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gimmick-天遣騎士団-  作者: 秋谷イル
五章・選択の先へ

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破界遊戯(2)

「い、いやっ、いやっ、やめ――」

「ひぶっ!?」

「やだ! 嫌だ! 助けて! 助けて隊長!」

 獣は僧兵団にまで襲いかかる。守るべき市民と共に仲間たちまで次々に目の前で死んでいくのに、南門の封鎖を命じられた隊長にはもう何もしてやれない。


 ――彼自身、背後から壁伝いに忍び寄ってきた大蛇に巻き付かれ顔面を紫色に鬱血させているから。

 次の瞬間、圧力に負けたその顔中の血管が破裂し、体もグシャリと握り潰された。


 魔獣だけではない。奇妙な甲冑を身に着けた者たちまで現れ、躊躇無く聖都の人々に襲いかかる。彼らにとって三柱を信仰する者は全て敵。


「偽りの神々に死を! 真の三柱の名誉を取り戻せ!」

「破界の狼煙を上げるのだ!」


 三柱教と敵対する異教徒たち。教皇リリウム、つまりユニと結託し動力甲冑を与えられた彼等もまた圧倒的な武力でオルトランドの民を蹂躙する。魔獣たちは、そんな彼らに対しては一切興味を示さない。

 このままでは数分足らずでオルトランド市民は全滅する。人と獣の混成部隊は屋内に隠れた者たちでさえ残らず見つけ出し虱潰しに殺戮しようと企てている。

 だが、そこへ――


「クソッタレが!」

 怒りの咆哮と共に無数の光の軌道が現れた。空中に描かれたそれは地面の小石を超高速で射出して次々に魔獣たちを屠る。

 金髪碧眼の軽佻浮薄な美青年、天士ライトレイルは『道』の加護を得た天士である。彼が作り出す光の軌道に触れたものは全てが目にも留まらぬ速度まで加速されて武器と化す。


「来たか、天士(ギミック)!」

「覚悟っ!」

 背後から飛びかかる二人の異教徒。ところがライトレイルは自らの出現させた軌道を己を取り巻く形に変形させた。それに触れた瞬間、敵は二人とも超高速で空中へ打ち上げられる。

「――ッ!?」

 あまりの高加速に気絶する彼ら。直後、建物の上にいた別の天士が双剣で同時に両者の首を切り裂いた。


 天士フェアウェル。ライトレイル隊の隊長補佐で殺傷能力では全天士中でも十指に入る能力者。ただし、その力を使うには非常に高価な品を犠牲にする必要がある。だから今は使わなかった。彼の弾は貴重なのだ。


 敵を二人屠った彼は、アシストしてくれた隊長を褒める。

「その調子だ馬鹿(たいちょう)

「なあ、やっぱり、いいように使ってるだろ俺を!?」

「言ってる場合か馬鹿(たいちょう)

「わあってるよ! ったく!」

 苛立ち、次の標的へ向かっていくライトレイル。フェアウェルも後ろに続く。

「天士様!?」

「天士様だわ! 助けに来てくださった!」

 怯え、逃げ惑うばかりだった市民の目にようやく希望の灯が映る。突如出現した天遣騎士団が次々に魔獣と異教徒を倒し始めた。

「散開して市民を守れ! 生存者を一人残らず外に退避させるんだ!」

 団長のブレイブが指示を出す。その隣にはしばらく前から行方知れずになっていたはずのアイズの姿まである。

【待て、ライトレイル。右前方に敵集団が潜伏中。迂回して後方から叩く方が効率的だ】

「了解!」

 自身の超視力とエアーズから受け継いだ『声』の力で戦場全体を見渡し味方への細かい指示を出す彼女。直接戦闘を行うための余力はユニと対峙する時まで残しておきたい。だから今は仲間に任せる。

 任せるしかない。不甲斐ないが。



 ――そんな仲間たちの中に裏切り者の拘束と戦闘を同時にこなしている者がいた。

「ぬうん!」

 厳つい顔つきで体格にも恵まれている天士。彼は裏切り者を閉じ込めた光の檻を中のそいつごと振り回して敵にぶつける。

「ぐあっ!?」

 吹き飛ぶ異教徒。裏切り者――天士アクターも抗議の声を上げる。戦闘か拘束か、せめてどちらか一つにしてほしい。

「クソッ、ふざけるなプリズン! お前は僕を囚えておくことに専念していればいいだろう!?」

「そんな余裕があるか! 今は一人でも戦力が欲しい!」

 こちらもやはり、かつての仲間を憎悪に満ちた目で睨みつけるプリズン。彼は仲間意識が強く騎士団の面々を家族のように大切に想っている。

 なのにアクターは裏切った。その上、仲間の一人マジシャンを殺害した。もはやこの男に対する情など全く無い。

「少し黙っていろ! 殺してしまう! お前を殺せばアイズ副長の負担が増す! でなければ生かしておくものか!」

「いいさ、殺せ! 殺せよ! どうせルインティのいないこの世界に未練なんか無い!」

 挑発するように叫ぶアクター。だが今度は耳を貸さず檻の頂点から長く伸びる鎖を掴み、再び振り回すプリズン。


 同じ天士をすら拘束できる彼のこの『檻』はノウブルの『盾』に準ずる強度を誇る。ゆえに攻防両面に使えるそれを振り回され、異教徒と魔獣の群れは慌てて距離を取った。


「ちいっ、厄介な!」

「囲め! 遠間から削り殺すぞ!」

 包囲して遠距離から炎の矢やカマイタチを放つ異教徒たち。動力甲冑の機能を借りた疑似魔法である。直撃すれば天士とて無事では済まない。

 ところが、そんな彼らの攻撃を水流がまとめて飲み込む。

「なっ!?」

「防御は任せろプリズン!」

「足場を崩して! 人はいない!」

「おう!」

 水を操る天士フルイドと磁力を扱う天士マグネットが屋根の上から加勢した。フルイドの水流に守られたプリズンは自身の能力で鎖部分の長さを伸ばすと、アクターを閉じ込めている檻を力一杯振り回す。

「ぐあああああああああああっ!?」


 悲鳴を上げるアクター。格子の隙間から破片が入ってきて容赦なく彼を打ち据えた。周囲の建物もまとめて粉砕され、異教徒たちの足場を崩す。

 ただし誰も落下はしない。


「馬鹿め、我等は空中でも――」

 魔素で足場を形成し空中に留まる異教徒たち。ところが、そんな彼等に今度は無数のナイフや鍋、釘などが宙を舞って襲いかかる。

「むっ!? くっ、小癪な――」

「ドーン!」

 怯んだところへトドメとばかりに頭上からの衝撃波。空から落ちてきた天士インパクトの攻撃。マグネットの磁力操作による攻撃と彼の衝撃波の波状攻撃を受けた敵は人も獣もまとめて沈黙した。

 そしてまた指示が届く。

【そのあたりにはもう敵も住民もいない。北へ移動しろ】

「はい!」

 アイズからの指示通り、休む間も無く走り出すプリズンたち。散開した天遣騎士団は聖都を北上しつつ各所で敵を撃破していく。

 その頃、南門では――

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