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にわめ。

ジャスミンは、あのお茶会の後、お母様に頼みました。

「私、立派な淑女になりたいの。私がそうなれるように、協力してください!」

お母様は嬉しく思い、少し早くからジャスミンに家庭教師を付けることにしました。教材を取り揃え、その一週間後から、ジャスミンの淑女教育が始まったのです。


ジャスミンは、お兄様が勉強をとても嫌がる姿を見てきたので、勉強は凄く凄く大変で、面倒臭くて、楽しくないものだと思い込んでいました。

でも、家庭教師のアリッサ先生が来て、勉強が始まるとジャスミンはそれがただの思い込みであることを知りました。

なぜなら、教科書は本と同じだったのです。

知らないことがたくさん載っている本に、ジャスミンは夢中になり、あっという間に中身を丸暗記してしまいました。アリッサ先生は、ジャスミンの知識欲を嬉しく思い、どんどん新しい教科書を持ってきて教えます。

ジャスミンは、勉強が大好きになりました。


ジャスミンにとって辛かったのは座学より実技でした。

例えばダンス、マナー。

貴族令嬢には必要不可欠なものでしたが、それらを面白いとは思えませんでした。ダンスは途中、先生の足を何度も踏みつけてしまうし、マナーに関しては細かい注意がジャスミンをげんなりさせます。

それでも、何とか学び続け、ジャスミンは無事デビュタントを果たし、お母様から本を読んでもいい、と許可が出ました。


15歳のイベントはデビュタントと、そして、もうひとつありました。それは成人の儀です。

この国では15歳を成人と定め、貴族はデビュタントの夜にその儀式を行います。


お母様から無事、本を読んでいいとのお達しが出てご満悦だったジャスミン。成人の儀は、殆どの人にとって大したことの無いものです。堅苦しい雰囲気の中、成人が認められ、それでお終い。ジャスミンは、早く式が終わらないかな、と思っていました。


さて、話は変わりますが、ジャスミンの住む国には学校があります。

しかしそこは、みんなが行けるところではありません。

基礎学力をつけるためには、貴族は、家庭教師をつけるのが一般的ですし、平民は、家族から教えてもらうのが普通だったので、みんながいけなくても問題は無いのですが。

では、何を学ぶのかって?

魔法です。

この世界で、魔法を使えるのは人類全体の1%程で、決して多いとは云えません。その力は敬われ、頼られ、畏れられていました。

力の制御、操り方、そして“正しい”使い方。それらを学ぶために学校は各国々に建てられたのです。


話は戻りますが、成人の儀は、魔法の適性について見るのが1番の目的です。魔法の適性は、魔法石と云う石に、ある呪文を唱えることで、その石に何か変化が起こるかどうかで分かるのです。貴族も平民も、この儀式は国からの義務として、必ず行わなければなりませんでした。


ジャスミンは、本のことを考えながら、予め覚えていた呪文を唱えます。

「精霊よ、我に力を与えたまえ。」

普通は、これで、何も起きず、平和に一日は終わっていきます。でも、ジャスミンは不運なことに、違いました。

“パキ”

ジャスミン以外のみんなは魔法石を見つめます。ジャスミンは、気が付かず、なんの本を最初に読もうか考え込んでいます。

“ジュっ”

「最初はやっぱり純文学かしら。それとも、ミステリ?嗚呼、恋愛ものも捨てがたい!うーん。」

“ぽとり”

「あ!お母様に取り上げられた本、まだ読み終えていなかったんだわ!あれから読むべきね!でも、もう十年も経ったんだもの。最初から読まないと内容がわからないかもしれないわ。」

“ピカ”

「もう!待ちきれない!早く終わらないかしら!」

ジャスミンは、呟くのをやめ、目の前の石を見ました。なんにも変わらないでそこにあるはずの魔法石を。

“キラキラ”

その石は、割れて、燃えて、濡れて、光って、輝いていました。


「な、なんだと!五属性持ち!?」

「王族でさえ二属性だと云うのに!?」

「ここの家系は魔法持ちが居ないんじゃないのか!」

「地、火、水、雷、天の属性が一気になんて、初めて見るぞ!」

「天才だ!」


ジャスミンは、騒がしさに気が付き、魔法石を確認した途端、顔が引き攣るのを感じました。

「え、嘘。」


魔法持ちは、学校に通うことが義務付けられていたのです。

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