初めての街
第1章 4話目「初めての冒険者登録、獣人だろうと俺の嫁ですけど?」
街の前ではかなりの注目を集めてしまった
そりゃ、街の目の前で騒いだ末にキスして抱き合っていたらそうなるのは当然だろう
俺はそう思い、若干恨めしげに京子を見ると
「ん?どうしたの?凛夜?」
そう言ってあどけない顔でこちらを見るので、何にも言えない
そんな顔を見ていたら咎める気持ちも薄れてきた
まあ、そんなことは置いといて、今は今後どうするかを話し合わなければ
「なあ京子、この後どうする?衣食住とかお金とかがなんもないわけだけど」
そう言って京子に尋ねると
京子は先程のキスが忘れららないのか、上の空な様子で
「ん〜?私は凛夜と一緒ならなんでもいいわよ?」
と答える
まあ俺としては嬉しいことなのだが、結局何も解決しない
だから昔やったRPGの知識を引っ張ってきて
「うーん、まあ俺もお前が一緒ならいいけど、生活するには金が必要だからさ
とりあえず、冒険者ギルドとかある?そこでなら身分をあんまりバラさないで済むだろうし」
と言いながら、京子の頬をムニムニして京子を現実に引き戻す
やっぱり獣人になったせいか、京子の頬は以前より断然プニプニだ
たまんないなと思いながら、京子をムニムニしていると
「なゃにひゅんのょよ!はやきゅひょのてをどょけなひゃい!」
そう言って、京子は抗議しだす
俺は名残惜しいと思いながらも京子の頬から手を離す
「悪い悪い、お前が上の空だったからつい
とりあえず冒険者ギルドに行きたいんだけど、ちゃんとあるよな?この世界にも?」
すると京子はムスッとしながらも
「冒険者ギルド?たぶんこの街にもあるはずよ
この世界には冒険者が沢山いるし」
と答えた
さらに
「でも、冒険者って危険が多いし大丈夫?
もっと、安全に稼ぐ方法もあるんじゃないの?」
そう言って、不安そうな顔をする
でもまあ、俺は一応魔法使えるみたいだしなんとかなるんじゃないだろうか
と言っても、今んとこ使えるのは○ーラ(仮)とバシ○ーラ(仮)しかわかってないけど
「うーん、まあお前の心配は最もだけど、なんか神様が言うには強めに転生してるみたいだから、なんとかなるんじゃねーかな」
これは予想だが、たぶん身体強化とかもしてるはずだ
だから、ある程度の相手なら負けることはないと思う
そのようにテキトーな事を言っている俺を見て
「はあ…、まあ凛夜がそう言うならついて行くけど、無茶だけはやめてね?
ホントに危なくなったら逃げること、私を置いてでもね?まあ、出来ればそれはやめて欲しいけど…」
そう言って、京子は念を押した
ハハ、やっぱり京子は京子のままだ
相変わらず俺を優先するような事を言う
俺は京子を愛おしく思い
「お前が死ぬときは俺が死ぬときだ、どちらか片方が生き残ることはねーよ
俺とお前は一心同体だ、とりあえずこの世界ではな」
そう言って京子の頭を撫でる
前世では病気からは守ることは出来なかったが、この世界は違う
京子に降りかかる危機をどうにかする方法も存在する
ならば、俺が死ぬまでは京子と共に生き、共に困難を乗り越えていこう
するとそれを聞いた京子は青空の下で咲き誇る、ひまわりのような笑顔で頷くのであった
「冒険者ギルドへようこそ!冒険者登録ですか?それともクエストの受注ですか?」
そう言って、ギルドの受付嬢は笑顔を振りまく
まあ、可愛い人だけど、京子の方が断然可愛い
そんな嫁贔屓を心の中でしながらも
「あー、冒険者登録の方です
この街にも初めて訪れたので、色々教えてもらえたら嬉しいです」
と答えた
すると受付嬢は
「あっ、そうなんですね。ではギルド登録より先に簡単に街のことをお伝えいたしますね?
