前世も今世も変わらないもの
第1章 3話目「前世の嫁は今世では嫁のままじゃないと思った?」
「ふう、ここまで来たらたぶん大丈夫だろ・・・」
俺はゴツい兵士から京子を連れてまた違う街に飛んでいた
今度の街は前の街と違いあまり人がいないようだ
街にはあまり活気がなく、そこら辺に露店がチラホラあるぐらいだ
それにしてもと京子に目を向けたら、京子はいまださっきの体験が忘れられないのかプルプルと震えていた
「こ、こ、怖かったぁー!!!」
京子は俺が突然、○ーラ(仮)で違う街に飛んでいる間、プルプルと震えながら俺に掴まっていた
違う街に到着して下ろしてからも、さっきの体験が忘れられないようだ
京子はプルプルと震えていたが、ハッと思い出したかのように俺に詰め寄って来た
「ていうか!なんであなた!魔法が使えるのよ!
魔力を持っているのは、魔族や一部の才能のある人間だけなのに!
はっ!?もしかして、あなた魔族に転生したの!?」
そう言って、京子は顔を赤から青に顔色を変えながらまくし立ててくる
それしても、魔法って普通は使えないものなのか
この世界では魔法が普通に存在するかと思っていたが、ごく一部の奴らしか使えないみたいだ
「うーん、俺も転生したばかりだからよくわからないけど、たぶん人間だと思う・・
まあ、魔族とやからがどんなものかは知らないけど
俺は俺だよ」
まあ、魔族というぐらいだから悪いことする奴らなんだろう
この世界の仕組みはよくわかっていないが、そこらへんは京子に聞いていけばなんとかなるだろう
しかし、京子はそれを聞いて落ち着いたようだ
そして、生前よく見たような呆れた表情で嘆息していた
「はあ、やっぱりあなた凛夜ね。生前と全く変わってないじゃない…
転生してすぐでその落ち着きは褒めてあげるけど、いくらなんでものんびりしすぎでしょ…」
俺もその表情を見ると、この獣人の姿をした少女は、自分が生前連れ添っていた京子であると再認識した
それにしても、こんな偶然があるんだな
転生後のことはあんまり興味がなかったけど、京子と巡り会えたことは、あのテキトーな神様に感謝しないとな
でも改めて京子を見ると
「やっぱりお前、改めて見るとかなり可愛い顔してるな
この猫耳って自前なのか?ピコピコしてて面白いな」
俺はそう言って、京子の猫耳をモフモフしながら頭を撫でた
すると、京子は顔を真っ赤にしながらも嬉しくてたまらないような表情で耳をピコピコさせている
「ふっ、ふん!可愛いなんて当たり前よ!獣人の中でも特に可愛いってみんなに言われていたんだから!
昔は違和感があったけど、この耳も自慢の猫耳よ
遠くの方の声だって拾えるんだから!」
京子は興奮した様子で早口にまくし立てた
まあ、京子は本当に獣人になってしまったようなのでこの猫耳は自前みたいだ
前世でも可愛い顔をしてたけど、猫耳京子もこれはこれでアリだな
前世とは顔が違うけれど、この世界での顔も俺好みの顔だ
猫耳が生えていることの違和感がまだ消えきれないが…
その猫耳を見て改めてここが異世界だと実感して、これからのことを考えてみた
そして、京子をチラッと見て
うん、一応また一緒に過ごすつもりだし
改めて言っとかないとな
そう思い俺は
「この世界のことはあんまわからないけど、京子と一緒ならなんとかなりそうな気がするわ、というわけで改めてよろしくな?
まあ、前世と違って夫婦じゃないけどまた仲良くやっていこうぜ?この世界でも」
そう言って京子の方を振り向くと
京子は何故か頰をプクーっと膨らませている
俺はよくわからないが京子が不機嫌なことはわかった
なので咄嗟に
「あれ?俺とは一緒じゃ嫌なかんじ?どっか行く予定とかあったの?
そう言ってくれれば、その用事の後からでも一緒に…」
などと、的外れなことを言ってしまう
すると京子はさらに頰を膨らませてプルプル震えている
俺はまた的外れななことを言ってしまったか?と思ったが
そんなリスのように頰を膨らませて怒る京子が可愛くて、ついつい京子の膨らんだ頰をツンツンした
プニプニとした触り心地がたまらない
俺は夢中でつついていると
プシューという音と共に頰が縮む
ああ、せっかくの頬っぺたが…
すると京子は我慢できないといった顔で
「一緒が嫌なわけないでしょ!そんなことじゃなくて!私たちが夫婦じゃないってところよ!この世界でも変わらず夫婦のままに決まってるでしょ!
まさか!?あの後に違う女に乗り換えたの!?私への愛はどこにいったの!」
そう言って、京子はキスしないかと思うほど俺に詰め寄った
俺は嘆息しながら生前の京子のヤキモチ妬きの性格を思い出した
京子がこんなかんじだから、ほかの女性と仲良くしづらかったんだよなぁ
そんなことを考えていると
「ねぇ!凛夜!聞いてるの?私はこんなにもあなたを想っているのに私への愛はなくなっちゃったの!?
嫌よ!凛夜を他の女に取られるなんて!」
そんな感じで京子は暴走していた
流石にこんなに騒いでいるので村人は何事だとこちらを見る人が増えてきた
あんま最初から注目されたくないし、ここはしょうがない
そう思った俺は
「凛夜!私だけを見てよ!あなたがいないと私…」
騒ぐ京子を黙らせるように、俺は京子に口づけをした
「んむ!んん!んんぅん…」
京子は驚いた様子で目を見張りながらも、口づけをすると途端に大人しくなった
そしてしばらくそうして口づけしていると、トロンっとした目で
「んん〜、ぅん、んぁ凛夜ぁ」
と甘えたように抱きついてくる
俺は久しぶりに恥ずかしいと感じた
京子をなだめるためなら仕方がないと口づけをしたがこれは流石に恥ずかしい
先程は騒いでいたことで注目を集めていたが、今度は別の意味で注目を集めているので
なので抱きつく京子を引き剥がしながら
「お、おい!流石にこの場所じゃマズイ!
後でいくらでもやってやるから、ここでは…」
そう言って、京子に言い聞かせた
京子は引き剥がされることに嫌そうな顔をしたが、俺の言葉を聞いて目を輝かせた
「ホント!?じゃあ、続きはまたあとね!
えへへ〜、凛夜からなんて嬉しい!」
もう、これ以上ないくらい顔をにやけさせ、猫耳がフルフル震えている
まあ、言ったことだししょうがない
俺は気持ちを切り替えて
「よ、よし!なら一緒に行こうか。とりあえずこの街に入るぞ」
そう言って、俺は京子と手を繋いで街に入ったのだった