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 そのころ第5ポッドの壁外には、二人の男がいた。


「第6ポッドに反乱を引き起こした者も、こんなことをしたのだろうか」詩波太

「異常ですね。こんなこと」優斗

「警務部長としては不覚だった。まさかこんなことを考える奴がいるとは思いもしなかった。全て僕の責任だ」詩波太

「否定はしません」優斗

「せめて一矢報いねば」詩波太

「焦らないでください」優斗

「あぁ、そうだな」詩波太

「この辺りだと思うのですが」優斗

「これじゃないか?」詩波太

「まさか廃棄孔に入ることがあるとは」優斗




 ふたりは孔に入って、手探りで進んだ。

 何も見えないが、通信は生きていた。


「ありました。ゴムです。おそらく弁でしょう」優斗

「気圧差による噴出に気をつけるんだ」詩波太

「はい」優斗


 ゴム製の弁はかなり大きいがために、人間大の隙間は問題にならなかった。


「設計の段階で侵入できるようにしていたとは考えたくないな」詩波太

「誰か来ます」優斗


 ふたりはゴミの中に身を潜めた。


「早くしろよっ!お前らも捨てるぞ」男

「喜べ!捨てる前にしっかり切り刻んでやるよ」男

「すみません。急ぎますので」男たち


「見えるか?」詩波太

「はい。腕に”5”と書いてあります。おそらく第5ポッドの民ですね。奴隷にされたか」優斗

「天源さんの言った通りか」詩波太

「想定通りは歓迎ですが、やっぱりできることならば、、、」優斗

「僕に任せるんだ。優斗はサポートしてくれればいい」詩波太

「罪を一人で背負うことないです。もう躊躇しません」優斗

「そうか。心強いよ」詩波太

「奴隷を解放し、味方になってもらう。きっとうまくいきます」優斗




 ふたりは夜を待ち、暗くなってから行動した。


「あれは?」詩波太

「どうやら政会本部の建物だったようですね」優斗

「あいつらは第2ポッドの者だな」詩波太

「くそっ!なんてことを」優斗


 裸の若い女たちが首輪で柱に繋がれている。


「こうしてはおれん。急がなくては皆が」詩波太

「焦ってはなりません」優斗

「裏口に回ろう」詩波太

「2階から始めましょう」優斗

「声を上げさせないように」詩波太




 ふたりは明かりの点いていない部屋に忍び込んだ。


「足音です。ひとり」優斗

「行くぞ」詩波太


 足音が通り過ぎると、優斗は扉を静かに開いた。

 ナイフを手に詩波太が後ろから近づき、喉をかき切った。

 死体を部屋に入れたが、血痕が廊下に残る。


「時間勝負だ。押し切るぞ」詩波太

「やります」優斗

「すまない」詩波太


 ふたりの暗殺は鮮やかと言えば適当なのかもしれない。


「この館には8人か」詩波太

「町の様子からして、人口は第6の半分。500人くらいでしょう」

「住民の半分は連行されたもしくは殺されただろう。250人の奴隷を服従させるなら、100人は必要か?」詩波太

「夜のうちに」優斗

「そうだな」詩波太




 基本的な町の構造は第6ポッドと同じだった。

 闇に潜み、感情さえも無くした。ふたりは風が吹くかのように殺していった。

 大量の血を浴びたことを自覚したのは朝が来てからだった。


「第5ポッドの皆さん!第6ポッドから来ました。このポッドは皆さんのものです。反撃してください。もう奴隷ではありません!」詩波太


 ふたりは第5ポッドの民の奮起を呼び、徹底的に町から蹂躙者を排除していった。


「お前らぁ!よくもよくも!!俺の家族を」男

「うるせぇよ」町人

「お前たちの罪を思い知らせてやる」町人

「ハッ―――!!奴隷は奴隷なんだよ!」男


 男はポケットからボタンを取り出して、高らかに掲げ、押した。


「まずい。皆、避難船へ!!」詩波太

「まさか」優斗




 ポッドのいたる所で爆発が起き、町は火に包まれた。


「このポッドもダメか」優斗

「ナイフでは限界があるな」詩波太

「しかし、後戻りは出来ません」優斗

「このまま第4ポッドに行こう」詩波太

「ちょっとお待ちなさい」男

「時間が無いんだ」詩波太

「少しでいいから」男

「何でしょう?」詩波太

「我々を救ってくれてありがとう。ポッドは壊れてしまったが、どのみち未来はなかった。ありがとう」男

「詳しいことが知りたいのですが、何が起きているのか知っていますか?」優斗

「ある日突然政会会長が亡くなったことから始まりました。会長候補者は3人いたのですが、3人もほぼ同時に死にました。その後、居場所をなくしていた不良のひとりがなぜか会長になったんです。その日からです。第2ポッドの船団が来たと思えば、町を奪われ、奴隷にされました。多くの者が家族を奪われました」男

