異世界でもたのしくやっていきます?
第1章 1話目「異世界転生?出来れば赤子からのスタートでお願いします」
「おめでとうございます!あなたは見事寿命を全うしました!なので、次の世界でも寿命を全う出来るように頑張ってくださいね!」
それは俺が深い眠りから目を覚ますと同時に突然宣言された
もちろん意味がわからない
なのでその疑問を口にしようとも声が出せない
えっ?マジでどうなってんの?
「まあ、とりあえずは生前の記憶と、身体能力などは引き継いどきますね、あと寿命を全うしたご褒美として、神の恩恵と異世界案内テキストを与えて起きますね」
よくわからないが、前世を引き継がせてくれるらしい
しかも、色々特典をつけてくれるみたいだ
もしかしたら、案外いい神様なのかもしれない
それにしてもいきなりすぎてちょっとついていけない
何かしらの説明を要求しようとすると
「あっ、次の方が来られたみたいですね。それではご武運をお祈りいたします、斉藤 凛夜様」
その声と同時に俺の思考は再び闇に包まれた
その狭間でこう思った
前言撤回、この神様テキトー過ぎて泣ける…
ヒューン、ドガン!
「イタタタ、あの神様何が異世界転生だよ、転生なら普通赤子からだろ…」
俺は時空の黒い穴の中で意識が覚醒して 、その穴らしきところから、あたりに木しかないような山奥に落とされていた
しかも、穴の中から出た俺は、赤子からの転生ですらなかった
見た目は見た目は日本にいた頃と変わらないはずだが、年齢が14〜16歳くらいの感覚である
晩年悩まされた腰痛なども完全に治っている
「流石の神様だな、赤子からの社会に出るまでのモラトリアム期間をアッサリカットしていくスタイル、テキトー過ぎて泣けてくるぜ」
自分で言ってて辛くなってきた
そもそもこんな何も無いところで転生してどうしろと?思った以上に現実は厳しかった
「はあ、ここまでテキトーだといっそ清々しいぜ」
まあ、あの神様のテキトーさを嘆いていても仕方がない
そういえば、転生前の話では異世界案内テキストとやらをもらえたらしい
とりあえずはそれを参考にしよう
「えーと、なになに、『異世界転生おめでとうございます。なれない世界かもしれませんが早く馴染めるように頑張ってください。頑張ると言っても何かわからないかもしれませんが、私もよくわからないので、とりあえず寿命を全う出来ることを目標にして頑張ってください。 神より』」
ビリ!!グシャグシャ!ポイッ
俺は神様からの案内を破って捨てていた
「ヤベー、テキトーとは思っていたけど、これはマジでヤバイ。俺の転生した意味…」
神の案内により、俺の将来が真っ暗になった
ナニコレ、悲しすぎて泣ける…
「ま、まあ気をとりなおして、とりあえずはどこかの村か街に行かないとな」
神のテキトー極まりない案内に絶望しかけたが、このまま悲しんでいても仕方がない
資金を手にするためにも、まずは人のいる場所に行かなければ
「うーん、異世界って言うんだったら、魔法とかないのかな?こんな山奥からひとっ飛びの魔法とかあれば楽チンなんだけど…」
ここが異世界というなら、魔法があってもおかしくは無いと思う
てか、異世界というなら魔法ぐらいあって欲しい!
そんなアホなことを考えながら試しに思いついた呪文を言ってみた
「○ーラ!!!」
シーン…
特に何も起きなかった
はあ、なんだよやっぱここ異世界じゃ無いんじゃ
そんな事を思い、再び街を目指そうと足を進めようとしたそのとき
ブゥワ!キュルキュル!
突然激しく、俺の周りを風が吹き荒れた
「!!なんじゃこりゃ!!」
そして、俺はその風に対抗できないまま、どこかはるか遠くに飛ばされた
なんだよ…○ーラじゃねーじゃん、バシ○ーラじゃん…
ヒューン!ドカーン!!!
