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 第2ポッドへと向かう輸送船の中。


「そうですか。佐々くんが」羅衣

「彼の目は死の間際まで生きていた。立派な男だった」天源

「避難区域に入るのがもう少し遅かったら、会えていたんですね」羅衣

「悔やむでないぞ」天源

「はい」羅衣

「これからどうなるのでしょうか?」乃々

「詩波太と優斗が戦っておる。信じよう」天源

「私たちが足を引っ張らなければいいけど」乃々


 船体が揺れた。第2ポッドに到着したのだ。


「みなさーん!おりてくださいぃ」円土

「ここは第2ポッドだな?出不刀に会わせろ」天源

「だから。お前にそんなことを言う資格、無いんだよぉ」円土

「くっ」天源

「円土閣下、お手伝いいたします」男

「お前なんかが俺に話しかけてんじゃねぇよぉ」円土


 円土の部下らしき男の首が飛んだ。


「キャッーー!」史由江

「おヒョヒョーゥ!!良い!良い!良い声だぁ」円土


 円土が避難船の中に入ってきた。近くづくとその背の高さに奇妙さを覚える。


「今の、あなたですね?」円土

「は、はい」史由江

「来なさいぃ。たぁーのしみだぁ!」円土


 史由江ひとりが先に下ろされた。


「比絵豆くん!あと、頼むよぉ。私はお楽しみタイムですぅ」円土

「お任せを!」比絵豆


 円土と史由江が去ると、比絵豆とその仲間が天源たちに手錠をかけて連行した。




 第3ポッドの壁外は固い警戒態勢が敷かれていた。


「これはなかなか」詩波太

「後回しにしましょう」優斗

「そうだな。目的は出不刀とやらだ」詩波太

「しかし、作業用ジェットでは直接第2ポッドには行けません」優斗

「第3ポッドでこの警備だ。第2ポッドはより固いだろう」詩波太

「となると、侵入はできないでしょう」優斗

「では、”密輸”してもらうしかないだろう」詩波太

「第7か第8ポッドですか?」優斗

「鬼が出るか蛇が出るか。それでも」詩波太

「行くしかない、ですね」優斗


 ふたりは第4ポッドの船留口に向かった。


「皆が頑張っているおかげか、誰もいないな」詩波太

「非道な奴らですが、逃げ出さないことだけは褒めてもいい」優斗

「小型でいい。あれを貰おう」詩波太


 ふたりは船に乗って、再び第4ポッドを離れた。向かうは第7ポッド、造船所だけのポッドである。


「学校の見学で来た以来だ」詩波太

「僕もです。右も左も分かりません」優斗

「顔なじみがいる。そいつに会おう」詩波太

「はい」優斗




 第7ポッドに着いたが、常時と変わらぬ様子だ。隣の第6ポッドが壊滅したことなど知らないかのようだ。

 ふたりは斧を背の服の中に隠して、入っていった。


「珍しいな。誰のお客さんだい?」工夫

「やぁ、第6の背矢伍はどこかな?」詩波太

「あぁ、あいつか。何の用だい?」工夫

「後輩が挨拶したいと」詩波太

「こんにちは」優斗

「工夫になるにしちゃ、ヤワなんじゃないか?名前は?」工夫

「イトラです」優斗

「付いてきな」工夫


 すぐ近くだった。


「久しぶりじゃないか!!」背矢伍

「あぁ!!元気だったか?」詩波太

「もちろんさ!ここは天国だぞ!新作をつくったら、また新作を作るんだ!たまにしか売れないけどな。売れない船は解体するだけだし、損にもならねぇ!」背矢伍

「案内ありがとう」詩波太

「お安い御用さ。ごゆっくり」工夫


 工夫は軽い足どりで戻っていった。


「良い奴だろ?皆そうなんだ」背矢伍

「背矢伍、迷惑はかけない。何も訊かずに教えてくれ」詩波太

「おいおい、エリートくん。そんなに焦っちゃ良いことはできないぜ」背矢伍

「教えてくれ、第2ポッドに行きたいんだ。誰にもバレずに」詩波太

「なんであんなところに?良いこと聞かないぜ」背矢伍

「話せば長くなる」詩波太

「久しぶりに会ったんだ。ゆっくり聞かせてくれよ?」背矢伍

「残念だが、また今度だ」詩波太

「何かあるな?」背矢伍

「あぁ」詩波太

