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まさか気づいてなかったとは…

ハウゼンことセクハラ親父、シルバー騎士軍団、それから苦労人の小姓と私たち3人はナンナのところへ向かっていた。


うぅ…よく考えるんだ、私!

このままじゃ路頭に迷うぞ。どうする?!

…セクハラ親父はマジ無理だけど、ナンナと一緒にドナドナ…じゃなくて!同行させてもらうのがいいよね?他に道はないよね??


うんうん唸る私を誰も気に留めていない。いや、手を繋いでいるミリーだけは気にしているかもしれないけど、彼女だってそれどころではないはずだ。


私もミリーも、ナンナと別れたら死ねる…

うん。ここは何としてでもナンナにくっついて行く他ない!


あっという間に来た道を戻り、ナンナの家が見えてきた。

「ここがナンナさんのお宅です。まずは私たちが中に入って事情を説明してきますので、ここでお待ちください」

アリーシアがセクハラ親父相手に丁寧に腰を折った。


が、セクハラ親父はセクハラクソ親父だった。

「誰に指図しておるんだ。おい!おまえたち!さっさと魔女を連れてこい!」

しかし、残念ながらハウゼンの命令に応えたのは小姓1人だけだった。

「…か、閣下。恐れながら、かの魔女は皇帝陛下がお求めになるほどの力ある方のようですし、気分を害されないように配慮が」

「力があったのは何年も前の話だろう?今はこんなみすぼらしい小屋で隠遁生活している田舎者だ。何を配慮してやる必要がある?わかったら、さっさと行って連れてこい!おまえ達も早く行け!」

小物臭すごー


騎士達に怒鳴るハウゼンの前に、全身鎧の騎士が立った。

「前にも言ったが、我らの任務は護衛だ。伯爵の部下ではないのだから、そのような命令には従えない」

低く、心地いい声だった。感情の乗らない淡々とした話し方だったが、それが誠実さを感じさせる。騎士達のリーダーなのだろうか。

ハウゼンは睨んだ。だが、騎士達が誰も動かないと悟るや舌打ちをして小姓にせっついた。

「おい!何をぼさっとしてる!早く…」


その瞬間、突風が吹いた。

「人の家の前で騒ぐんじゃないよ。まったく…礼儀がなってない連中だね」

戸口の前に杖をついたナンナが立っていた。

骨と皮ばかりの痩せた体は突風で飛んでいってしまいそうだというのに、不思議と弱々しさを感じない。

「お、おまえが魔女アデラインか?随分な婆さんだが、皇帝陛下のご命令だ。一緒に来い!」

「ふん!なんだい!それが頼みを聞いてもらう人間の態度かい?あんたのような馬鹿にのこのこついて行くほどボケてないんだよ!ほれ!」


ナンナが一つ指を振ると、ハウゼンの馬が勝手にUターンして歩き出した。

「な!なんだ?!おい!止まれ!」

「その馬は自分が疲れるまでそのまま歩き続けるよ。わかったらあんたらもさっさと帰った帰った」

わぁわぁ喚くハウゼンを小姓と騎士達が慌てて追いかけて行く。

彼らに手を振って、ナンナは家の中に戻ろうと反転した。

「待って!」


声を上げたのはアリーシアだ。

「ナンナさん!このままじゃ、この人たちは村から出て行ってくれません!どうか、彼らの頼みを聞いてあげてもらえませんか?」

アリーシアを一瞥したナンナの嫌そうな顔ったら!

でもなんとなく気持ちはわかる。このお姉さん、ナンナのことは心配じゃないの?


「どうして私が村のために嫌な思いをしなきゃならないんだい?」

「それは申し訳ないと思っています。でも、私は村長代理として村の安全を第一に考えなくちゃ。わかるでしょう?」

ナンナたちも村の一員では?

けれど、アリーシアの守るべき"村"に2人は存在していないようだ。

…もしかしてミリーが言ってた話?2人は村八分にされてる?


「こいつらについて行って、私に何の徳があるってんだい?」

「この村にいても飢えてそのうちだめになるわ。それなら帝国で皇帝の庇護を受ければ食うに困ることはないかもしれないでしょう?ミリーだって食べ盛りだし。ナンナさんだってもっと元気になれるかもしれない」

ミリーがぱっと顔を上げた。

なんだ。ちゃんと2人のことも考えてくれてるんだ。


ナンナはアリーシアをじっと見つめると、鼻で笑った。

「もっともらしいことを言っておいでだけどね。私らを利用して、一緒に帝国に行きたいなんて思ってるんじゃないかい?」

さっとアリーシアの顔に朱が刺した。

「ふん。図星だね。………まぁいいさ。そうさね。あんたの言葉にも一理ある。私らの生活の保証をきっちりしてくれるんだってんなら、帝国に行ってやってもいい」


全身鎧の騎士が振り返った。

他の騎士に何事か指示してから単身戻ってくる。

え?今の聞こえてたの?そんな大声でもなかったのに…地獄耳!


「さすがに耳がいいね、銀騎士さんや。あんたには権限がなさそうではあるが。どうかい?帝国まで行けば、私らの面倒をみてくれるのかい?」

銀騎士と呼ばれた全身鎧の騎士は少しの沈黙の後、了承した。

「それじゃあ、あの無礼な男の魔法は解いておこう。私らは旅の支度をするから、私らが乗れる馬車なり用意してまた迎えに来な」

銀騎士は頷くと駆けて行った。


「はぁ、やれやれ。急に忙しくなったね。アリーシア、あんたも来るなら自分の荷物をまとめに帰んな」

「わかったわ。急いで戻ってくるから絶対待っててくださいね!」

「わかったわかった。それじゃ2人は家に入りな」

「え?だから私は家に帰って…」

「は?何を言ってるんだい。ミリーとアヤカのことだよ」

ナンナが私たちを指差した。

アリーシアは小首を傾げて振り返って…「きゃー!」

は?何?


「あ、あなた!いつからいたの?!」

え、最初からですけど

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