「そういうことが聞きたいのではない!!」詩波太

「会長!落ち着いてください」優斗

「あいつらの計画について知りたい」詩波太

「それは、わかりません」男

「もういい。時間が無いんだ」詩波太




 ふたりは窓の外に第6ポッドの避難船を曳航する輸送船を見つけ、急いで船外に出た。


「季理、寿亜、、」詩波太

「急ぎましょう」優斗


 ポッド間は直線距離にして約100キロメートル。宇宙服に作業用ジェットで飛べば、目視では見つけられない。




 ふたりは再び廃棄孔から第4ポッドに侵入した。


「詩波太さん。第5の人達は」優斗

「あぁ、第2のやつらに連行されるだろうな」詩波太

「必要なければ」優斗

「あぁ、殺されるだろう」詩波太

「夜を待っていられません」優斗

「ああ、主電源を狙うぞ。送電を止めるんだ」詩波太


 ふたりの服は血に染まっていた。泥を上塗りした。


「作戦があります」優斗

「何だ?」詩波太

「先に囚われた住民を解放しましょう。混乱を起こせば警備を分散できるでしょう?」優斗

「それでいこう。これだから僕は警備部長になるのを何度も断ったんだ」詩波太

「住民に寄り添う警備もなかなか難しいと思います」優斗

「ありがと。まずは」詩波太

「町外れの大きな建物から」優斗




 コテージが間隔を空けて並んでいる。

 ふたりは片っ端から襲った。

 鍵がかかっていれば蹴破った。奴隷以外は分別なく殺した。


「ありがとう」元奴隷

「このポッドを救いたい」詩波太

「力を貸してほしい」優斗

「もちろんだ!何をしよう」元奴隷

「皆を解放するんだ」詩波太

「わかった」元奴隷

「では急いで!」優斗

「その前に、服を着替えなさい」元奴隷

「ありがとう」優斗


 ふたりは服を受け取った。


「これで目立たずに近づける」詩波太

「たしか、あいつらの拠点はここだ」元奴隷


 詩波太は地図を受け取った。


「あいつらはポッド全体に爆弾を仕掛けている」優斗

「なんだと!?」元奴隷

「護るためには、躊躇ってはならない」優斗

「、、、わかった」元奴隷




 ふたりは町の中心部を通って、発電部を目指した。


「彼らにできるだろうか?」詩波太

「やらなければ、ここも落ちてしまいます」優斗

「僕たちも、やるしかないな」詩波太

「はい」優斗




 途中の家々には構わなかった。


「さすがに警備が固いな」詩波太

「引き付けます」優斗


 優斗は、少し離れた物陰に隠れて声を上げた。


「た、助けてくれー!!誰か!助けて!」優斗


 警備の者たちは一斉に声のする方を睨んだ。


「お前は残れ」警備員

「はっ!」警備員


 5人が駆け出し、ひとりを残し、もうひとりは建物に入っていった。


「5人ならやれるだろう」詩波太


 詩波太は残った警備員を瞬殺すると、建物に侵入した。


「誰だ!」警備員1

「お前は!?」警備員2

「まとめて相手してやるよ」優斗

「誰なんだ?」警備員3

「怪物。無差別級の影の絶対王者だ」警備員2

「ほう、そんな風に呼ばれているのか、俺は」優斗

「ひ弱な青年にしか見えないが」警備員4

「か、勘弁してくれよ」警備員2


 ひとりは腰が抜けて膝をついた。


「おっ、おい」警備員1

「俺がやる」警備員5

「でかぶつ」優斗

「この前の大会じゃあ、直前で棄権しやがって!」警備員5


 一瞬だった。警備員5の鋭い一閃は空を切り、優斗のナイフは顎から真っ直ぐに突き上げられた。


「うっ」警備員4

「や、やめ、やめてくれ!!」警備員2

「うるさいよ」優斗


 怖じ気づいた人間ほど弱い者はいない。5つの遺体に無駄な傷はひとつも無かった。

 優斗が正面口に戻ると、ちょうど詩波太も出てきた。


「早かったですね」優斗

「まだこれからだ」詩波太


 町のほうに煙が見える。すぐに移動する。




 中心部に来ると、たくさんの死体の向こうで、ひとりの大男が暴れていた。


「あいつさえやれば」優斗

「手練れだな」詩波太

「ふたりでかかれば」優斗

「ああ」詩波太




「なんだぁ?お前ら。もしかしてお前らのせいか?電気が止まったのも。奴隷どもが暴れだしたのも?」大男


 両手の斧は血を滴らせているわりに、その刃はくもりなく輝いていた。


「それっ!それっ!」大男


 斧が縦横無尽に宙を舞う。

 サッ!サッ!サッ!ザク

 大男は膝をつき、前のめりに倒れた。即死だった。

 大男の斧捌きは大振りで、隙が多すぎた。

 ふたりは屈んで避け、両脇に入った。アキレス腱から的確に切り刻み、最後は首を半分まで切り込んだ。


「ナイフが駄目に」優斗

「いい斧だな。使い方が悪いわりに、手入れはよくできている」詩波太


 ふたりは斧を頂戴した。


「見ろ。形勢が変わった。こいつが要だったようだ」詩波太

「そのようです」優斗

「ここはもう彼らに任せよう」詩波太

「はい」優斗


 ふたりは荒れ狂う第4ポッドを去った。





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