この街は始まりの街と言いまして、初心者の冒険者の方々が大半の街となっております
そして、この街の主要な場所はここ冒険者ギルドと旅人達の宿屋兼食事処と武器防具屋の3つの場所です
以上でこの街についての大まかな説明になります
何か疑問点などはありますか?
ああ、後申し遅れましたが、私はこのギルドの受付をしておりますエルザと申します」
と丁寧に説明してくれた
なるほどこの街は始まりの街なのか、ていうか2回目に来た街が始まりの街かよ…
などと考えながらも
「丁寧にありがとうございます。エルザさん
それで俺らはお金が無くて、報酬はどのクエストでどれくらい貰えるものなんですかね?
それでどれくらいのクエストで宿屋に泊まれて、ご飯が食べれるかみたいな目安も教えてもらえますか?」
出来れば簡単なクエストでも宿に泊まれるくらいの報酬は欲しいところだ
ある程度の危険なら値段次第では受けるつもりであった
「そうですねー、あまり難易度の高いクエストは初心者が多い街なのでありませんが、討伐クエストなどはある程度高い報酬が支払われていますよ
大体目安としては、採取系クエスト2回で1日分の宿泊とお食事、討伐系クエスト1回で2日分の宿泊とお食事というような価格設定になっております」
受付嬢ことエルザさんは笑顔のまま丁寧に教えてくれた
ふーん、なるほどこの世界は魔法が珍しいだけあって、魔物を倒すにはそれだけリスクが高いから、討伐クエストの報酬が高く設定されてるんだな
初めはリスク回避のため、採取系の方から始めた方がいいかもしれない
京子も一緒にいることだしな
そう思いながら京子を見ると、なぜか居心地悪そうにしている
なぜだろうと思いつつも、とりあえず冒険者登録の方を済ませないと思い
「すいません、色々教えてもらってありがとうございます
それで俺達冒険者登録したいんですけど、何か登録手順とかありますか?」
俺はそう言って、自分と京子を示すと
「大変申し訳ございません、人間であるあなたの冒険者登録は可能ではございますが、そちらの獣人の方の登録はご遠慮ください」
そう言って、京子の方はあまり見ずにこちらに目線を合わせてきた
俺は言われたことが納得いかず声を上げようとすると
京子は手で制して
俺にだけ聞こえる声で
「…、大丈夫、大丈夫だから
凛夜だけでも登録して?」
そう言って俯きながら、ボロボロのスカートの布を握りしめた
俺は当然納得いかなかったが、京子の絞り出すように出した言葉には逆らうことは出来ず
俺1人分の登録をしたのであった
「ちっ!胸糞悪いぜ
何が獣人だよ、人間と何も変わらねーじゃねーか
しかもこんな可愛い嫁に向かってなんてこと言うんだ!」
俺は冒険者ギルドを抜け、街の人通りの少ない通りを歩いていた
俺は現在かなり虫の居所が悪い
最初は笑顔での対応だから感謝したが、あんなのエルザか知らんが、受付の奴に格下げだ
そんなことを考えていると
「…、ありがとね。私のためにそこまで怒ってくれて」
そう言って、京子は力なく微笑み、俺の肩に頭を寄せてくる
「当たり前だろ?お前が貶されるとか俺自身が貶されてるのと同じかそれ以上に腹立つんだから
あー、やっぱり腹立つわ
ギルドいきなりだけど、抜けてやろうかな」
俺は京子を強く抱き寄せ、結構マジでそう思った
すると京子は少し笑い、はにかみながら言った
「もう、ふふ、その言葉で元気出たからもう大丈夫
今後のためにも入ってた方がいいわ、私のためでもあると思って、ね?」
むう、京子のためなら俺の怒りなんて
そう思い、心を落ち着けた
そういえばこのままでは、今日泊まることもできないんだった
京子のためを思うなら、ちゃんと俺が稼がないとな
そうと決まれば、早速クエスト始めて、宿を確保しなければ
「そうだな、よし!今日の宿泊のためにクエスト始めるぞ!」
俺はそう言って、クエスト受注のため京子と一緒に冒険者ギルドに戻るのであった