「ぐは!さっきのなんだったんだよ…てか、ここどこだよ」
俺はバシ○ーラ?もどきで山奥から、どこか知らない街の入り口に飛ばされていた
そこそこ栄えている街みたいだ
街の柵の中には多くの人々で賑わっている
「ん?あれは獣人か?」
柵の中には人間達に混ざって、数人の獣人が混ざっている
ほー、流石の異世界だなー
獣人とかもちゃんといるんだ、ならエルフとかドロワーフとかもいるんじゃないかな
「ん?でもあの獣人達なんか連れられている?もしかして奴隷なのか?」
獣人達は武装した兵士に、鎖で繋がれて連れられていた
一様に獣人達の表情は暗かった
よく見ると、獣人達の服はボロボロで、所々破けていて血が滲んでいる
「うーん、なんか見てて可哀想だけど、俺なんも出来ないしなあ」
そう思いながら獣人達を眺めていると、1人の獣人の女性と目があった
その女性はとても驚いたような様子で目を見開いた
「…!!……!!!」
その女性はこちらに向かって大きく声をあげていたが、俺には何を言っているのか聞こえない
「なんかこっちを見て声をあげている?でも、あの子の事見覚えがないけど…」
すると、武装した兵士がその女の子に向けて大声で罵声を浴びせている
すると、その声に女の子は怯えたように身をすくませていた
それでも女の子は俺の方をチラチラと見ていた
その様子を見て、武装した兵士は勢いよく剣を振り上げた
「てっ、おい!それはヤバイだろ!」
俺は急いでその女の子の前に立ちはだかった
「おい!貴様!そこを退け その奴隷には教育が必要なのだよ、痛い目にあいたくなかったらそこを退け」
武装した兵士は俺に向かってガンを飛ばしながら吐き捨てるようにそう言った
しかし俺はいたって冷静に
「えーと、おじさん?この子はなんか怯えてて可哀想だし、剣を引っ込めようぜ?なんか見てられなくて止めに入ったけど」
俺は見ていられなくて止めに入った
でも、よくよく考えたら武器もお金もなく止めに入ってしまった
いきなり襲いかかってきたらどうしよう、そんな事を考えていると
「ふん!この獣人が可哀想だと?こんな下等生物なんて、商人に売る事ぐらいしか出来ない無能なのだよ
わかったらそこの命令を聞かない獣人を差し出せ」
なんとなく予想通りだけど、獣人は虐げられてる種族みたいだ
それにしてもこの言い方はあんまりじゃないだろうか
よく見るとその獣人の女の子は15〜16歳ぐらいで可愛らしい顔立ちをしている
そんな女の子に向かってこの暴言は可哀想だ
「えーと、この子が怯えてるし、あんま大声で怒鳴らないでくれます?あと、出来れば教育的指導はやめてあげてもらえたらなぁ、なんて?」
俺は会話しながらもこの兵士が襲ってきた時に対策を考えていた
そしてある事を思いついた
たぶんだけどあれが出来るなら…
そのため少しヘラヘラした感じで話しかけた
すると耐えきれなくなったのか兵士は
「貴様!私に歯向かう事に意味が理解できているのだろうな?泣いて謝ってももう許してやらんぞ!」
俺の歯向かうような態度が気に入らなかったのか突然怒り出した
俺としては平和的に解決したかったけれどこれならもうしょうがない
見ると、周りにも騒ぎを見物に来た野次馬達が集まって来ている
しょうがないな、この様子だとあれを使う事になりそうだな…
「まあ、おじさん?悪いことは言わないから落ち着きな?その物騒なものをしまって、ね?」
覚悟を決めた俺が尚も煽るように言うと
ついに我慢の限界がきて兵士は突然切りかかって来た!
それに獣人の子が
「危ない!避けて!凛夜!」
と俺を心配したような目でそう言った
俺は驚いて女の子を見たが今はそんな場合じゃない
俺は極めて冷静にある呪文を唱えた
「バシ○ーラ」
それと同時に兵士はどこか遠くに飛んでいった
やっぱり○ーラできるなら、当然出来るよね…
やっぱここ異世界だわ…
第1章 2話目「生まれ変わっても巡り合うとか、神様テキトーすぎません?」
「えーと、君は誰なのかな?どうして俺の名前を知っているんだ?」
俺はバシ○ーラで兵士をどこかに飛ばした後、さっきの俺の名前を知っていた女の子に話しかけていた
異世界にきてすぐなので知り合いな訳がない
なら、なぜこの子は俺の名前を知っているんだろう?
「だって、凛夜のままじゃない!長いこと一緒だったんだから知ってて当たり前じゃない!」
女の子はとても興奮した様子で、俺に詰め寄る
俺としては訳がわからなかった
前世でも獣人の知り合いなんている訳ないし、長年一緒にいたってどういうこと?
俺は訳がわからなかったが、もしかしたらの可能性にかけて尋ねてみた
「えーと、もしかしてロンか?俺が子供の時に飼ってた犬の?」
女の子は獣人でも犬の耳を生やしていたので、もしかしたらの可能性にかけてそう言ってみた
すると女の子はプルプルと震え、怒りを含んだ声で
「くっ!なんでこんなにわからないのよ!私はすぐに見つけてすごい嬉しかったのに!
