう、そんな顔しないで! 私、お金をあんまり使わないから、少しの出費くらい平気なの! だから気にしないで!」
宮田……それ、カートンだ。1箱じゃなく、10箱だ。言うべきか? いや、ここで言えば厚意を損ねてしまう。それにカートンなら、当分タバコに困らない。しかし、アタシがお願いした十倍の量だぞ?
言うんだ……間違っていると……!
「……宮田」
「ん?」
「……ありがとう」
「フフ。どういたしまして!」
すまない、宮田……この借りは、必ず返す。