「2番から出る船に乗れ。メインエンジンの横に1立方メートルの空間がある。俺たちのお遊びで作った隠し箱さ。ボンベを忘れるなよ」背矢伍

「ありがとう。必ずまた来るよ」詩波太

「絶対だぞ。本当は暇なんだ」背矢伍




 ふたりは背矢伍を信じて船の隠し空間に忍び込んだ。


「狭いな」詩波太

「斧が邪魔です」優斗

「我慢か」詩波太




 船は出発したのち、しばらくして止まった。


「早くないか?」詩波太

「第2ポッドではないのでしょう」優斗

「ゆっくり出てみよう」詩波太


 そこは第8ポッド、技術研究所だった。乗員が皆降りていく。


「しまった。あいつ間違えたな」詩波太

「背矢伍さんは酔っぱらっていたんじゃ」優斗

「あいつは飲兵衛だ。忘れていたよ」詩波太

「別の船が第2ポッドに行くかもしれません」優斗

「探そう」詩波太




 ふたりは第8ポッドに侵入した。

 ある部屋の前を通りかかったときだった。中から声が聞こえる。


「娘は?娘は元気なんだな!?」家奈

「変だ。こんなところに所長が?」詩波太

「安心しな。オレの要求に応えてくれれば、お前の娘は無事だ」洋狗

「わかっている。爆発物の次は何だ?何を作ればいい?」家奈

「体だ。出不刀様は若い体を求めている」洋狗

「若い奴隷ならたくさんいるんじゃないのか?」家奈

「鈍いな。出不刀様の寿命を延ばすために新たな体を用意せよと言っているんだ」洋狗

「そんなの無理だ」家奈

「知っているんだぞ。まあいい。無理なら娘は諦めるんだな」洋狗

「やめてくれ!作るから!必ず作るから」家奈

「休むなよ。常にお前を見ているからな」洋狗


 部屋から異様な者が出て行った。隠れていたふたりは部屋に入った。


「所長!いったい何があったんですか?」詩波太

「詩波太くん!?聞いていたのかい?それにたしか、優斗くんだね?」家奈

「はい。話してくれませんか?」詩波太

「秘密にしてくれよ」家奈

「もちろんです」優斗

「じつは、娘の羽早が第2ポッドに住んでいるんだ。出不刀のやつ、娘を人質にして要求するんだ。この前は爆弾を作った。その前は毒ガスだ。凶器を作らせられたこともある」家奈

「それで、今の男はいったい?」詩波太

「あいつは洋狗といって、出不刀の懐刀さ」家奈

「フード、佐々の言っていた男かもしれません」優斗

「行こう」詩波太

「何をする気だい?」家奈

「あいつを人質にとります」優斗

「そしたら出不刀を沈め、平和と秩序を取り戻します」詩波太

「たったふたりでか?」家奈

「皆、殺されたんです」優斗

「いや、君たちならば」家奈

「必ず果たして見せます」詩波太

「ちょっと待ちなさい。私も脅されっぱなしで終わる気はないんだ。ただ、ひとりではできなかった。私にも手伝わせてくれないか?」家奈

「あなたじゃ足手まといだ」優斗

「何か計画でも?」詩波太

「私には強い体はない。だから、武器を作ったんだ。いつか死ぬ覚悟で暴れてやるつもりだった」家奈

「僕たちは死ぬ気なんてありませんよ」詩波太

「生身だけじゃ、いくら君たちでも、敵が多すぎるよ。付いて来たまえ」家奈




 さんにんは部屋を出た。

 誰にも会わぬよう、気をつけて進んだ。


「ここだ」家奈

「これは?」優斗

「おもちゃではないのでしょうが、何ができると?」詩波太

「百人力いや、千人力だ。50秒あればポッドすらも破壊できる計算だ。名付けてゼット。終わりという意味だ」家奈

「使い方は歩きながら」優斗


 さんにんは船留口に向かった。


「腕にはめて使う」家奈

「こうですか?」優斗

「やめるんだ!実際に打つのは最小限にしなければ。エネルギーがすぐに切れてしまう」家奈

「わかりました」詩波太

「充填したエネルギーを100としよう。単発で打ち込めば1発で1の消耗。連発にすればビーム状になり、1秒で2の消耗。最大で50秒連続で打てる。単発には3種類あって、さっき言ったのは小弾。あと中弾と全弾がある。中弾は小弾の10倍。全弾は残りのエネルギーを全て使う。射程距離は200メートルだ。うまく使ってくれ。全部で5つある。いくつ要るか?」家奈

