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赤い眼の魔導士  作者:
本編
1/16

プロローグ

 王都より馬で半月の平野の果てに、魔獣が現れたとの知らせが入ったのは三月程前のことだった。魔導士らによれば、それは新たな「魔王」が生み出しているものらしい。

 数百年ぶりの有事に、王宮内は緊張感に包まれる。

 早急に魔王討伐隊が編成され、ひそかに王都を発つこととなる。100人あまりの隊をまとめる参謀長を務めるのは、若くして王宮参謀筆頭まで上り詰めた、「鉄面皮のアラン参謀」と呼ばれる男。

 出立の日、いつもの演習と変わらないそぶりで都を後にする一行を、ごく親しい者達のみが沈痛な面持ちで見送る。


 参謀長の右方を進んでいた魔導士は、彼の手綱を持つ手がピクリと動いたことに気づき顔を上げた。

 漆黒の瞳、漆黒の髪、いつも華美とは真逆の黒ずくめの服に身を包み、ほとんど無表情で得体のしれないこの男が、ほんの少しその瞳を動かし、微かに顔をゆがめるのを目撃し、驚いて目線の先に目をやれば、質素な服にひとつむすびの、素朴な町娘が立ち尽くしている。

 何だよ、鉄面皮もすみに置けないなあ。思わずニヤニヤと二人の様子を眺めていると、突然町娘が何かを投げてよこした。頼りなく雑踏に落ちそうになるそれを、魔導士は素早く巻き上げ参謀長の手元へ送り込んだ。

 無表情のまま、漆黒の瞳が、最大限の謝意を伝える。受け取った紙玉を大事そうに胸元にしまい、彼はそのまま一度も振り返らずに、王都を後にした。

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