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認めざるを得ない…

―ラノベでよく見る異世界転移なるものに遭遇しているらしい。


は?ははは!まっさか〜!

「あー、最近流行ってますもんね〜。異世界でチートスキルとか、悪役令嬢とか。私も読んだことありますよ。面白いですよね〜」

愛想笑いを浮かべる。いくら超常現象で知らない場所に飛ばされたとしても、そこが異世界だなんて。信じるも信じないもあなた次第…じゃなくて私次第です。


「…やはり自分の意思で転移したわけじゃないってことかい。やれやれ、これは面倒なこったね」

ナンナは疲れたようにため息をついた。

「私の話を疑うなら、村まで行ってみるがいいさ。その目で、この世界が自分の知ってる世界と違うかどうか確かめてきな」


笑うでもなく、真っ直ぐ見つめるナンナの目からは誤魔化しも戯れの気配もない。

どう反応していいか困っているところへ、ミリーが帰ってきた。

「おばあちゃん!薪拾って来たよ」

「早かったね。そしたら、ミリー、アヤカを村まで連れてってやんな」

「え?今から?」


ミリーがお腹をさすりながら残念そうに言った。

「なんだい。腹が減ったのかい?しょうがないね。先に飯にしな。あんたもお上がり」

ミリーが喜んで暖炉の鍋へ駆け寄っていく。あっという間に木の器にスープをよそって寄越した。

…スープだよね?これ。


「ここいらはひどい飢饉でね。食べられるものはなんでも食べるのさ。まぁ…食べられるだけマシだと思いな」

食べられるもの…なのか?これ。木の根?草?色も濁ってるし、変な匂いもする…

「えっと…あまりお腹は空いてないのでお構いなく」

「そうなの?じゃあもらっていい?」

頷けば、ミリーは嬉しそうに笑ってスープに口をつけた。口をつけた!


唖然としている間にペロリとスープを完食して、ミリーは元気に立ち上がった。

「ミリー、ベッド下に使い古したシーツがあったろう。それをアヤカに被してやんな」

「…え?シーツ?」

「あんた、自分がどれだけ目立つかわかってないだろう。そのシーツで頭からつま先までしっかり隠して行くんだ。いいね」

確かに!舞装束のままだったので隠せるのはありがたいが…

出て来たのは擦り切れた霞んだ色合いのシーツ…だったもの。

いやいや、そもそもシーツで隠すってどうなの?より不審者じゃない?!コスプレですって言い訳も通用しない、職質不可避な見た目じゃないの、これ?!!


「…まぁ、私の認識阻害魔法も軽くかけといてやるから大丈夫かね。ミリーもよくよく気をつけて行くんだよ」

「わかってるよ!用が済んだらすぐ帰ってくるね」

「…お邪魔しました」

なんだか知らないうちに魔法かけられたらしい。…もうついて行けそうにない。



2人で家を出ると、また木々の間を抜けていく。けれど、今回は踏み慣らされた道があって歩きやすい。

「時々、村の人がおばあちゃんに薬をもらいにくるんだ。この道を通って。村にはお医者さんがいないから…」

ちょっと言い淀んだミリーの背中を見つめた。

「私、少し前まで村の中に住んでたの。でも、お母さんたちが病気で死んじゃった時、私はまだ一人前じゃないから引き取ってくれる家族を探すことになったの。村長さんがみんなに声をかけてくれたんだけど…病気がうつるかもしれないから近寄るなって。それで村外れのおばあちゃんのところに行ったの」

「それは…」

「うん。仕方ないことだよね。私でもいい気はしないもん。でも、それからなんとなく村に行きにくくて。全然行かないわけじゃないし、大丈夫なんだけど、もしアヤカ様を嫌な気持ちにさせることがあったらごめんなさい」

「いや、私は全然…」


確かに感染症の場合は潜伏期間があるけれど、ちゃんと隔離期間をおけばうつらないと知らないのか?それとも知ってても受け入れられないとか?

…どうであれ、私は受け付けないわ。そういう大人

これから向かう村が途端に嫌な場所に思えた。


あれ?ってことはミリーとナンナは血が繋がってないのかな?


「あ、見えて来たよ!あれがサバニ村だよ」

森が終わり、開けたところまで来ていた。ミリーの指差す先には、なんとなく石を積んだだけの塀とも言えない境界線とその向こうの畑や家が見えた。


近づくと、段々違和感がしてきた。

畑の作物はナンナの家と同様、萎びている。農作業している人、外で遊んでいる子ども、家の前に座っている老人、みんなミリーたちと同じような出立ちで、こちらの様子を窺っていた。


え?みんな西洋顔なんだけど?

雰囲気も中世ヨーロッパの寂れた農村って感じなんですが?


「あっちが村長の家だよ」

家は平屋ばかりだが、奥に2階がありそうな少し大きい家が見えた。しかも脇には鐘楼のある石造りの建物もある。教会だろうか。


「それで、アヤカ様のご用ってなぁに?村にはついたけど、何をお手伝いすればいいの?」


村に…着いた?これで全部??

ぽかーんとしてしまった。

舗装されていない、土が剥き出しの道に突っ立ったまま。

車も、電車も、自転車だって見当たらない。日本人らしい日本人も見かけない。


もしかして外国?

だとしても、今時ヨーロッパ圏でここまで前時代的な生活してる場所があるのか?


冷や汗が伝う。

もしかして…やっぱり……本当に………

「…これが異世界ってやつですか。あはは、は

ふざけんなーーー!!!」

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