「1つで十分です」優斗

「僕も1つで。護身に使ってください」詩波太

「わかった。洋狗はすでに出たようだ。この船が次の第2ポッド行きだが、まさか正面から乗り込むつもりかい?」家奈

「もちろん、紛れ込むつもりです」

「船底に隠れます」詩波太

「そうかい。それでは私は堂々と行って、囮になるよ。万が一のことがあったら、羽早のことをよろしく頼みます」家奈

「ご武運を」優斗

「またお会いしましょう」詩波太




 家奈は客席につき、優斗と詩波太は隠し箱に入った。


「やはり狭いな。所長の発明品が小さくてよかった」詩波太

「しかし、背矢伍さんの言ったことは嘘じゃなかったですね」優斗

「疑ったことを謝らないと」詩波太

「気になることがあります」優斗

「なんだ?」詩波太

「所長は本当に信じていいんでしょうか?娘と引き替えに私たちを差し出すつもりなんじゃ?」優斗

「あの目は信用できる。僕たちをはめる気はないさ」詩波太

「僕にはわかりません。警務官の勘ですか?」優斗

「いや、父親だからさ」詩波太

「やっぱり、わかりません」優斗

「気づいていないだけさ。君も、妹の羅衣ちゃんのことになると同じ目になっているぞ」詩波太

「まだまだ学ぶことが多いようです」優斗


 さんにんを乗せた輸送船は定刻通りに出発した。




 第2ポッドでは、羅衣と乃々、季理と寿亜、天源たちの3組に分けられていた。


「お姉さん。私、怖い」羅衣

「大丈夫よ。優斗さんが必ず助けに来てくれるわ」乃々

「信じてるのね。お兄ちゃんは幸せ者ね」羅衣

「愛してるっていうのよ。羅衣ちゃんのことも愛してるわ」乃々

「ありがとう。抱きしめてもいい?」羅衣

「いいわよ」乃々

「おーやおやおや。これはこれは、美しいですねぇ。私の趣味には合いませんが」円土

「ひゃっ!」羅衣

「大丈夫よ。私がいるわ」乃々

「出てきなさいぃ」円土

「史由江さんはどうなったの?」乃々

「他人のことを気にする余裕があるんですねぇ?」円土

「私たちをどうする気?」乃々

「あの女なら捨てましたぁ。たぁっぷり楽しませてもらったので、感謝してますぅ」円土

「捨てた?」羅衣

「はいぃ。今はもう、どこかで飼ってもらっているんじゃないかなぁ。いい女だったから高値がついたでしょうねぇ」円土

「羅衣ちゃん。耳をかしちゃだめ」乃々

「頭がおかしくなっちゃいそう。ダメ。お兄ちゃん」羅衣

「はーい。行きますよぉ」円土




 第2ポッド進入経路は輸送船団で渋滞していた。


「どうしたんだろう。メインエンジンは停止したが、着いた気配はしない」優斗

「おかしい。覗いてみるか」詩波太

「聞こえるかい?詩波太くん。優斗くん」家奈

「所長!?どこから声が?」詩波太

「詩波太くん。聞こえるか?家奈だ。ゼットを通して話している」家奈

「こんな機能まであるのか。どうしましたか?」詩波太

「渋滞だ。どうやら第2ポッドに人が集まってきているようだ。全く動きそうにない」家奈

「まずいな。邪魔が増える」詩波太

「もう出るしか」優斗

「もう少しで検問所を通過する。それまで待つんだ」家奈

「わかりました」詩波太


 ふたりが隠れている輸送船に警備員が乗り込んだ。


「皆さん、ようこそ!第2ポッドへ」警備員

「まだ入れないのか!?」乗客

「ご安心を!この船は定期便ですから、遅れるわけにはいきません。従って優先してお通り頂きます」警備

「だったら早くしてくれよ」乗客

「皆さん、本日の大イベントにお越しかと思います。メインイベントには必ず間に合いますので、ごゆっくりお待ち下さい」警備員


「詩波太くん。聞いていたかい?」家奈

「はい」詩波太

「通信はここまでだ。栄光あれ」家奈

「栄光あれ」詩波太

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