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赤い眼の魔導士  作者:
本編
10/16

終章 赤い眼の魔導士(1)

 魔王を封じる結界のそばに設置しなおされた陣営には、其処ここに魔導士の姿がある。

 王国中の魔導士は総勢で400名弱。現在、彼らは3組に分かれ、昼夜を問わず交代で魔王封じの結界へ魔力を送り続けている。魔王が目覚めてから2日。結界が閉じる前に生み出された魔獣を足止めする戦士にも、魔導士たちにも、疲労の色が濃く現れ始めている。


「何とか恒久的な結界を早急に結ばねばならん」


 最高魔導士ポタルの声は重々しい。


「現在の仮の結界の外側に、より高度な結界を結ぶ必要がある。しかし、恒久結界の展開には全魔導士の半数程度、それも上位階級の熟練した魔導士が必要だ」

「半数ですか…」


 アラン参謀長は視線を落とししばし黙考する。魔導士の会議に武官が参加を許され、あまつさえ発言を許されるのは異例のことである。


「完成までの時間はいかほど見ればよろしいか」

「数日はかかる」


 参謀長は口元を引き結び再度短く黙考する。その間、剣士の体力が持つか、王都からの応援が間に合うか、思料しているのだろう。


「他に方策はない。やりましょう」


 彼の決断は早い。

 ポタルとアランがそれぞれに指示を出そうと口を開きかけたその時、若い魔導士が飛び込んでくる。


「大変です。魔王が……魔王の姿が、成長しています!」

「何だと?!」


 会議に出席していた上位魔導士たちの顔色が変わる。


「いつからだ、やつの魔力はどうなっている!」


 矢継ぎ早に発せられる質問に、息を乱した若い魔導士は言葉に詰まる。


「マシュー、現場で確認してくれ。私も剣士らに指令を出したらすぐ向かう」


 短く指示すると、アランは魔導士隊の幕内から飛び出す。誰が聞いても、良い知らせであるはずがない。


「参謀長、これはマジでまずい。あいつの眼力を避けるために、結界で光も遮断していたんだが、そのせいでこちらからも中が見えなかったんだ。今日セラが魔力送りに参加して、異変に気付いたらしい。奴は今は眠っているらしいが……」


 寸刻で魔導士たちが集結している結界の外部に駆け付けたアランに、マシューは深刻な表情で報告する。


「成長のスピードは。これから作る結界で封じられそうか」

「歩けるくらいの大きさにはなっている。魔力は……3日前とは比べ物にならない。今のままだと、内側から食い破られるのは、時間の問題だ」

「……総力で抑えて、どのくらいだと思う」

「3日は持たないかもしれない。正直、ここからどのくらい強くなるのか想像がつかない」

「……クソッ」


 参謀長がらしくない言葉を吐く。


「同盟国から魔導士を派遣してもらおうにも、時間が足りない…っ」


 さすがに自国以外の魔導士を強制転移させることはできない。魔導士同士が移動陣を使用しても、数日で数百人の移動は実質不可能だ。


「……とにかく、今は総力で抑えるしかない」


 マシューへ指示を任せると、アランは魔導士隊の陣営へ駆け戻っていく。何かの策がないか最高魔導士に尋ねるためだろう。



「ーー相分かった。同盟国からの魔導士派遣の手配は、こちらに任せてくれ。それにしても、外部と遮断されている結界内で、どうして魔力を増やせるのか……」

 

ポタルは眉をひそめる。


「まさか、結界から魔力を取り込んでいるのか。そんな馬鹿な」

「どういうことですか」


 ポタルの様子に尋常でないものを感じ、アランの声がかすれる。


「人の魔力は魔界の生き物には取り込めない。できるとすれば、奴は……人間だ」


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