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ドレスを選びます 2




「いってらっしゃい」と笑顔のレオナルドに手を振られ、お針子たちと一緒に控えの部屋に入る。


あら?ドナさんは一緒に来ないのかしら。



着替中も付きっきりでアドバイスされるかと思っていたアンジェラは、レオナルドと一緒に笑顔で手を振っていたドナを意外に思う。



殿下とドナさんが二人で待ってる…なんとなくモヤッとした気持ちがよぎったが、そんなことより急いで着替えなきゃ!と気持ちを切り替えた。


見本となるシンプルなドレスを着せたあと、素早く採寸していくお針子達の動きには無駄がない。

思ったよりも早く一着目が整った。




カチャリとドアを開けると二人の視線がこちらを向く。



書類を読むレオナルドの側には山程書類を抱えた侍従が二人、そしてドナはカタログを見ながら紙になにか書き込んでいたようだ。

どうやらそれぞれ仕事に集中していたらしい。



「いかがでしょうか?」


二人から少し離れた場所に立ち、評価してもらいやすいようにぴんと姿勢を正す。


「王道のAラインドレスですわね。アンジェラ様の高貴な感じがよく出ています。生地のデザインもしやすいし、定番の形なので披露目というテーマにも合います。ただ少しシンプルすぎる気もしますね。レオナルド殿下から見ていかがでしょうか」


「まるで物語に出てくる月の姫のようだ。アンジェラ嬢の気品がうまく見せられてとても美しいよ」


ドナさんはプロから見た的確なアドバイスをしてくれる………


けど


殿下、貴方は人を褒める天才か!


「あ、ありがとうございます」


褒められ慣れているはずのアンジェラでさえ思わず照れてしまう。


月の姫って…きっとリリア様のドレス選びに付き合う間に褒めスキルが上がってしまったんだわ。

公的な社交以外では女性との繋がりが少なそうに見えたけれど、まさかこれが噂の天然たらし体質!?



アンジェラが斜め上の想像をしている間に、お針子たちが何色かの布を首元に当てドナとレオナルドの意見を聞きながら選んでいく。



そして同じ流れで次はエンパイヤドレス。



「可愛らしいわぁ!胸から下がふわりとして花の妖精ね。きっと緑の王様が攫ってしまいたくなるわ」


「たしかにとても可愛らしい。うん、花の妖精に違いない。ただ、婚約披露には幼く見えるかしれない。これは二人の時用に別で作ろう」



大の大人が二人揃って花の妖精とは?

それに…二人の時用…??



そして最後はマーメイドドレス。


「まぁ!よく似合っていて美しいわ…アンジェラ様の女性らしさもよく出ていて、セクシーなのに品がある。う〜ん、どれも良かったけれど、これが一番かしら」



実は私もひと目見て気に入ったデザイン。あまり着たことのない形だけど、デザイナーのドナさんが言うなら…


「ではこれに…」

「まって! これは、だめだ」


決まりかけたと思ったら、先程まで笑顔で見ていたレオナルドからストップがかかった。



あら、レオナルド様のお好みではなかったかしら。



少ししょんぼりと肩を落としたアンジェラは、ふっとその両手を下から持ち上げられて、いつの間にか目の前に来ていたレオナルドに驚く。


「…もう少し体の線を隠そう。とても似合ってるのは分かるんだけど、ごめんね。ちゃんと婚姻するまでは、見せつけたいけど、やっぱり心配で隠しておきたいんだ」


「み、見せつけたい…!?」

アンジェラの顔を覗き込むように見つめるその目はとても甘く、思わず耳まで赤くなる。


「あら!まぁまぁ!!殿下ったら、意外に独占欲が強いんですね。うふふ、わかりますわかります!」


まさかのレオナルドの言葉とドナのやり取りに、アンジェラは口をパクパクさせるしかない。


「うん。やはり最初のAラインドレスがいいな。定番だがアンジェラ嬢なら華やかに着こなせる。本当に、マーメイドも良かったが…本当に…」


どうやらマーメイドドレスもかなり気に入ってくれているご様子…でも、もう恥ずかしくて着れません!

アンジェラは心のなかで叫ぶ。



「ではウエストを絞って、膝から下を広げるようにレースで左右合わせたらいかがでしょうか。アンジェラ様の大人っぽさと新鮮さが演出できますよ」


「うん、いいね。アンジェラ嬢はどうかな?」


レオナルドの不意打ちが続き顔を赤くするしかなかったアンジェラだが、ドナからのデザインの建設的な提案には賛成だ。すぐに気持ちを切り替える。


「いいと思います。着慣れた形ですし、裾が広がっていれば動きやすそうですね。いざというときに走れる安心感がありますわ」


「「………。」」



ん?二人とも、不思議な顔をして止まっているわ。最初の説明の時に、王族用の服の工夫について聞いていたので、いざというときを想定してたけど…違ったかしら?


可愛らしく首を掲げるアンジェラに、我に返ったレオナルドはやはり蕩けそうな笑顔を向け近づく。


「アンジェラ嬢が走らなくて済むように、私が守らなきゃね」


そう言って先程持ち上げられたときから繋いでいた手を更に持ち上げそっと口づけをされる。


「で、殿下!?」


この間から距離感が近いと思ってたけど、さらにその先があった!?


「うん。そのドレスに合う宝飾を。ゴールドのチェーンに濃いサファイアがいいな」


あたふたとするアンジェラを楽しそうに見つめる

レオナルドにどきりとする。



サファイアのブルーはアンジェラの瞳の色に合わせてくれたのかと思った矢先に気がついた。


レオナルドの髪の色が深い海のような濃藍だということに。



お読みくださりありがとうございます!

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