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明日から突然サバイバル生活!  作者: ELS
(第2章)雪山でサバイバル!

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雪山サバイバル十一日目(後半)

雪山サバイバル十一日目(後半)


「ただいま」


外と室内での寒暖差が天国と地獄だ。


「おかえりなさい」


出迎えてくれたゆみちゃんの方を見やる。

ロープを張って、衣類を乾かしているようだ。あんなに濡れていただろうか。


「あー洗えるものはそこの温泉のお湯で、洗濯しておきました」


「なるほど、ありがとう。助かるよ」


お礼を言いながら、物置に入る。


物置から、工具と木の板を引っ張り出す。

ノコギリもあるし、表でDIYと洒落込もう。


大きな合板を1mそこそこの大きさで二枚切り出す。それをA時型に組んで、ついたてを作る。


露天風呂に入るための目隠しが完成した。


「できたっ!」


「どうしたんですか?」


玄関から、ひょっこり彼女が顔を出す。


「あ、ゆみちゃん。お風呂入る?」


「……えっ?」


ぴたりと動きが止まった、言い方が不味かったようだ。


「あー、家の前の温泉に、入りやすいように目隠し作ったんだけど」


そうだ、折角温泉があるのだから浸からない手はない。手をしばらく入れても特に問題は無かったので体を浸けても大丈夫だろう。


「うーん、はい。入らせて貰います!」


少し考えた後、そう返事をした。



……



「うわあーっ!これっ、めっちゃ気持ちいいですよ!」


20m先の、仕切りの向こうから声が聞こえてくる。


この家から温泉池までは直線距離でおおよそ20m。まぁ目の前だ。

縁についたてを置き、そこにタオルなどをかけて使って貰っている。


「良かったよ、何かあったら呼んでね!」


「はぁーい!」


どうやら満足頂けたようだ。俺も入りたかったが、一緒に入る訳にもいかないしなぁ。

どちらにせよ何かの襲撃があるかも知れないので、片方は見張りに徹した方が安全だろう。


「しかし……」


はしゃぎ声に混じって、ばしゃばしゃという水音が聞こえてくる。

これは、クロが泳いでいる音だ。


ゆみちゃんが温泉に入るとわかるやいなや、一目散に駆けていき、湯に飛び込んで遊んでいるのだ。


「あぁーっ!」


一際大きな声が響いた、何事だろうか。


「何?どうしたの!?」


「クロが蟹を咥えてるー! 」


まぁ、楽しそうで何よりだ。


「わああーっ!ダメだって!」


「どうしたー!?」


「クロが蟹を食べたーっ!殻ごとーっ!」


アイツは生で殻ごとバリバリいったのか。確かにそれはショッキングだ。

喉に刺さったりしないんだろうか、この世界では何があっても自己責任だぞ。



……



「お先ですっ、最高でしたよ!お風呂!」


濡れた髪を、タオルでまとめながらそう言った。まだ体から湯気が出ていて、柔らかそうだ。

お風呂上がりの女の子って、可愛く見えるよなぁ。


「よかった。じゃあ俺も入れ替わりで使わせて貰うよ」


邪な考えを悟られぬよう、ぱっと用意をする。素早く着替えとタオルを持って、温泉に向かった。


服を脱いだ瞬間に、恐ろしい寒さが襲ってきた。飛び込みたい気持ちを抑え、足からゆっくり湯に浸かる。


「おぉーこれは気持ちいいわ」


思わず声が出た、良い湯だ。じんわりと手足が温まって、ほぐれていくことがわかる。

一面の銀世界を臨んでの温泉、そんなロケーションも最高じゃないか。


「お風呂、何日ぶりだろうな」


この辺りはまさにオアシスだ、食料も燃料もある、しばらくこの場に留まっても良いのではないだろうか。


静寂の中、空を仰いだのだった。



……



入浴の後は、食事の時間だ。


缶詰を食べた後、貝があった事を思い出して食べられるのか試してみた。

ナイフで身を外しておいた貝を、殻を下にして薪ストーブの上に置いて焼く。


殻の中に出てきた水分がくつくつと煮えて火が通ってきたようだ、ふわりと磯の良い匂いが漂ってくる。


「もう食べられるかな」


火傷しないように手袋で持って、一口大に切り分けた。


一つ食べてみる。


思ったより柔らかい、噛むとじわっと中から、旨味の詰まった汁が口の中に広がる。


金属臭なども恐れていたが、特に鉄臭い様子もない。鼻から抜ける香りは食欲をそそるものだ。


「美味いっ!」


まじまじと見つめている、ゆみちゃんとクロにも分けてやる。


「うわっ美味しいですねコレ!」


どうやら大盛況のようだ。

思わぬご馳走を手に入れた我々は、楽しいディナーを過ごしたのだった。



……



ぐらぐら


夜中に目が覚める。どうやら此処にも、あの竜が来ているようだ。追いかけて来ているのか?それとも縄張りでもあるのか。


窓から離れて外から見つからないよう、じっと息を潜める。


ゆみちゃんの顔も引きつっている。

この家に来てから安全だと思って、気が抜けていたかもしれない。


あの大きさの生き物であれば、木製の家などたやすく壊してしまうだろう。危機から逃れてなどいなかったのだ。


しばらくすると足音は遠ざかり、聞こえなくなったのだった。

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