解放
点滅する赤い照明、鳴り響くサイレン。銃を持った集団が、研究員達を虐殺していた。彼らは特殊装備で身を固め、背中には髑髏のエンブレムがあり、顔にも髑髏の化粧をしている。瀕死の状態となった研究員の命乞いにも耳を傾けず、彼らは次々と研究員達を殺し続けていく。
彼らが目指した場所は、研究施設の最下層にある保管室。そこに彼らの抹殺対象は眠っている。保管室の前で彼らは集結すると、一人が扉のロックを解除し、扉が開かれた途端、対象を確認する前に一斉に射撃を始めた。
弾切れになった事で射撃は止み、次の弾倉を装着しながら注意深く保管室へと入っていく。保管室の中は一斉射撃で荒れに荒れ、保管室の中にあったベッドやぬいぐるみは形を残していなかった。
「……目標、確認出来ない。ラプター、監視カメラの全映像を確認しろ」
リーダー格の男の指示に従い、ラプターは瞳を青く光らせ、研究施設にある全ての監視カメラにアクセスした。全ての映像が脳内に流れ込んでくる中、研究施設の裏口前の監視カメラから、子供を抱えた男が外に出ていく所を発見する。
「対象は外に出ています」
「チッ。勘付いていたか」
「どうしますか?」
「今から向かっても間に合わん。顔はしっかり捉えた。焦る必要はない。計画通り、研究施設に爆薬を設置し、5分後にここを爆破させる。準備にかかれ」
リーダーの男が命令を下すと、他の隊員達は迅速に実行に移った。保管室に残ったリーダーの男は、床に落ちていた一枚の写真を拾い上げた。写真には年老いた研究員とラプターが視た男、そして無表情の女の子が映っていた。
「逃げ場など無い。俺達、スカルフェイスが狩る。必ずな」
一方その頃、研究施設から命からがら逃げ出してきた男は、車で逃走していた。研究施設から逃げ出せたとはいえ、未だ恐怖は身を震わせ、死の予感が背筋に張り付いている。
「……だ、大丈夫……大丈夫……! このまま、空港に、空港に行って……そして、そして……に、日本に、帰って……帰って……うっ、うぅぅぅ……羽柴先生……!」
逃走に必要な物を自分に渡し、夢を託してくれた亡き恩師を想い、男は静かに泣いた。
「……先生。あなたの夢、人類の新たな可能性を僕は、必ず守ります……!」
流れる涙を拭い、男は助手席で眠る女の子を横目で確認する。女の子はその可愛らしい容姿に似合う寝顔で眠っていた。