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ドラゴンの守護者  作者: おとしんくるす


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34 激闘

 ルナールが二度目の火属性魔法を発動させ、再び爆風が辺りを吹き抜けていく。


 だが、今度は爆発点の真空を埋めるべく風が逆流をはじめても、エメリーは防壁を解こうとしなかった。


「一度通じなかった攻撃をなんの工夫もなく繰り返すとは。威力は大したものですが、戦術は素人しろうとですな」


 ……初老の魔法士がそう言い終わらないうちに、ルナールは立て続けに三度目となる巨大な火属性魔法を発動させた。


「クオートさん、エルクをお願いします! できるだけわたしの近くにいてください!」


 エメリーはそう叫ぶと、防壁の形をクオート達全体を包む卵状に変化させる。


 クオートが慌てて床に置かれていたエルクを抱き上げてエメリーに寄り添うと、爆風が吹き抜けるのと同時に地鳴りのような音が響き、体がふわりと宙に浮くような感覚に襲われた


「わわっ!」


 クオートは一瞬、防壁ごと爆風に飛ばされたのかと思ったが、感覚的には飛んでいるのではなく落ちている。

 頑丈な石造りの建物が、三度の大爆発に耐えきれずに崩落したのだ。


 エメリーが懸命に維持してくれている岩壁いわかべの外から、瓦礫がれきがぶつかりあう激しい音が聞こえてくる。



 ……一際大きい落下の衝撃がきてしばらく。エメリーが岩壁を消すと、建物の一部が大きく崩れ、辺りは瓦礫の山と化していた。

 クオートはエメリーとエルクの無事を確認し、砂煙を透かして辺りを見回す。


「あ、保護官ちょ……ぅ……」


 ルナールの姿を認めたクオートの安堵あんどの声が、尻切れ気味に小さくなる。

 ……ルナールが手にした剣が、真っ赤な血に塗れているのを見たからだ。


 ルナールが見下ろす足元には、さっきエメリーを襲おうとした魔法士の一人が、服を血に染めて倒れていた。


「くそっ!」


 もう一人の魔法士が慌てた様子でルナールから距離をとり、公爵達の元へと戻る。

 公爵は重厚な装飾を施された杖を持ち、三人の護衛に囲まれて健在だった。


 逃げた魔法士が合流し、公爵の護衛は四人になる。

 リーダー格の、初老の魔法士が口を開いた。


「まさか建物ごと破壊するとはな……だがそんな奇策に乗じて一人を倒した所で、多人数を相手に広い場所での戦闘は、逆に不利と言うものじゃぞ」


 その口調は平静を装ってはいるが、さすがに表情には動揺が感じられる。


「机の下の隠し階段から、いつでも逃げられるようでは困るからな」


 ルナールの言葉に、公爵の眉がピクリと動く。


「私も以前ここに住んでいたのだ、知らないとでも思ったか?」


 ルナールは冷たさと酷薄こくはくさを湛えた表情で、公爵の方へと歩を進める。


「くっ……、なにをしている! さっさと奴を捕らえろ!」


 初めて動揺を見せた公爵の命令で、魔法士一人を残して三人がルナールを囲むように散った。

 しかしルナールは視線でそれを追うだけで、足を止めようとはしない。


「ルナールさん! クラウゼンさんを確保しました!」


 突然響くエメリーの声。

 さっきまでクオートの隣にいたエメリーは、全員の注目がルナールに集中する間にクラウゼン老人の確保に動いていたらしい。


 クラウゼン老人に怪我がない所を見ると、二人のうちどちらかが魔法で守っていたのだろう。

 同時に二つの魔法を展開するのはかなりの高等技術なので、ルナールだろうか?


