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prologue

「ジャスミン。これは、絵本、と云うのよ。」

「あうあー」

ジャスミンはその小さなお手手を絵本に伸ばしました。

それを見たお母様は、柔らかく微笑みます。

「貴方は玩具に興味を示さないから、どうしようかと思っていたのだけれど、良かったわ。やっと気に入りそうなものが見つかったのね。」

そう云うと、お母様は絵本を開きました。


「あるところに、ミランダといううつくしいおんなのこがすんでいました。

ミランダはおさないころにおとうさまとおかあさまがしんでから、いじわるなおじさまにこきつかわれていました。

けれど、ミランダはふしあわせではありませんでした。

なぜなら、ほんがあったからです。

しょさいのかたづけをめいれいされるたびに、ミランダはがんばってはやくおわらせることでほんをよむじかんをつくっていました。

ほんのなかでは、ミランダはじゆうでした。

そらをとぶこともできたし、いきものとおしゃべりもできました。

それに、やさしいかぞくもいました。

あるひ、ミランダがおんしつのそうじをしていると、おとこのこがはなしかけてきました。

『ぼくはケニー。きみのなまえは?』

ケニーはきぞくのかっこうをしていました。

ミランダはほんでよんだとおり、しつれいのないように、ていねいにこたえました。

『わたくしは、ミランダともうします。』

『ミランダ。すこしぼくとおはなししよう。』

ミランダはうなずきました。

『ミランダのすきなものはなに?』

『ほんがすきです。』

『なぜ?』

『ほんのなかでは、じゆうになれるからです。』

『ミランダのしっているおはなしをひとつきかせて。』

ミランダははなしました。

それをケニーはあいづちをうちながらしんけんにききました。

はなしおえると、ケニーはほほえみ、『またこんど。』といって、どこかにいってしまいました。

ひとつきほどたって、おじさまのおやしきに、おうけのばしゃがとまりました。

ミランダはそれをかげからこっそりながめていました。

おじさまは、きんちょうしながら、ばしゃからおりてくるひとをまっていました。

ミランダはおどろきました。

ばしゃからおりてきたのは、ケニーだったのです。

『おうじさま、なんのごようでしょうか?』

おじさまは、ききました。

『ミランダにあわせてくれ。』

『そんなむすめはいません。』

おじさまはうそをつきました。

『いや、いるはずだ。ミランダ。でてきてくれないか。』

ミランダはおずおずとでていきました。

『ミランダ。ぼくとけっこんしてくれないか?』

『わたくしは、きちんとしたきょういくをうけていません。また、れいぎもよくしりません。』

ミランダはじぶんではおうじさまにつりあわないとおもいました。

ケニーはいいました。

『ミランダはとてもかしこい。そして、れいぎもきちんとできている。ほんをたくさんよんだことでさまざまなことがみについたんだ。ぼくは、きみにはじないおとこになりたい。ぼくとけっこんしてください。』

そして、ミランダとケニーはしあわせにくらしました。」


ジャスミンは手を叩いて喜びました。お母様はそれを見て、喜びました。

これが、全ての始まりだったのです。


十数年後。貴族の間である噂が広まっていました。

「グリーン家のご令嬢を知っていて?」

「私、彼女のデビュタントに行きましてよ。」

「まぁ!羨ましいわ。噂に違わず美しいご令嬢でしたの?」

「それは勿論!艶やかなプラチナブロンドに、澄んだコバルトグリーンの瞳。理知的な顔立ちで、きゅっと上がった口角。もう、素晴らしいものでした。」

「とても賢いんでしょう?」

「ええ!家庭教師もたじろぐ程の知識をお持ちですって。」

「どんな方なんでしょう?」

様々な噂が飛び交う、グリーン家のご令嬢。

どんな方なんでしょう?

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