〈S〉落ちこぼれと腐れ縁の密談
Sの意味………ショート、サイド、それとなくパロディ。
〈1〉芯護
ボサボサの黒髪と無愛想なのが特徴。孤児で路頭に座っていたところを丹波に拾われ、『秩序の学舎』(アカデメイア)へ。過去の記憶が若干乏しく、孤児だった頃の記憶を覚えていない。育ての親に似て口悪し、言葉より先に手を出すタイプ。信条は“嘘をつかない”。自分から積極的に話しかけるのは苦手で、馴染みの三人以外とはあまり話さない。
最近、とある少女が気になって遠くから眺めることが多い。
「…」
「―――ヒナ、依妃奈。アイツまた見てるわよ」
「誰?」
「ほら、あのボサボサ頭の。ずっとヒナをかじりつくように見てる。気持ち悪くない?」
「う、うん、そうだね。でも、見ているだけなら良いんじゃないかな」
「えー? 止めさせた方が良いって。ヒナが行かないなら私が行ってくるよ」
「良いよ、リエ。それよりも次の授業に行こう?」
「むう。まあ、ヒナがそう言うなら。……ホント、気持ち悪い奴」
「芯護、また見てんのか」
「おー」
「……なあ、気づいてなさそうだから一応言っとくぞ」
「何だよ、レンザ」
「人はそれを、ストーカーと呼ぶ」
〈2〉レンザ
茶髪で長身、あまり笑みを絶やさない明るい性格。孤児で『秩序の学舎』に拾われた。普段から不真面目な態度が目立ち、悪友のバーノットと一緒に芯護をからかう。人付き合いの良さと場の空気を盛り上げるのに長けているので、馴染みの三人以外にも友達は多く、交友を深めている。
不良生徒ではあるが、勉強は出来る方である。ただし、基本は馬鹿。
「―――レンザ、ここの数式ってどうやったら解ける?」
「またかよ、バノ。そこは、教本の四十頁に書いてある応用をさ………、」
「―――レンザ、トゥーラグラドの主な産業ってなんだったかな?」
「トゥーラグラド? …は、蒸気機関の工学技術を利用した日用品の生産と、それから、他国の都市整備を請け負ったり………、」
「…」
「なあ、トオル。レンザって結構頭良いよな」
「あ、芯護もそう思う? 俺も薄々思ってたんだ。たまにどうして落ちこぼれなのか判らなくなるよね」
「ああ。まあ、落ちこぼれなのは仕方ないけどな。だってあいつ……」
「……セイレ〜!? なんで俺のテスト結果が0点なんだよ! 今回かなり頑張ったんだぞ? 採点ミスだ!」
「名前を記入しなさいと前々々々々々々々回から注意しているのだけれど」
「わは」
「抜けてるんだよな、どっか」
「致命的にね」
〈3〉バーノット
体格のがっしりした、力持ちの印象を与える。孤児で『秩序の学舎』に拾われた。普段から不真面目な態度が目立ち、悪友のバーノットと一緒に芯護をからかう。芯護同様にとある少女(芯護とは別人の子)を気にして、周囲にはばかることなく追いかける。
性格は言動よりも存外真面目で、規則正しい生活を心がけている。朝起きたら必ず歯を磨き、布で全身を念入りに拭いて清潔感を保ち、昨晩の内に用意しておいた黒い背広をしっかりと着こなし、両手に真っ赤な薔薇の花束を抱える。
「…ク〜ルミ〜アちゃーん!! 俺の想いを受けと―――」
「散れ」
「ってばさギ?!」
「―――手羽先が食いたい」
「へ? 急にどうしたの、お腹減った?」
「ん、なんかな。腹は減ってないんだけど、名前が浮かんできたから」
「手羽先かぁ。パリパリの皮が美味しいよねぇ。言われたら俺も食べたくなって―――て、」
「芯護! トオル! ニュース、ビッグニュース!!」
「うるせえな……なんなんだよ、レンザ」
「バノの馬鹿がやらかした! タキシード着込んで薔薇持ってクルミアに突っ込んだって!」
「ブッ!?」
「うわ……それで、どうなったの?」
「聞かなくても判るだろー! 見事玉砕、てか返り打ち!! アッハッハー!!」
「間抜け過ぎて笑えねえ」
〈4〉トオル
身体的な特徴はあまりなし。物腰穏やかで目上にもきちんと敬語を使う、落ちこぼれの中で唯一良心的な性格。孤児で『秩序の学舎』に拾われ、芯護と同じく丹波に育てられた。
名は元々『透』だったが、“漢字”という文字が日常でまったく使われない上、覚えにくいと丹波に直談判して今の『トオル』に変えてもらった。一緒に育てられたこともあって、芯護とは他二人よりも親密である。
