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兄と婚約者




「領地はどうだ?ちょうど先程公爵から、よく頑張っていると聞いたところだが」


レオナルドがアンジェラの腰に手を回したので、アンジェラも社交モードに戻り、レオナルドに寄り添う。


家族といえど、王子とその婚約者。

兄であるフェルナンドも姿勢を正し、頭を下げた。


「ありがとうございます。学ばなければならないことばかりですが、先代たちが守ってきた土地を発展させることにやりがいを感じております」


「それは頼もしいね。すでに豊かな領地をさらに発展させようとする意欲は、さすがリュヌ公爵の血筋だ」


兄のことを褒められてアンジェラも嬉しくなる。


「お兄様は植物の研究者でもありますものね。そのために、隣国に行ってらしたのよね」


「あぁ。うちの領地に合いそうな植物があると研究仲間から聞いてね」


リュヌ公爵一族は全体的な能力が高いのはもちろんのこと、それぞれ特に興味を持った分野を極めたがる傾向にある。

兄であるフェルナンドは天候と植物、アンジェラは地理と経済が得意分野だ。


「隣国からの帰りに山が崩れたから間に合わないかもとアンジェラから聞いていたが、会えてよかった」


「私も間に合って良かったです。出発前に婚約の話は伺っていたのですが、まさかこんなに足止めをくうとは思わず、アンジェラが用意していた別ルートの地図がなければ危なかったです。ご挨拶が遅くなり申し訳ありません」


「問題ないよ。巻き込まれなくてよかった。リュヌ公爵家はよく知っているし、アンジェラからも話は聞いているからね」


そう言ってアンジェラを見つめる優しい笑顔は、今までの美貌の王子が浮かべる完璧な笑顔とも違い、そばにいるフェルナンドや母だけでなく、周りで様子をうかがっていた貴族たちまでドキリとさせる。



「うっごほん。大変失礼と思いますが、一つだけ質問させてください。…殿下は妹のどこを気に入ってくださったのでしょうか」



まぁ!お兄様ったら何を言い出すの!?

政略結婚というのはここにいる全員がわかっていることよ。


「お兄様、そんなっ」


王家に忠誠を誓っている兄にしては珍しく突っ込んだ質問に慌てるアンジェラを、レオナルドはそっと撫でて落ち着かせる。


「ふふっ そうだな、アンジェラには王族に嫁ぐために備わっているものがたくさんある。高位貴族としての知識や経験はもちろんだが…なによりも常に家族や領民など周りの人々の幸せを考えているところとか」


「あのっ」


社交辞令だとわかっていても恥ずかしいわ。



「えぇ。妹は常に周りの人々のことを考えています、きっと良い妃になるでしょう」


頬を染めた妹を優しく見つめながらも会話をすすめるフェルナンド。


「ちょっ」


お兄様ったら、もう十分婚約者アピールは済んでるのよ。



失礼にならないように口をはさもうとしても、タイミングがつかめない。


「フェルナンドの言うとおりだね。それに頑張っている中での自然な笑顔。これはなかなかできないよ。何よりその前向きな性格と自然な笑顔がこの上なく可愛らしく愛おしい」


「え…」


…イトオシイ?


「ん? なにかおかしなこと言った?」


「いや、その、いと…愛おしい、というのは」


良好な関係を示すとは仰ってましたか、ちょっとやりすぎではないでしょうか!?


いつも冷静なアンジェラが珍しく口ごもってレオナルドを見つめるのその姿に、兄であるフェルナンドは満足そうに頷いた。


「なるほど。良好な関係が築けていることがよく分かりました。先程の質問は妹を心配するあまりの発言ではありましたが、大変失礼いたしました。罰は受けます」


「許す。家族が急に婚約を決めたら心配になるのは当然だ。それに私にアンジェラの良いところを質問してくるのは悪いことではない。なに、またいつかアンジェラの良いところを酒でも飲みながら語り合おう。義兄殿」



どちらの素顔も知っているアンジェラからみたら、若干硬さはあるものの、何やら意気投合したように固く握手をする兄と、婚約者。



お兄様もレオナルド様も…なんだかよくわからないうちにレオナルド様とお兄様ったら打ち解けているわ。



「さ、アンジェラ。そろそろ踊ろうか」


長時間王子を独占するわけにはいかないと、礼をして去っていく兄と母を見送ると、改めてレオナルドに手をとられた。


さっきの兄との会話にもぞもぞと落ち着かなかったアンジェラだが、やるべきことが決まると切り替えも早い。


「もう挨拶はよろしいのですか?」


「十分しただろう、それに私達は婚約したてのパートナーだからね。二人の世界に入ってもいいのではないか」


「ふふっでは公爵令嬢として殿下のパートナーをしっかり務めましょう」


「…公爵令嬢として、ね。本当に切り替えが早い。そこは私の婚約者として、じゃないかな?愛おしいアンジェラ」


ダンスのホールドに合わせて、ふわりと笑顔になり顔を近づける。


その妖艶さに、遠目に見つめていた令嬢たちから黄色い悲鳴が上がった。



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