城に入ったアリカ達
「私はアリカ。さすらいの一人旅に出ているところだ。これからよろしく。」アリカは相変わらずの中二病で返事をした。
(やばい…のりでオッケーしたけど、正体を知った今断ったら絶対殺される… でもやっぱり私ってすげー、かっこいいーー。それにしても私の実力を見破るとはこの国の未来は明るいなハハッ) なんて中二病+ナルシストとかアリカの未来は真っ暗だ。これからどんなことになるのやら…
「そ、それよりあなたの名前と家名、出身地をお聞きしてもよろしいでしょうか?」とブルース。
当たり前である。王子の正体を知ったからには他国に情報がわたってしまわないよう、しっかりと口止めをする必要があったのだ。なんならこれから魔法使いとして働くものでなければ口封じされていたかもしれなかった。アリカ、ますますお先真っ暗である。
「え、えーと、その…」そして答えられないアリカ。
実はアリカは絶賛家出中なのである。それもアーベルカ王国の敵国である、シラクス国の12番目王妃の娘だ。
(終わった…誰か我の骨は拾ってくれおくれ…)
「答えられないのか?言えない理由が納得できないと俺はお前を生かしておけないかもしれないな」マイクが言う。
(あ、もう終わったわ いっそのことすべて話してしまおうか、そうだ!そうすればきっと許してくれるだろうハハ!) などとアリカは現実逃避しはじめた。王子が12番目といえど敵国の姫を見逃す訳がないのである。しかし、、、
「もしかして複雑な家庭環境なのか?それなら仕方がないな。まあそもそもたとえ、こちらの情報を流出させようとしてもこの俺がお前を始末するまで。魔法の実力は本物らしいし気にしなくてよいぞ」
とマイクが言ったのである。マイクも王族としてある意味、複雑な家庭環境なのでそういうことには気を配るようにしていたし、マイクがナルシストだったこともありアリカは生かされたのだ。 ちなみにアリカが家出しているのには深い理由があった。
アリカは甘えん坊だった。しかし12人も妻がいる国王陛下と、最低なクズ母のもとに生まれたアリカはほとんど愛されなかった。故にアリカは学級の仲間たちに愛情を求めた。しかしとくに大きな特技もなくなんの面白味もないアリカは実力で序列された学級ではほとんど相手にされなかった。少しでも相手にされたくてアリカは自分に面白さを求めるようになっていった。そんな時出会ったのが中二病である。ただ変な言葉を恥を忍んで言うだけで「中二かよ」 と言って人が自然に集まってきたのだ。それは普通の人なら恥ずかしくてとても言えないようなものばかりだったが、アリカは自分がみんなに話しかけてもらえる方法はもうこれしかないと分かっていた…
いつしか彼女は本当の中二病になっていたが、今でも一人称が私と我で混ざっていたり、本当に命の危機の時は中二病がぬけたりなど完全にはアリカも中二病にはなれなかったのである。ついにアリカは怒りが爆発した。愛してくれない両親、つまらない貴族の学校、こじらせた中二病。これによってアリカは家出してやろうと思い至り、風邪薬と水、食料を持って家出したのだ。何ともまあ無謀な旅である。何とかマイクたちに呼び止められ九死に一生を得たのであった。
「まあとにかく城に来い!弟のベースの病を治してもらうからな」
「はっはい!」 アリカは答えたが
何がはっはい!だ。アリカが病を治せる訳がないというのに。ただの中二病は口先だけなのだ。そんな中アリカは気付いた。
(アーベルカ王国王子ニックの弟のベースってあの平民から生まれた天才王子か うん? めっちゃ重要な人やん てか私が病気治せる訳ないんだが ど、どどどうしよう あーっオワタ)そう口先どころか気付いてすらなかったのだ。 どこかでチーンと鳴ったような気がしたのであった。
~40分後~
とても慎重に連れて行かれた先には目を見張るような豪華な城があった。
ここに来るまでに何十回も人が見ていないか確認し、しまいには誰もいない壁に向かって「隠れても無駄だ。そこにいることは分かっているぞ」 などと言っていた。王族は絶対に正体を見破られてはいけないのだ。正直、周りの人が引きまくっていて逆に目立ったりもしていたが突っ込める人はブールスしかいなかったのであった。
早速裏口から城に入った。マイクは「なぜ王子である俺が裏口からなんだよ!」 的なことを言っていたがいつものことなのかブールスはスルーしていた。城の中はとてもきれいで周りにちりばめられた宝石にアリカは目を疑った。シラクス国のお城はアリカの実の父親であり、現国王陛下のベルタ―=シラクスが「城を飾るのは財産の無駄。国民も贅沢をするぐらいなら国税を納めよ」 と言ったためにとても質素なものだっだのだ。これだけではただケチなだけに思えるがベルターは数値しか気にせずに人の気持ちは考えない、論理的でずる賢い男だった。
「着いたぞここでちょっと待っていろ」とマイク。
そう言われ案内されたのは応接間らしき部屋だった。隣の部屋から声の大きいマイクの声が聞こえてくる。
「魔法を使える者を連れて来たぞ。例の物を頼む」
(例の物?いいね~響きかっこよくて キラーン)などとアリカは期待しているがその期待はすぐに打ち砕かれた。
