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吸血鬼のみる夢は  作者: とみ
第0幕 あの頃を振り返る
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イントロダクション

俺はあの頃、もしかしたら退屈していたのかもしれない。


気の合う仲間、かわいい後輩、変わった先生に囲まれ、大きな悩みやトラブルもない、平凡な生活。

周りは就職だの、単位だの、彼女がいるとかいないとか。

自分には無縁に思える悩みで一喜一憂するみんなが、実は羨ましかった。


俺の生活は凪の退屈だった。





わたくしはあの時、繰り返される絶望に慣れていたのでしょう。


大切な約束、繰り返される出会いと別れ、必死の努力の結果は次の輪廻への持ち越し。

平凡とはとても言えない宿命に疲れていました。

しかし、輪廻を続ける以外の選択肢がなかった。

結果を残しても残さなくても、始まってしまう次の生活。


わたくしの生活は凪の絶望でした。










吸血鬼。

民話や伝承で語られる存在で、死人、または不死の存在として描かれる。

生命の根源たる血液を吸い、栄養源とする。

十字架やニンニク、銀製の武器に忌避感を示し、太陽の下にその身を晒すと、身体が灰になってしまう。

様々な話が語り継がれる、伝説上の存在。





俺は吸血鬼という存在に、疑問があった。


「吸血鬼に血を吸われた人間はその眷属、下位の吸血鬼になってしまう。人間を吸血鬼化させる力を持った上位の存在たる吸血鬼を『真祖』と呼ぶ」


では、真祖はどうして真祖になったのか?

自ら望んで? 他者に強いられて仕方なく?


答えの出ない疑問だった。





わたくしは吸血鬼という存在に、疑問を持っていました。


「吸血鬼に血を吸われた人間はその眷属、下位の吸血鬼になってしまう。人間を吸血鬼化させる力を持った上位の存在たる吸血鬼を『真祖』と呼ぶ」


では、真祖でない吸血鬼はどうすれば真祖になれるのか?

強く望めば? 他者に力を与えられてようやく?


答えの出ない疑問でした。





そして俺は


そしてわたくしは


あの夏に理屈ではないひとつの答えを得た。

真祖になるのに必要なのは、きっと、そうしなければならないという強い強い感情だ。


「愛」「憎悪」「悔恨」


その感情が何なのかは、個人差とでも言うべき物で。

でも、きっと、人間の感情は伝説上の存在を生み出すに足る程の強い強いエネルギーを秘めている。




俺が


わたくしが


そう理屈ではなく、信じるようになったあの夏。

これまでの常識を覆す事になった、たった季節1つ分の経験。


あの時、最後にみた夢を


俺は


わたくしは





今でもまだ、覚えている。

連載開始しました。


次は19時過ぎに更新します。

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