 そしてエメリーの声を合図に、ルナールは強く地面を蹴った。


 弓使いの男がルナールめがけて矢を放つが、エメリーが発動させた土属性魔法によって止められてしまう。

 エメリーを信頼してかルナールは防御度外視で、一直線に弓使いの男に向かう。


 ――辺りに響く、剣と剣がぶつかる鋭い音。


 ルナールの剣は男の弓を真っ二つにし、そのまま喉元に迫った所で、横から突き出された別の剣に止められていた。

 剣術の特級練士だという男が、ルナールに正対して構えをとる。


 弓使いの男はものすごい速さで喉元をかすめた剣先に、腰が抜けたようになってその場にへたりこんでしまう。その首からは、一筋の血が流れていた。


 ルナールはそれを一瞥いちべつし。武器を失った相手に戦意がない事を確認すると、視線を剣士へと集中する。

 剣士は相手の実力を量るように、間合いを保ったまま動こうとしない……。


 と、魔法士の一人が少し離れた場所から氷属性の魔法を発動させる。

 馬車一台分ほどもある巨大な氷の塊が、高速でルナールめがけて飛翔していく。


 ──甲高くて澄んだ音が響いたのが一瞬。続いて、激しい衝撃音が辺りにとどろく。


 氷の塊はルナールの手前に出現した岩の壁に当たって砕け、粉々の破片となって周囲に降り注いだ。


 夏の強い陽射しを反射してキラキラと輝く無数の破片は幻想的で、ここが戦いの場でなければ、さぞ美しく見えた事だろう。


 ……しかし、今はそんな事に気を取られている場合ではなかった。


 魔法士の攻撃は全てエメリーが防いでいるので、ルナールと剣士は事実上一対一の戦いとなる。

 道中二人で練習していたのは、この連携だったのだろう。


 ルナールはすでに、三度も最大威力で火属性魔法を使っている。まだ余裕はあるようだが、これ以上の魔力消費は運動能力の低下にも繋がりかねない。


 魔法士からの攻撃に対する防御をエメリーに任せられるのは、集中力を絞れる事も含めてずいぶんと大きいだろう。


 …………。


 クオート達が息を飲んで見守る中、ジリジリと間合いを詰めていたルナールが、不意に大きく動く。


 ルナールが地面を蹴ると、五~六エーメルはあった間隔が一瞬でなくなり。瞬く間に剣のぶつかる音がし、四・五回火花が散る。


 高速で移動しながら剣を交える二人に、敵の魔法士がルナールの動きを鈍らせようと、水属性魔法を放つ。


 水属性魔法は威力には欠けるものの、複雑な動きをさせる事ができるので、防ぐのは難しい。


 だが、エメリーの操る岩壁は複雑な軌道を描く水の帯をピンポイントで正確に受け止めた。

 公爵が用意した有能な魔法士相手に、集中力と魔力を操る技術においていささかも引けをとっていない。


「くそっ!」


 魔法士の男は水属性魔法を諦めたかと思うと、雷属性魔法を発動させる。

 ――しかし、今度の目標はルナールではなくエメリーだった。


「あっ!」


 ルナールの方に気をとられていたエメリーは、不意を突かれた形になって防御が一瞬遅れてしまう。


「危ない!」


 防御魔法を使う間もなく、クオートはエメリーに跳びついた。


 雷の爆発で数エーメルほど吹き飛ばされたが、なんとか直撃は回避できたようで大きなダメージはない。後ろに寝かせてあるクラウゼン老人も無事だ。


「ありがとうございます。クオートさん」


 エメリーはそう礼を言って立ち上がり、魔法士をにらむ。

 さすがにもう同じ手は通用しないと判断したらしく、二人は睨み合いの膠着こうちゃく状態へと突入した。


 ルナールはと見れば。大きく切り払ったルナールの剣先を男がかわし、距離をとった所だった。


 互いに無傷ではあるが、男の方は明らかに息があがっている。


「……やむをえん。あれを使え」


 劣勢を見てとった公爵が、かたわらにいる初老の魔法士に指示を出す。


 魔法士はうなずくと、ふところから小瓶を取り出して剣士と別の魔法士に投げ。受け取った二人が、それを一息に飲み干した。


「──気をつけろエメリー、魔法薬だ!」



 表情を変えたルナールが叫ぶと同時に。剣士が今までとは桁違いの速さで、ルナールめがけて斬りかかってくる……。

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