「待たせたな。はい、これがベースの症状だ」
と言われだされたのはベースの病気?の症状が書かれた書類だった。言うまでもないが顔写真は載っていない。どこから来たのかもわからないアリカにこれ以上王家の情報を渡す訳にはいかなかったので、ブールスが帰り際にマイクに症状だけを書いた書類を渡してはどうかと提案したものだった。
(ちぇっ書類はシラクスで見飽きたんだよな つまんなそうだな~) アリカ思わず中二病を忘れ本音が。
それはそうとアリカは書類に目を通す。内容は以下の通りだった。
・声がおかしい ・顔があかい ・なんか熱い ・変な声を発している
字が汚いその書類を見て
(いや、これを創造するもの経験がない若鳥か 私に見せる資料がこんなものなのか がっかりだ) とアリカは謎の上から目線で思ったのであった。だがこれを作ったのはマイクなので仕方がないことなのだ。しかしアリカは気付く。
(これ風邪の症状じゃね) と。アリカもシラクスで育った身なのでアーベルカ王国の情勢は把握しているつもりだったが、風邪すらも分からないほど医学が発達していないのは驚きだった。
まあちなみにだが国民の間では風邪ぐらいなら分かるが、王族はほとんど体調を崩さないので王族専用の医者がいなかった。なので新たな医者を雇ってそいつに「王族が体調を崩している」とばらされる可能性を考えてマイクが直接医者として使える人を探した訳なのだがアリカには知る由もないのであった。
「えーっと、たぶん風邪ですねぇ あっ、そういえば風邪薬持ってたんだった 今出しますね」
そう言ってアリカはごそごそと鞄をあさり風邪薬を取り出した。というかあの書類だけで風邪と判断するのは普通の医者なら絶対にしないのだがアリカの相変わらずの中二病なのであった。
「ありがとう。では今からこれをベースに飲ませればいいのか?」
「はい、水と一緒に飲むと飲みやすいですよ」
とアリカのインチキ病院が終わったと思ったがその時…
「ちょっと待ったああああ」 とブールスが止めに入った。
「やっと本性を露わにしましたね!このスパイがあああ!その薬、毒薬だろうがああ 最初から怪しいと思てたんだああ」 そうなんとアリカは他国のスパイであると疑われてしまったのだ。
「うぇっ何のことだよ!!!怪しいならその薬私が飲んでもいいんだぞ!」アリカは激怒した。
そう言ったあとアリカは風邪薬をとると ゴクリ と半分飲み込んだ。もちろん何ともなかった。今度はブールス、人生最悪の状況である。
(えっえーー毒じゃないの…!嘘だ! ああどうしよう そうだ!まだあいつが自分に効かない毒にした可能性がある…!仕方ないここは自分の誠意を見せるためにもこの私が!) こういう時だけ頭の回転が速いブールスはアリカが食べた薬の半分を口の中に入れた。 しかし異常は起きず、ブールスは少し顔を青褪めながら
「本っ当にもう申し訳ございません申し訳ございません×3 アリカ様、私が未熟なばっかりに疑ってしまい私は許されざる罪を犯してしまいました」 と誠心誠意謝ったのである。
これには当の本人であるアリカさえもその謝りっぷりに引くほどだった。そしてブールスは
「い、いや 誰にだって間違いはあるさ 私が怪しかったのも事実だし 王様の臣下なら疑り深いのも善いことだし 今回ばかりは許してやろう」と許されたのだった。
実はマイクは臣下のミスには厳しく、特に人を冤罪で疑うのはとても嫌いだったので自然とブールスにはその癖がついていたのだった。それなのにブールスは
(なんてお優しい人なんだ!女神だ!)と思ったのだった。
普通ならとても怪しい上に王子に薬を飲まそうとした者を怪しむのは当然のことなのでアリカが怒っているのも器が小さい部類に入るのだがブールスは知る由もない話なのであった。だが、結果としてもう怪しまれることはなくなったのであった。
その後、薬の効果なのかそれともただの自然回復か定かではないがベースの風邪は治ったのであった。
~本編にはない細かな情報~
アーベルカ王国の補足説明続き
マイクたちが正体を隠しているのは代々先代の力を発揮できるのは必ず現 国王陛下が死んだ後になるので今のマイクたちの力は一般人の1.5倍位の力しかないからです。マイクが国王陛下に遠く及ばないのもそれが原因です。 また、今アーベルカ王国は大国シラクスの牽制によって他の国とは貿易ができない状況にあり、新しい技術をとり入れられない状況になっています。
ベースについての補足説明
ベースは徐々に弱くなっていくアーベルカ王国の驚異的な力を持った王家の血を引く者を増やすため 条件に合った、息子が戦死してもかまわない平民と国王陛下との間にできた子で(これに国王陛下は大反対したが有力な貴族たちに推され仕方なく折れた)当初はみんなから哀れみや人ではないような目で見られていたが先代のような頭の良さで王家の地位や人の弱みなどを使い、いずれは人々からの信頼も厚い天才王子となっていました。ちなみに現 国王陛下であるダンラ=アーベルカはマイク同様に頭はそこまでよくないが身体能力が高く、ベースは身体能力は普通だがとても頭がいいです。
投稿頻度が遅いですが、最終回近くまで構想ができているので気長にお待ちください。