京子よ!京子!あなたに長年連れ添ってきた、妻の京子!」
俺に向かって叫んだ
え?なんだって?思考が追いつかない
京子?京子なら俺が死ぬ10年以上前に病気で亡くなったはず
しかも、京子は普通の人間だ。獣人なはずがない
「え、えっと…京子は俺の妻だったけど、なんでそれを君が知っているんだ?それに京子は俺より先に…」
俺は混乱した頭で訳がわからないままそう返した
すると女の子は声を張り上げて
「だ・か・ら!!私が京子で!あなたの奥さん!
旦那だったら、自分の女の事ぐらい気づきなさい!」
そう言って、俺の胸に飛び込んできた
「ホントに!あなたを残して先にいったこと、すごい不安だったんだから!
食事大丈夫かな?家は綺麗にしてるかな?変な女に言い寄られてないかな?とか!!」
そう言って、俺の胸をポカポカ叩いてきた
このお小言の感じ間違いない!これは!
「お、お前!ホントに京子なのか!って、痛い!痛い!結構本気で殴ってくるな!
せっかくの再開なのになんでそう暴力的なんだ!」
殴る京子をなだめながら俺はため息を吐いた
いきなりの異世界に、まさかの元妻の獣人化での再開
こんなに立て続きだと驚きより呆れの方が強い
ホントなんなんだ…勘弁してくれ…
「で、京子はなんで獣人になっていて、奴隷みたいになっているんだ?そもそもお前死んだだろ?なんでこっちにいるんだ?」
俺は京子が獣人になっている事にも驚いたが、そもそも死んだはずなのに生きていることが疑問でならない
すると京子は
「私だって訳がわからないわよ!病院で死んだと思ったら、目が覚めたら獣人の子供として生まれ変わってるんだもの、そのまま獣人としてこっちで過ごす事になったんだから!」
そう言って京子は泣きながら
「それで、あ、あなたがいないけどっ、違う世界に生まれちゃったなら、もうしょうがないからっ、あ、あなたのことは忘れてい、生きていこうとして、過ごしてたら、突然兵隊に捕まって…、それで奴隷になってっ、それで…」
京子は怯えて震える子供のように俺に強く抱きついた
そして、震えながらも
「そっ、そんな時にあなたが、街の柵の外にみ、見えて
それで、嬉しくて!それで、それで声をあげたのに!
あ、あなたは全然助けにきてくれなくて、それで!」
泣いて震えていたと思えば、次は泣きながら怒ってきた
なんか、釈然としないが、これまで辛い思いをしてきた事を知り、可哀想に思った俺は京子の頭を撫でながら
「ま、まあ悪かったよ、最初はお前が京子なんて思いもしなかったし、結果的に助かって良かったじゃないか
運命のいたずらかは知らんが、また巡り会えたんだし」
俺があやすように京子を撫でながらそう言った
てか、どうでもいいが、犬耳柔らけ〜、なんか犬耳京子可愛いな
そんなアホな事考えて撫でていると
「どうした!奴隷を連れてくるはずのやつはまだなのか!おい!そこを開けろ!野次馬ども!」
そんな怒鳴り声が後方の方から聞こえてきた
すると、京子はビクッ!と身をすくませた
そして
「ね、ねぇ!凛夜!は、早く逃げましょう!
あいつに捕まったらまた、また同じ場所に…」
そう言って怯えきった様子で俺の方を揺らした
「うーん、まあ確かに長居すんのも危険かもなぁ、まあ、安全かどうかはわからんけど、何もしないよりマシか…」
そう言って、考えるように呟いていると
「なに呑気な事言ってんの!は、早く行きましょうよ!ねえ!早く!」
そう言って、京子は引きずるように俺の肩を引っ張った
「あー、そうだな行くよ行く
まあ、そんなに焦んなよ、俺だって痛いから心の準備が必要なんだよ」
そう言ってめんどくさそうに京子に言うと
「ほ、ほら!あなたが急がないからあいつが来ちゃったじゃない!も、もう行くわよ!」
俺が返事をするのを待たずに、京子は俺の手を引いて走り出した
後方では
「待ちやがれ!この獣人ごときが!早くこっちへ戻ってこい!今なら殺すのだけは勘弁してやる!逃げようともすぐに追いつくんだよ!」
そう言って、さっきの兵士よりも厳つそうな男がとんでもない形相でこちらを追いかけて来た
「も、もうホントにダメ!このままじゃお、追いつかれる!」
そう京子は絶望したような声をあげた
すると俺は空気を読まないで
「○ーラ!」
そう一言唱えた
すると、間をおかず
キュルキュル!!
その音と共に俺たちはどこか遠くに飛んで行くのであった