「トオル、拭くもの何か持ってきてないか。汗かいたんだけど」
「良いよ、はい」
「サンキュ」
「…」
「芯護、ちょっと席外すよ」
「トイレか? じゃあ、俺も一緒に行く」
「…」
「風呂入ろー。仲良く入ろ〜」
「背中流してくれるか?」
「いいよー。俺も頼むねー」
「ああ」
「…、」
「トオル、そろそろ寝るぞ」
「うん、判った。今日は芯護の部屋だったね。枕取りに行ってくる」
「早くしろよ。遅れたらベッドには入れないからな」
「えー? なんだかんだで入れてくれる癖に!」
「…ッ」
「芯護…身体が熱い………」
「俺もだ……お前を触ってると、興奮して夜も寝つけない……」
「芯護ぉ……」
「トオル………」
「「アッ―――」」
「うぉ―――――い。君達その辺にしときなさいよ、どんな関係だよおおお!?」
「どんな関係って………なあ?」
「うん…」
「『なあ?』『うん…』じゃねえよ! ポッと顔を赤らめるなぁ!! ちょ、もう、リセット! その設定はなし! 普通の友達、俺とバノと同じ友人関係! 以上でも兄弟未満!! …異議は認めねえええええええええ!!!」
―――BL設定は、削除されました。By作者
〈4〉セイレと丹波
「………うーっす、お疲れさん」
「あら、お疲れ様。芯護は目を覚ました?」
「おう。身体に異常はなし、ピンピンしてたぜ。問題はなさそうだったから帰した……てかよ、なんでここ、こんなに暗くしてあるんだ?」
「雰囲気よ」
「いや、真顔で言うな。まあ良いけどよ。んで、これが浸入したカマ野郎の持ってた『器』、の残骸か。ふぅーん…」
「どう? 私の見立てでは『禁器』、万理は病魔………なのだけど、」
「なんだ?」
「貴女はまだ現場は見てないわよね。………この『器』、天井を腐らせて崩落させたそうよ」
「天井を? 有り得ないだろ。“病魔の万理がどうやって無機物を腐らせられる”っていうんだ」
「ええ、不可解なの。だから貴女に鑑定を」
「ふん……こんなろくでもないのより、あいつが発現した律神器の方を見せろよ。本人の無事は確認したが、『器』がどうにかなってたら事だからな。できるなら手を加えて修正してやらないと」
「それには及ばないわ。―――はい、これ」
「………こりゃあ、」
「綺麗でしょう? 発現段階で無理に力を使ったのに、歪みは何処にも見当たらないのよ。【純心】と見間違うばかりに、ね」
「…はは! あいつの【精神】が、こんなに良い『器』を産み出すとはよ。………ん? これは、【魂魄】か? ちょっと判りづらいな」
「…ねえ、浸入者のことで話があるの」
「気づかなかったんだろ? 依妃奈が向かって一通り騒動が終わるまで、お前も、隣の教室にいた奴らでさえも、騒ぎに気づかなかった」
「ええ、でもそれだけじゃない」
「依妃奈が、動いちまったってことか…」
「彼女があそこに向かわなければ、被害は最悪のものになっていた。それには厚く感謝したいのだけれどね。今までしてきたことは水の泡よ」
「それなんだがよ、ちょっと神経質過ぎやしないか? “外界への外出を禁じる”にしても、【腐蝕】に冒された連中の治療をさせなかったことにしても、ちぃと過保護な気がするぜ」
「そう、ね。どちらにしても、依妃奈はもう動いてしまったのだし、終わったことをうだうだ言っても、ね。でも、外界にはこれからも行かせないけれど」
「はいはい、了解っと。あ、そういや依妃奈がカマに命乞いしたらしいな」
「したようね。生徒達も動揺していたわ」
「依妃奈が『秩序の学舎』に残ってたのも合わせて、言い訳は?」
「“『転送器』で送り出す時に体調が優れなかったので、私が居残らせた”。命乞いは……別の方に気を向かせたわ」
「別ってのは、」
「貴女の“英雄”さん」
「やっぱりな。苦労するぜ、あいつ」
「しばらくの間よ。皆に平静が戻るまで、私の『器』で根回ししないと」
「しゃーないか。そんじゃ、当面の問題はカマ野郎と校舎内の見張りだな。こうなった以上、もう我慢できないだろ。特にミーシャ」
「ふう……ええ、良いわ。浸入者への尋問はどうしましょう」
「俺はパス。拷問なんて下らねー真似はできないんでな」
「誰だってしたくないわよ。私が、落としてみるわ」
「任せた。なら、俺はこいつの解析といくか」
――――〈二〉へ続く。